レストアとは限りなく新車に近づけることを言う
旧車がブームになって、レストア済みやフルレストア、さらにはセミレストアなど、レストアという言葉も同時に注目されるようになってきた。旧車をきれいにするのがレストアという定義で、みなさんもなんとなくそう思っているだろう。レストアという言葉の意味は「元に戻す」で、レストランも語源は同じで「減ったお腹を元に戻す」といった意味が込められている。
簡単に使ったり、よく耳にするだけに、具体的になにをするのがレストアなのか、わからなくなっているのもまた事実だ。基本的には新車に戻すというのがレストアで、実際には完全に元には戻せないものの、それに限りない状態にまで近づける行為といっていいだろう。
新品部品は高くても可能な限り入手してケチらずに使用
具体的にはボディであれば、腐ったりサビた部分は切り貼りするなどして除去。塗装も無理して問題のない塗膜を剥がすことはないものの、ドンガラにしてすべて塗り直す。エンジンも機能の回復はもちろん、見た目も全部きれいにしたり、足まわりであればブッシュ類も全交換だ。
そのほか窓まわりのゴム類も交換。内装もシートは表皮だけでなく、内部のスプリングなどもすべてやり直して、ドアの内張り、天井なども張り替える。新品部品がなければ、付いているものや中古品を全バラにして、オーバーホールしたりするのは当たり前で、メッキももちろん再処理して新品同様にする。もちろん新品に勝るものはないので、高くても可能な限り入手してケチらずに使用する。
ネジ1本まですべて手を加えるというのがフルレストア
部品を変えて動くようにして、見た目をきれいにしてレストアと呼ぶことが最近は多いが、それは修理ついでに磨いてあげた程度のものでレストアではない。ネジ1本まですべて手を加えるというのがフルレストアであり、本来のレストアである。実際は目に見えるところやボディだけ(ボディレストア)でもレストアと呼ぶし、セミレストアという言葉もまかり通ることになる。元に戻すのがレストアなのに、セミというのは本来成り立たないはずだ。
ここに旧車での誤解というかトラブルの種がある。そもそも、フルレストアを行ったらいくらになるのか? 女優の伊藤かずえさんのシーマはまさにフルレストアの典型だが、専任が付ききっきりで8カ月かかって仕上げている。パーツや材料はもとより、工賃はいくらになるのか?? 時間給1万円だとしてもざっと1000万円以上はかかってしまう計算になる。
そんなに払えないのは当然で、そこで費用の交渉となると、結局はやらないところや交換しない部分が出てくる。細かく打ち合わせた上で、どことどこをどうやるかを決めてあればいいが、普通はそんなことはせず、いくらでボディまわりだけを仕上げてもらってといった感じだろう。仕事なので当たり前とはいえ、依頼するほうはピカピカになって、問題も解消されていると考えがち。この差がトラブルにつながることもある。
また、レストア済みを掲げる中古車の価格を見てほしい。時間工賃で考えていくと、到底レストアがされているとは思えないこともある。もちろん前オーナーが仕上げて、それを買い取ったものかもしれないので、きちんと説明してもらったうえで納得できればいいし、その店が仕上げたという場合は作業内容や交換部品を説明してもらってから買うようにしたい。
よくある、レストア済みというので買ったら中はボロボロだったというのは、店が当然悪いが、安易に飛びついてしまったほうも悪い。すべての店に当てはまるわけではないのだが、そもそもレストアはやろうと思えば手は抜き放題だし、他人のために丹精込めて作業してくれているかということまでよく考えてほしい。