微に入り細にわたる丁寧な作業
さらにパーツの調達もさすがメーカーで、他車流用の情報は自動車メーカーだけに得られやすいとしても、バックオーダーになっているものも上手に入手しているのはさすが。それゆえ、シーマ最大の関門であり、注目していたエアサスも新品になっている。
さらにシート生地は取引のあるメーカーが特別に作ってくれたもので、シートベルトも同様だ。
とくにシート地は直接目に入り、触れるところだけにでき上がりの最重要ポイントのひとつ。当時もののシート地が手に入ることはマレなだけに、この点はうらやましい限りではある。
シートベルトについては関係者もさすがに無理だろう、ということで諦めかけていたポイントとのこと。ただ、レストアラーのなかでは、ラベルが縫い付けられていることもあってシートベルトの質を重視する人は多いだけに、よかったと思った対応だった。
テストドライバーも走行チェック
また、念入りというか、さすがメーカーが手がけたと思わされたのは、走りについてオーテックのテストドライバーがチェックしたということ。なんとなく、「いいんじゃない?」レベルではなく、素人はわからない細かな振動やそれに伴う取り付けまで洗い出したという。たとえばプロペラシャフトの振動で、ダイナミックバランスを取っていないのかと思い質問すると「取ったうえでの話です」と返ってきたのは驚いた。
一般的にはダイナミックバランスを取ることも絶対ではないし、振動が出ていても「こんなものですよ」で終わってしまうこともあるだけに、さすがのひと言だ。
最後に気になったところはというと、仕上げのレベルの問題。聞けば内張りなどはあえて以前の名残りを残したとのこと。完全に仕上げないで、走りの傷的な部分はあえて残すのが、欧米も含めて現在のレストアのトレンドではある。その点、今回のレストアもわかっているな、と思ったが、実車を見てみると、かなりピカピカで名残り的なところは正直わからなかった。ただ伊藤かずえさんだけがわかればいい問題でもあるので、とやかくいうことではないし、少々気になったのはこの程度である。