TOM’Sマルチシミュレーションシステムって何?
近年レーシングドライバーもトレーニングに使用しているレーシングシミュレーター。その進化は目覚ましいものがあります。そんななか、国内外で目覚ましい活躍をしてきた日本モータスポーツ界の老舗、トムスが新たに本格的レーシングシミュレーター「TOM’Sマルチシミュレーションシステム」を発表しました。名門トムスが手掛けたシミュレーターはほかとどのような違いがあるのか? 実際に体験するとともにその狙いを伺いました。
一体どんなシミュレーター?
今回新たに作られたシミュレーターは、フライトシミュレーターなどで使われる半球体状のスクリーンに映像を映し出し、6軸のモーションシステムでローリングやピッチングを再現するというものです。
モノコックはトムスがドライカーボンで製作したオリジナルのもので、近年フォーミュラカテゴリーで採用が進んでいる頭部を保護するパーツHALOも再現されています。使用されているステアリングやペダル類も実車さながらで、トムスならではの完成度です。
実際にシミュレーターを体験
今回実際にシミュレーターを体験させて頂きました。設定されたコースは富士スピードウェイ、マシンはFIA-F4です。筆者は以前トムスさんのご厚意で、FIA-F4をドライブさせて頂いた経験があるのですが、今回はそのときの記憶と重ねながらドライブしてみました。
ファーストコンタクトで「本物さながら!」と感じたのは、ペダル類のフィーリング。とくにブレーキはマスターバックなしの実車さながらの重さとなっていて、相当な踏力が必要です。
また、重たいながらも微妙なコントロールの差を可能としているのも実車と同じポイント。重たいという点で言えばステアリングも同じ、パワステ無しのスリックタイヤの重さを思い出すのはもちろん、フロントグリップの変化からリヤがスライドするフィーリングを掴むという感覚も似ています。
「空力」の効果を体感
以前FIA-F4をドライブしたときは広い駐車場で3速に入らない位の速度域でしたが、今回は国際コース、速度域も全然違います。それだけに新たな発見もありました。それはダウンフォースの効果です。
富士スピードウェイで言えばコカコーラコーナーや100Rでダウンフォースの効果を感じることができ、想像よりも高い速度でコーナリングすることができました。逆に難しかったのが低速コーナー。ダウンフォースの恩恵が得られないため、マシンがピーキーな挙動になりやすく、ダンロップコーナーや最終パナソニックコーナーなどで何度もスピンをしてしまいました。こういった車両特性から苦手なコーナーを事前に洗い出しておくことは、実際にサーキットを走った時にとても役立つと感じました。
重いステアリングやブレーキなどと戦いながら20周もすると汗だく&ヘトヘトに。あらためてモータスポーツが、身体を使うスポーツだと感じた体験となりました。
今後はどうなる?
今回は体験させて頂いた「TOM‘Sマルチシミュレーションシステム」は、すでに開始されているフォーミュラカーを誰でも運転できるサービス、「TOM’Sフォーミュラカレッジ」と併用されるとのこと。さらに、眼球運動や脳波測定など統合分析での実用化も目指していて、運転時にどのような身体的、精神的ストレスがかかるのかなどを分析し、運転支援システムの開発などにも活用していくとのこと。