商品改良で「ロードスター」にさらなる「人馬一体」感
マツダは12月16日にライトウェイト・オープンスポーツカー「ロードスター」の商品改良を発表。すでにお披露目されていた「走り」特化の最軽量モデル「ロードスター990S」に加えて、ダークブルーの幌と黒革内装を組み合わせた「ロードスターNavy Top」、エレガントな新色「プラチナクォーツメタリック」をまとった「ロードスターRF VS Terracotta Selection」を投入した。いずれも発売は2022年1月中旬を予定している。
これと同時に、今後ロードスター全車に、「人馬一体」の走りをさらに高める車両姿勢安定化制御技術「KPC」を採用するのも重要なポイントだ。
コーナリング中の姿勢を安定させる新技術「KPC」とは
まずはロードスター全車に採用される新技術「KPC」について。これは「キネマティック・ポスチャー・コントロール(Kinematic Posture Control)」の略で、「運動学に基づいた車体姿勢の制御技術」といった意味だ。
カンタンに言うなら、コーナリング中にリヤ内輪側のブレーキをわずかに効かせることで、車体の浮き上がり(ヒーブ)を抑制する技術。クルマが地面に吸いつくように安定することで、より自然な旋回姿勢を実現するという。バイクに乗っている人なら、コーナリング中にリヤブレーキを少し引きずるテクを想像してもらえばわかりやすいだろう。4輪車のブレーキは前後別に制御できないので、それを車両側で自動的にコントロールしようというわけだ。
ロードスターのリヤサスペンションは、ブレーキをかけると車体を引き下げる「アンチリフト力」が発生する構造になっている。「KPC」は、後輪の左右の速度差から旋回状態をリアルタイムに検知して、リヤ内輪側のブレーキを制御。とはいえブレーキの液圧は最大0.3Mpaと、パッドとローターがギリギリ触れる程度なのだが、これで車両の浮き上がり(ヒーブ)が1.7%減少する。その一方、ヨーレートはわずか0.02%の増加で、ヨー運動には影響を与えないという。
開発にあたってはアンジュレーション(起伏)の強いニュルブルクリンクでテストを繰り返し、「KPC」によるブレーキの温度上昇や摩耗促進といったネガ要素がないことを確認済み。オープンデフ車両はもちろんLSD装着車でも自然に適応し、ブレーキ、タイヤやサスペンションをアフターパーツに変更しても正常に作動し、弊害はないという。また、「KPC」はあくまでも制御プログラムの進化なので、これによる重量増加は1gもない点をマツダは強調している。
すでにマツダの多くの車種で採用されている「G-ベクタリングコントロール」とはまったく別系統の、サスペンションジオメトリと制動力による車体姿勢の制御技術である「KPC」。走行性能の絶対値を高めることが目的ではないが、地面に張りつくような感覚でドライバーが余裕をもって操作できること、そして、高速コースやワインディングでより安心してアクセルを踏みこめるメリットは計り知れない。
「人馬一体」をとことん追求し続ける、マツダ×ロードスターならではの新たな進化なのである。