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これがホントの「トンビが鷹を生む」? 大衆車ベースの美しきスポーツカー「フィアット・アバルト1000ビアルベーロ」とは

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了

速度記録挑戦車に初めて搭載されたビアルベーロ・エンジン

 フィアットをベースにしたアバルトのモデルで、最初にビアルベーロ・エンジンを搭載したのは1957年に製作された速度記録挑戦用のフィアット・アバルト750レコードでした。アルファ ロメオやフェラーリで数多くの傑作エンジンを手掛けてきた、ジョアッキーノ・コロンボが開発を担当。

 それまでのOHVエンジンに比べて3割以上ものパワーアップを実現し、世界記録を打ち立てることに成功しています。その後ビアルベーロ・エンジンはサーキットレース用にチューンし直されて、レース仕様のGTカーに搭載され各地のレースで活躍することになりました。そしてレースのレギュレーションに合わせて850ccと1000ccと2種類が製作されています。

 こうして開発された1000ccのビアルベーロエンジンを搭載したレーシングGTが、今回紹介するフィアット・アバルト1000ビアルベーロです。アバルト1000ビアルベーロRM(レコード・モンツァ)クーペやレコード・モンツァLM(ル・マン)の発展モデルであり、フィアットの異母兄弟とも言うべきフランス車のアバルト-シムカにとっては、従兄弟のようなものと言っていいでしょう。フィアット・アバルト1000ビアルベーロ

 そんなフィアット・アバルト1000ビアルベーロですが、1961年に登場したオリジナル=初期型ではラウンドテールと呼ばれる丸っこいデザインでまとめられたリヤビューが特徴でした。1962年モデルではラウンドテールのまま、エンジンフード後端が反り返ったスポイラー形状に変更されています。フィアット・アバルト1000ビアルベーロ

 これがいわゆるダックテール(アヒルの尻尾)と呼ばれ、ドラッグの低減のみだった世界に、ダウンフォースの概念を与えることになった極初期の空力的処理でした。さらに1963年モデルではフロントノーズに手が加えられ、フロントにマウントされているラジエターの冷却気導入口が“おちょぼ口”になってドラッグがさらに低減されています。フィアット・アバルト1000ビアルベーロ

 そして1964年にはノーズを伸ばした最終モデル、フィアット・アバルト1000ビアルベーロ・ロングノーズが登場。それを機会に1963年モデルのことをフィアット・アバルト1000ビアルベーロ・ショートノーズと呼んで区別するようになりました。

 また初期のモデルはデザイナー兼コーチビルダーであるザガート製ですが、後期にはアバルト製もあるようです。それにしても、小さなフィアット600のフロアユニットなどを流用しながら、こんな流麗なクーペモデルを生みだしてしまうとは。あらためて、イタリア人に流れるラテンの血が、これほどまでにデザインに長けていると、痛感させられました。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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