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34年所有して修理代「500万円」なら安い? ルパン3世の愛車でお馴染み「フィアット500」オーナーの泣き笑い「ゴヒャク」生活

34年所有する愛車「フィアット500」

 基本的にクルマ、そしてバイクは長く乗るほうで、現在2台所有しているうちの1台は34年前に買ったフィアット500だ。伊藤かずえさんのシーマもすごいが、うちのほうが少しだけ所有歴が長いのは、心の底での小さな優越感だったりする。まぁ、1971年製なので、根本的なところでは比較にはならないが。

馴れ初めは学生時代に遡る

 大学1年生で買ったもので、一浪だったので19歳のとき。購入金額は車両本体価格が128万円と諸費用は別。バイトに明け暮れてある程度予算を貯めたわけではなく、入学してすぐに買いに行ったのでそもそも貯める余裕はなかった。それだけ欲しかったし、世はバブルの絶頂期だったので、なんとおぼこい大学生でもすんなりローンが通ったのも今から思えば恐ろしいこと。頭金というより、手付金として3万円を払ってあとはローンにできたのもすごい。

 今でこそ、チンクとかチンクエチェントなんてイタリア語で呼ばれるのが普通ではあるが、当時はそう呼ぶ人もいなくて「フィアットゴヒャク」とか「ゴヒャク」と呼ばれていた。欲しかった理由もうちのはクリーム色だけに「やっぱりカリオストロの城ですか」と言われるが、そんなの最近。同じルパン三世でもファーストに出てくるグレーのやつに、子どものころにひと目ボレしたのがきっかけだ。

オーダーしてから教習所に通い始める

 個体はイタリアにあって、それを輸入して販売するのがウリのショップで購入した。オーダーしてから免許を取るべく教習所に通い始めたものの、横暴な教官が当時はけっこういて途中で行かなくなったため、クルマが先に来てしまうというハプニングもあったが、気を取り直してまた通い始めて無事取得。クルマがある素敵なキャンパスライフを一応開始した。

 と言いたいところだが、程度が悪かった。現地イタリアで専門の工場でセミレストア済みというのがウリだったのだが、ボディはサビなどを隠すためにパッと全塗装。メカはなにもしていなくて、なんとタイヤは4本とも別ブランドだった。交換しに行ったら「裏側は割れているよ」と言われて覗いてみると、中のチューブが膨らんだ餅みたいにプ~と出ていた。これにはさすがにおぼこい大学生も驚いた。

 メカもなにもしてないのはなぜわかったかというと、何度オイル交換をしてもすぐに真っ黒になるから。それでもしばらくデートなんぞに使用して満喫してはいたものの、なんと白煙が出るようになったため、これまたおぼこい大学生でもエンジンはダメだな、とさすがに理解はできた。あと、ミッションオイルのフィラーボルト(入れるほう)も硬く開かず、交換ができなかった。

徐々に化けの皮が剥がれDIY開始

 そうこうしているうちに、ボディになにやらプツプツと蚊に刺されたような膨らみが大量発生。理解に苦しんだが、押してみるとバリッと塗装が割れて中からサビがポロポロと出てきた。なんのことはない、塗装の下でサビが大量発生していたのだった。ショップにクレームを出してもノラリクラリで泣き寝入り。

 その後、無事に卒業もして就職したら、なんとかしてやらねばという思いがフツフツと湧いてきた。まず、手始めにボディのレストアを開始することに。まだバブルの名残りだったので、板金塗装だけで120万円。ボディパネルがあるといいと言うおやっさんの言葉に従って、ある程度のパネルをイタリアから直輸入した。もちろんEメールもないので、ファックスと現金為替(イタリアはクレジットカードの対応が遅かった)を駆使してのことだった。ちなみにボディパネルを用意しても、120万円は安くはならなかった。

 まぁ、当時はボーナスもよかったし、大切なゴヒャクがきれいになるならそれはそれでいいので依頼。おやっさんは「修行時代はなんでも叩いて作ったもんだ。それに引き代え今の若い職人は」など、延々と語り続け、「バリッと仕上げるからよ」と胸を張るので、このときは安心していた。

