「グランピング」のメリット&デメリットを再検証
テレビや雑誌など色々なメディアで取り上げられている「グランピング」。正直な話、その実態を知らずにブームに乗っている人も多いのではないだろうか? ここでは「グランピング」という、新たなアウトドアスタイルの実態を再検証してみたいと思う。
グランピングっていつから流行り始めたのか!?
この『グランピング』とは「魅惑的」「華やか」という意味を持つ「グラマラス(Glamorous)」と、キャンプを行う「キャンピング(Camping)」を融合した造語であり、2015年前後から注目されはじめたアウトドアの新しいスタイルを指す。
そもそもキャンプとは野営や宿営、テント生活、軍隊生活などの意味を持ち、快適性とは対極にある「不自由を楽しむ趣味」として愛されてきた歴史があるのだが、道具の進化やキャンプ場などの施設の充実などにより、ここ数年で大きな進化を遂げている。ひと昔前のキャンプ場は設備が乏しく、トイレはお世辞にも衛生的とは言い難い必要最小限の設備に留まり、温水シャワーやサウナ、アウトドア道具のレンタルショップを併設している場所などは存在しなかった。
ところがキャンプブームによる人口増加によりキャンプ場に求めるニーズが多様化することで、キャンプ場自体がサービスの充実を図るようになり、キャンパーたちは快適な野営を体験できるようになっている。その延長線上として生まれたのがグランピングであり、最近ではアウトドアの新たなムーブメントとして成長し続けているのだ。
アウトドアフィールドでリゾート感が楽しめるグランピング
グランピングが急成長を遂げた理由のひとつが、キャンプブームによるマスの拡大だ。キャンプを趣味とする人口が増えることにより市場が拡大し、「商売」としての利益が大きくなった。そこに目を付けたのがホテル経営企業やリゾート開発企業であり、ホテルやリゾートで培ったサービスやホスピタリティをアウトドアへと持ち込んだグランピングは、能動的だったキャンプを受動的な楽しみとして提供してくれる。
ホテルの一室をテントやロッジに置き換え、面倒なキャンプ道具を設営することなく宿泊することができ、室内には贅沢な調度品が置かれホテルと同等のベッドやソファを提供することでグラマラスな時間が楽しめる。
また、一流シェフが贅沢な食材を携えてテントを訪れる出張バーベキューサービスや、プライベートで楽しめるジャグジーや温泉を備えている施設も存在するというから驚きだ。グランピングとは自力でキャンプを楽しむのではなく、手ぶらでキャンプ場を訪れても何不自由のない最高の「お・も・て・な・し」を受けることができる「テント泊ホテル」なのである。
もちろん施設によってサービスの充実度は異なり宿泊料金も大きく変わってくるが、一般的なキャンプでは味わえない贅沢な時間が大きな魅力。最近では地方自治体が村や町興しの起爆剤として参入し始めたこともあり、今後もグランピングブームが加速していくことは間違いない。
流行の兆しを見せる「セルフ・グランピング」の落とし穴
前項にも述べたように「受動的なキャンプ」を善としないキャンパーも数多い。「キャンプ=不自由を楽しむ自由」を能動的な人たちとは対極をなすグランピングだが、最近では企業が提供する施設を使わず自分たちでキャンプの快適性を求めるキャンパーも増加している。既存の最小限のギアで最大限の実用性を求めるキャンプではなく、キャンプサイトに調度品やソファを持ち込み、華やかな飾りをプラスするセルフ・グランピングも大きなムーブメントとして広がっているという。
そのスタイルはモンゴルの遊牧民が暮らす「ゲル(パオ)」のようであり、これもひとつのキャンプスタイルとして定着しつつある。
自分で作り上げるセルフ・グランピングのスタイルは千差万別だが、キャンプサイトを豪華に演出するには大きな壁が立ちはだかる。そのひとつが「荷物の多さ」であり、コンパクトに折り畳めるキャンプ用ギアとは違い贅沢なチェアやテーブル、調度品を持ち込むにはラゲッジ容量の大きなクルマと移動・設営を行う莫大な労力が必要になるということだ。
長期間のキャンプであれば苦労を時間で割ることで一日当たりの負担は軽減されるが、一泊二日程度のキャンプでは設営と撤収で終わってしまうことも考えられる。最近では「映え」や「エモイ」写真をSNSに投稿するためだけにグランピングをするキャンパーもいるようだが、自然との時間を過ごせないのであればキャンプとしては本末転倒だ。
キャンプのハードルを下げて家族三世代で楽しめるメリットもある!
ホテル並みの贅沢さが味わえるグランピング。その魅力は果てしなく大きく、アウトドアが苦手な女性やテント泊をする体力のないシルバー世代にとっては、気軽に楽しめる新たなスタイルであることは間違いない。
ただし、同じキャンプではあるものの一般的なキャンプとは別ジャンルと考えるのが正解だろう。どちらが良い、どちらが悪いではなく、TPOに合わせて使い分けるのが近代キャンプの賢い過ごし方になるはずだ。普段は能動的なキャンプを矜持し、誕生日や記念日などの特別な日にグランピングを満喫するのも悪くない。また、自らが構築するグランピングではキャンプサイトへの創意工夫によって楽しさが増すはずだ。新たな時代のキャンプスタイルとして認知され始めたグランピング。その進化から目が離せない。