オーストラリアの経済を支え続けた「ランクル」の爪痕
ランドクルーザーは家族の一員
カルトンヒルズ・ステーションは、8000頭ほどの牛を放牧する牧場。馬に乗った子どもたちが牛の群れを追う70系ダブルキャブユートと並走する。この日は乗馬の訓練を兼ねて、仔牛の放牧作業に連れてきてもらった。
牧場内のフラットダートを砂ホコリを巻き上げて走る。8000平方㎞と兵庫県並みの広さを持つカルトンヒルズの道は自ら作り、グレーダーなどで保守管理をしなければならない。想像もつかない労力と資金が必要だ。
国立公園で維持管理作業に従事
4輪駆動車でなければ辿り着けない国立公園もあるし、公園内には4輪駆動車だけが訪れることができるスポットもある。パークレンジャーは70系ユートの荷台に多種多様の資機材を積んで保守管理を行う。水タンクとポンプを積んで山火事の消火に当たることもある。
行政サービスでもなくてはならない存在
「アウトバック」と呼ばれる大陸内陸部の警察や消防。管轄地域が広大で道路状況にかかわりなく出動要請されるため、70系ロングバンやユートが幅広く使われる。奥地の先住民コミュニティではバスとしても利用。救急車を含めて命に直結するサービスで存在感は大きい。
鉱山の生命線でもある鉄路を守る
鉄鉱石は内陸の鉱山から積出を行う港まで、約600㎞を専用鉄道で搬出。線路沿いには保守用の道があるが、基地から100㎞、200㎞と荒れた未舗装路を毎日走って現場に向かう。左写真は全長2㎞にもなる鉱石積出列車の脇を走る70系ユート。写真右は、線路を走れるように改装したランドクルーザーの軌陸車だ。これも重要な道具となっている。
40年も前の40系もまだまだ現役
群れからはぐれた迷子の牛を捕らえ、群れに戻す仕事に使われるのが「ブルバギー」と呼ぶクルマ。40系を改造したものが多く、車体の周りをケージで囲い、先頭部に牛を抱え込むアームを備える。ひとつ間違えば死亡事故にもなる危険な作業だ。
ウインドミルはアウトバックのシンボル
澄み切った青い空の下でカラカラと回る風車(ウインドミル)は、家畜のための地下水をくみ上げるもので、牧場内にいくつも設置されている。この日は不調だったポンプの交換作業に来ていた。
荷台は代々使い続ける専用工具箱
ニューサウスウェールズ州の内陸部にあるモリーは綿花の一大生産地である。”コットンキング”のピーター・グレーニーが経営するのがノーウッド・ステーション。全部で4台の70系ユートを所有し、年式の古い個体が一番の汚れ仕事に使われる。荷台は特注の「工具箱」となり、車輌の入れ替え時に荷台ごと乗せ換えていく。3~4月の綿花摘み取り時期は、寝る間もないほどの忙しさになるという。
遊びでもランドクルーザーを使い倒す
70系ロングバンだけのFacebookグループがある。毎年冬にチャリティを兼ねた集まりを実施。200台近いロングバンが一堂に会し、極寒のキャンプを楽しむ。ほかにも各州に「ランドクルーザークラブ」がある。
□筆者プロフィール
難波 毅(なんば たけし)/1953年生まれ。日本経済新聞社のカメラマンを経て1986年独立。オーストラリアの奇岩風景がライフワーク。DVDの制作などを通じてユーザーと直接触れ合い、世界中でランドクルーザーがどのように使われているかを取材し続ける。30年以上関わり続ける豪州での情報量とネットワークは豊富だ。