マツダ・ユーノス500
当時、かなりレアなセダンとして挙げられるのが、かのG・ジウジアーロが「世界でもっとも美しいサルーン」と呼んだと言われる、1992年に発売されたマツダのユーノス500である。そのイタリアのランチアを思わせる流麗かつ前衛的なスタイリッシュさ、エレガントさに男臭さは皆無だが、当時のファッション関係者、カタカナ商売の人たちにひっそりと愛された。なお、1993年にはカーデザイン大賞を受賞している隠れた名車であった。
隠れた、という意味は、日本では何故かあまり盛り上がらず、わずか3年という短命なモデルライフだったからである(欧州にも輸出され、デザインも大きく評価されていた)。今のマツダのデザイン性の評価の高さの根源は、90年代の欧州に端を発している、とも言えそうだ。
いすゞ・ジェミニ
時を戻そう。80年代にも、いぶし銀の魅力があるセダンが多数あった。1988年に登場したいすゞ・ジェミニZZハンドリング・バイ・ロータスは、5速MT、レカロシート、MOMO本革ステアリング、そしてブリティッシュグリーンのボディカラーなど、女、子どもを寄せ付けない(!?)小粒ながら輸入セダンに負けないいぶし銀の存在感、パフォーマンスの持ち主だった。
トヨタ・マークII/チェイサー/クレスタ
また、80年代末期から90年代初頭のミドルクラスのセダンを象徴するのが、トヨタ・マークII/チェイサー/クレスタだ。5代目はバブル期のハイソカーとして人気で、スーパーホワイトのボディが街に溢れかえっていたことを思い出す。決して硬派なセダンではないが、当時大ブームだったDCブランドのファッションとの相性は抜群だったと記憶している。このころには、ホンダの3代目インスパイア/セイバーといった上品なセダンも、国産セダン派のハートに刺さっていたようだ。
こうした80~90年代のセダンは、いわゆるオヤジ臭い、ラクダのシャツを着ているようなとはセダンとは一線を画す、クルマ好きな男のためのセダンであった。そんなセダン全盛期を知る、当時セダンを骨まで愛した今のオヤジ・ジジイ世代は、だからセダンから一生離れられないのかもしれない。