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ホットハッチの金字塔「ゴルフGTI」新型に乗った!「あえて電動化しない」理由とは?

タイトなコーナーでもぐいぐい踏みこめるFF新時代

 最新ハッチバック「ゴルフ8」のディーゼルモデル「TDI」に引き続いて、フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンは12月22日にスポーツモデル「GTI」の国内導入を発表した。こちらも2022年1月7日(金)から全国ディーラーで発売予定。価格は先代より40万円以上アップの466万円と、いよいよ四捨五入すると500万円という領域に突入してきた。はたして中身はそれに相応しい仕上がりになっているのか、詳しく検証していく。

先代の特別仕様車「GTIパフォーマンスと同等」に進化

 2021年6月の「ゴルフ8」のデビューから遅れること半年、ディーゼルに続いて「GTI」もようやくラインアップに加わった。注目すべきポイントはまずエンジン。ゴルフ6 GTIでデビューした「EA888」型の第4世代目「2.0TSI」エンジンを搭載し、最高出力245ps/5000~6500rpm、最大トルク370N・m/1600~4300rpm。これは先代ゴルフ7の特別仕様車「GTIパフォーマンス」と同等のスペックとなっている。

 また同等なのはエンジンだけではない。日本ではゴルフ7 GTIの限定車や特別仕様車にのみ装着されていた「電子制御油圧式フロントディファレンシャルロック」がゴルフ8 GTIでは標準装備となった。

 もともとゴルフ7および8には、片輪の空転を検知するとブレーキをつまむという方式の電子制御式ディファレンシャルロック「XDS」が全車標準で備わっている。対して、電子制御“油圧式”ディファレンシャルロックは左右のフロントタイヤ間に備わる機械的なシステムで、空転を感知すると即座にマルチプレートクラッチの締結力を電子的にコントロール。アクセルを踏み込んでいてもどんなにタイトなコーナーでも、グリップを失わずにぐいぐい旋回できるのだ。

 また「ゴルフ8 Rライン」にも装備されているロック・トゥ・ロック2.1回転の「プログレッシブステアリング」も採用されており、先代ゴルフ7 GTIの最終期の価格423万9000円を上まわる466万円のプライスタグも納得できる範疇だと言えそうだ。なにしろ同等のスペックである先代「GTIパフォーマンス」は483万9000円だったのだから。

街乗りもスポーツも万能に使える「DCC」付きがおすすめ

 しかしこのゴルフ8 GTI、いざ試乗してみるとその印象は非常によくバランスがとれている。4段階の走行モードが選べる、オプションのアダプティブシャシーコントロール「DCC」を「エコ」または「コンフォート」に選択しておけば、尖った部分などまるで感じさせずに普通のゴルフとしてファミリーやビジネスユースにそのまま対応できるのはさすが。

 ただただ操作に忠実に、意のままに、まるで自分の運転がとびきり上手になったかのように進んでいくので、普段は酔いやすい同乗者にも好評が得られそうだ。もちろん安全に早々と目的地へとたどり着けるということも確か。

 ただ要注意なのは、もともとのゴルフ8がハッチバックとしては屋根が低めなプロポーションを採っているため、そこからさらに15mm下がったサスペンションのおかげで前後ドア開口部の上端が1300mmを割る程度に低く、乗降時に不評を買ってしまう可能性が高いという点。

 またリヤのスプリングレートがゴルフ7 GTIからさらに15%も引き上げられているおかげで、後席ではとくに硬く感じられてしまうのも頭に入れておいた方が良さそうだ。その2点および、便利なミニバンやSUVが買えてしまう値段が家族にバレてしまうことに気を付けておけば、1台でなんでも賄う生活に用いても後悔は少ない。

 もちろん「エコ」モードや「コンフォート」モードに入れたままでは、魅力的なあれこれを期待しすぎると肩透かしを喰らってしまいそうなものだけれど、「スポーツ」モードに叩きこめば、それこそ一挙手一投足が刺激的。自身の動体視力や「この先のコーナーがどんなだったか」という記憶力のほうが追いつけないほど俊敏に、もちろん意のままに動き回れる。

 走行モードは「エコ」・「コンフォート」・「スポーツ」のほかに、個々の項目をこと細かく調整できる「カスタム」モードも用意されており、よりコンフォータブルな乗り心地や、よりダイレクトな感触を楽しむことも可能。

 この「DCCパッケージ」は22万円のオプションではあるものの、万能性も含めたせっかくのGTIの持ち味を存分に味わう上では不可欠だと言えるほど。しかし、いつの間にかVWのセットオプションもなかなか値が張るようになっており、この試乗車では車両本体価格466万円に加えて、ほかのゴルフ8同様にナビも含む「ディスカバープロパッケージ」19万8000円を装着。さらに、22個のLEDが対向車を幻惑させずに広範囲を照らすLEDマトリックスヘッドライト、流れるウインカー、駐車支援システムにヘッドアップディスプレイなどを含む「テクノロジーパッケージ」17万6000円、上述の「DCCパッケージ」22万円、有償カラー「キングズレッドメタリック」3万3000円、ディーラーオプションのフロアマット4万9500円……と、オプションの総額は67万6500円。

 合計してみれば国産車を含めた他社のオプション攻勢よりは割と大人しめなほうだと気がつくものの、総額では533万6500円。やはりいつだってGTIは憧れの存在なのだ。

燃費と経済性もまずまずの優等生

 マイルドハイブリッドシステムが目玉のゴルフ8シリーズだが、このGTIにはそのシステムは導入されず、従来通りのハイオク一本勝負。あえて電動化に少しもなびいていないのが、GTIの心意気というものだろう。WLTCモード燃費は12.8km/Lとあまり奮わない数値だが、試乗車の平均燃費は10.8km/Lを指しており、箱根の山道を中心に走ってきたであろう試乗会の累積燃費としてはまずまず。ワインディングと高速道路を含むルートを日中のドライブを想定して走らせた際の平均燃費は16.3km/Lで、遠出の足として差し支えるほどではないだろう。

今後のスポーツ系限定車にも期待

 高次元でバランスのとれたゴルフ8 GTIだが、贅沢を言えばほんのもう少し、いびつな部分も味わってみたいところ。ヨーロッパでは300psを誇るフラッグシップたる「GTIクラブスポーツ」も早々にデビューを果たしており、そういった特別仕様の限定車の日本市場への導入も非常に期待したい。もちろんさらに上をゆく4駆・高出力モデルの「ゴルフR」も近々登場するのだが、やはりどうしても「GTI」は特別な存在なのだ。

ゴルフ8 GTIスペック

■フォルクスワーゲン・ゴルフ8 GTI主要諸元

〇全長×全幅×全高:4295mm×1790mm×1465mm

〇ホイールベース:2620mm

〇車両重量:1430kg

〇乗車定員:5名

〇最小回転半径:5.1m

〇エンジン種類:直列4気筒DOHCターボ

〇総排気量:1984cc

〇最高出力:180kW(245ps)/5000~6500rpm

〇最大トルク:370N・m/1600~4300mm

〇燃料タンク容量:51L

〇トランスミッション:7速DSG

〇燃料消費率(WLTCモード):12.8km/L

〇サスペンション 前/後:マクファーソンストラット/4リンク

〇ブレーキ 前・後:ベンチレーテッドディスク

〇タイヤ 前・後:225/40R18(DCCパッケージは235/35R19)

〇車両本体価格:466万円

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