プリメーラ・オーテックバージョン
JTCC参戦を記念した発売されたメーカー謹製のスパルタンモデル
トミーカイラM20t/M20t4の登場から遅れること約2年、日産の特殊車両開発部門である「オーテックジャパン(以下オーテック)」から、JTCC(全日本ツーリングカー選手権)参戦記念車として1994年11月に発売を開始された。当時のオーテックバージョンは現在のような日産の生産ラインを使っての生産ではなく、開発から生産までオーテックが請け負い、開発陣のこだわりが盛り込まれた入魂のモデルだった(マーチボレロA30がその流れを継承)。ちなみに、このクルマはスカイラインの父こと故・櫻井眞一郎さんがオーテック在籍時代に登場した最後のコンプリートカーである。
エクステリアは欧州仕様をベースとしたフロントグリル、フロントスポイラー、大型リヤスポイラーを追加し、スポーツイメージを強調している。エンジンは圧縮比を10から11.5までアップするとともに専用エキマニ/フロントチューブを採用。ECUをリセッティングすることで180ps/19.6kg-mまでパフォーマンスを高めた。ミッションはクロスタイプのT4用を採用し、専用チューンドサスペンション、ビスカスLSD、205/50R15ワイドタイヤを組み合わせることで、痛快無比なハンドリングと安定感ある走りを両立している。
インテリアも専用シート生地とトリムを奢り、スカイライン系のスポーツステアリングを装着するなど、まさにエボリューションモデルというにふさわしいモデルだった。新車価格は269万8000円。高騰する1990年代スポーツモデルのなかで、大幅に値上がりしていないので、手に入れるなら今が最後のチャンスかも。ただし、維持するには部品の確保は必須だ。
史上最強のプリメーラは200psオーバー×6速MTのあのクルマ
今回はファインチューンされた初代プリメーラを取り上げたが、2台が歴代最強かと言われれば、じつはそうではない。パフォーマンス面で抜きんでているのは3代目プリメーラに設定された20Vだ。
可変バルタイ「VVL」が投入されたSR20VEを搭載。204ps/21.0kg-mのスペックは歴代随一で、組み合わされるミッションも日産FF初の6速MTと超絶贅沢。足まわりもしなやかで、懐が深く上質なハンドリングを兼ね備えていた(しかも、セダンだけでなくワゴンにも設定)。
開発陣はP10の再来を目指したのだろうが、マーケットの趣味嗜好が変わり、大人のスポーツセダンが求められなくなっており、MTのみという割り切った設定が購入層を限定し販売は低迷した。ただ、200psオーバーの高回転型NAを6速MTで操れるパッケージは今も魅力的。荒く乗られておらず、中古車相場もさほど高くないので、スタイルさえ好みであればレア度(なかなか同じクルマに出会わない)も含めて狙い目な1台といえるだろう。