ライバルメーカー同士影響し合う自動車デザイン
一時、話題になったのが中国車のぱくり問題。ハイエースのそっくりさんなど、大量に発生して、なんだかなぁ、という気持ちになった方も多いのではないだろうか。しかし、日本だってキットとはいえ、VWバス風、シトロエンHトラック風、Gクラス風のものが売られているので、あまり他人のことは言えない気はする。デザインも含めてアイディアはタダという意識が関係しているのだろうか。
かつて先人から学んでいた日本車
とりあえずうりふたつというのは論外にしても、なんか似ているというのはどこがパクリの境界線なのかは微妙だ。日本車の場合、欧米のように馬車から派生して進化してきたという手順を踏んでいないから成熟期が短いし、1960年代あたりに急速に発展してきた。それゆえ、技術的なものは海外メーカーと提携して、国内で組み立てるノックダウンで習得した。これは現在、中国での自動車生産は現地企業と提携しないとできないのと似ている。
日本でのノックダウンの例は多くて、日野はルノー、いすゞはヒルマン、日産はオースチンと提携していた。なかでも日野といえば、ルノー4CVをノックダウン生産した日野ルノーがおなじみ。
こちらは当初はルノーから部品や技術を供与してもらっていたものの、途中から日野オリジナル部分がドンドンと増えて、仕舞いにはルノーと互換性のないクルマになってしまったというエピソードもある。ルノーにすれば、パクりやがってかもしれない。
先進国からデザインの影響を強く受けた日本車
さらに問題はデザインだった。デザインレベルというのは産業としての成熟度合いにリンクするもので、技術が未熟だったり、開発に精一杯の状態では、デザインに手が回らないのは当たり前だ。多かったのは当時の最先端であるアメ車をモチーフにすること。
テールフィンや円形のフロントウインドウ、縦目ヘッドライトなど、アメ車らしいポイントというか手法はいくつかあって、日産系で見てみても、初代セドリックやグロリア、初代&2代目プレジデントなど多数ある。
ちなみに三菱のデボネアもアメリカンデザインと言われるが、こちらはそもそも元GMのデザイナー、ハンス・ブレッツナーが担当したので、パクリではなく正統派だ。
そのほか、ヨーロッパ車のエッセンスを取り込んだのは2代目コロナとオペル。3代目と4代目のルーチェにはメルセデスみたいなグリルなどもあった。
究極はプアマンズポルシェとまで言われたマツダのRX-7(FC型)とポルシェ944だろう。実際に各自動車雑誌で比較企画が行われていて、動力性能ではRX-7が勝っていたりして、思わず苦笑いだった。
ライバルからデザインの影響を強く受けた日本車
古い時代は成熟期ということで済まされるとはいえ、シャレにならない気もする最近の例を見てみよう。まず、物議を醸したのがホンダの2代目インサイト。プリウスへの対抗としてハイブリッド推しで登場してみたら、デザインまで似ていてこれまた話題に。
当時の弁としては「空力を追求していくとどうしてもあの形になる」としていて、うーんではあった。ロータスのスーパー7に対して、光岡のゼロワンも同じようなことを言っていた。
そのほか、ストリームとウィッシュの争いも露骨ではあった。車高が低くて、シュッと伸びたボディデザインなどほぼ同じ。ウィッシュが後出しジャンケンで登場しつつ、ストリームを駆逐してしまったのは、大人の世界を垣間見た気がしたものだ。
ただ言い出したら、最近主流のハイトワゴンはワゴンRが作り上げたコンセプトまんまだし、そのワゴンRもデザインを含めてステップバンに近かったりする。超ハイトはタントだろう。5ナンバーサイズの箱型ミニバンはステップワゴンが最初と、目くじらを立て始めるとキリがない。似せたから売れるというわけでもなく、結局はトータルでの実力での勝負になるということだろう。