ドンガラのボディに自分で部品を組み付け

 ボディレストアといっても戻ってきたのはドンガラ状態。つまり板金塗装のみで、部品の組付けなどはこちらでやることになっていた。今思えば変とはいえ、何度も言うが、やはりおぼこかったのだろう。ちなみに支払いはこちらもローンでまかなった。

 もともとメカは高校時代からバイクをイジっていたためお手の物で、上がってきたボディに組み付けつつ、ドンドンと部品を新品へと交換。10年ぐらいかけただろうか、フルレストアの状態にまでもっていくことができた。そのころになると、海外とのやり取りもネットの普及で楽になったので、ドイツやスイスから通販で取り寄せつつ、ついでに取り寄せた部品を売って商売にもしていた。ちなみにイタリアはいい加減すぎて、チャンと送ってこないこともあるので、基本的にはそれ以外の国から輸入するのが基本だ。

 おやっさんに多額のボディレストア費用を払ったとはいえ、ズッと乗っているため購入費用も含めて返してしまえたので、メカに費用を存分にかけられたのはよかった。工賃を払ったつもりで工具を揃え、今では物置ひとつが工具入れになっているほど。溶接機なども完備して、できないことはほぼない状態ではある。

エンジンは畳敷きのアパートで自力オーバーホール

 肝心のエンジンについては、当時の畳のアパートでオーバーホールを決行。真っ黒なオイルを垂らしながらも完成させたので、白煙も解消することができた。ただ、500ccだと非力ではあるので、ミッションともどもポーランド製を輸入して新品に載せ替えて現在に至っている。今ではもう作っていないようだが、少し前まで、後継車のフィアット126の補修用に生産されていて、排気量が650ccになるので乗りやすくなるというのが交換した理由だ。発電機も発電量が少ないダイナモからオルタネータにもなっている。

 よく聞かれる故障については基本的にはない。メカいじりの趣味も兼ねた予防整備が好きなのでなおさらなうえ、機構的にシンブルなので壊れるところはほぼない。オーナーのなかには壊れるという人もいるが、それはそもそも整備やメンテが悪いだけだと思う。実際、原因不明のエンコは一度もない。ただ、昨今は部品品質が急激に悪化しているので、それを使われてしまうとどうしようもなくなることはある。

気になる故障は? メンテ費用はどれくらい?

 ガラスも新品、配線も全部引き直しするなど、足まわりも完全リフレッシュ。自分でやっただけに疑惑なしフルレストアで、ほぼやることがなくなったのが8年ぐらい前だろうか。よく聞かれるのが費用はいくらぐらい突っ込んでいるのかということ。車体とボディレストアはすでに記しているので割愛するが、さらにメカの部品代は頼まれた部品も一緒に輸入しているので厳密には出せないものの、100万円ぐらいだろうか。新品エンジンはミッションと合わせて20万円ぐらいだった。もちろん工賃はまったくかからないものの、プロに頼んだとすると時間工賃から算出して150万円は超えるだろう。

 すべて合計すると500万円ぐらいか。ショップに頼んで、徹底的にちゃんとやるとこんなものだろうし、200万円ちょっとの極上車というのもその内容は推して知るべしだ。うちの場合は、部品をストックするために倉庫を借りているし、貴重な当時のアバルトパーツのコレクションもしているので、天文学的な(大げさ)費用がさらにかかっているので計算不能。趣味なのでそれでもいい。

まとめ:これからも末長く「ゴヒャク」と付き合っていきたい

 ただ、最近になって、塗装表面にヒビが入って、中からサビ汁が垂れるようになってきたし、フロアにも穴が。試しに塗装をめくってみると分厚いパテが出現。つまりパテが割れて塗装もヒビが入り、水が進入して中がサビたというのが理由。つまりあのときのおやっさんは叩きもせず、ヘコミなどはパテを盛っていただけだった。どうりで左右で形が微妙に違うはずである。

 よくもまあ、複雑なボディラインをパテで作ったものだと関心しきりだが、終活がてら、これからボディのレストア、塗装を自分でやって仕上げるつもりなので、結局最終的にわがゴヒャクにいくらかかるのかは不明。でも。それでいいのだ。

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