シリーズハイブリッド搭載モデルの追加で魅力爆上がり
2019年11月にデビューしたダイハツのコンパクトSUV「ロッキー」。ご存知の通り、ロッキーはトヨタ・ライズとの兄弟車(ダイハツがトヨタにOEM供給)であり、全長3955mm×全幅1695mm×全高1620mmの5ナンバーサイズのボディは取り回しがよく、日常のお買い物から旅行やアウトドアなどのレジャーまで、快適で実用的に使えるパッケージングが魅力だ。
そのロッキーに今年11月、ハイブリッドシステム「e-SMART HYBRID」搭載モデル(2WDのみ)が新たに追加された。そのほか、「e-SMART HYBRID」にも搭載される新開発1.2L直3DOHC NAエンジン搭載モデル(2WDのみ)、既存の1.0L直3DOHCターボモデル(4WDのみ)をラインアップ。2種類の駆動方式と3つのパワートレインから選べるようになった。
トヨタとの販売拠点数の違いなどにより、販売台数の面でライズに差をつけられているロッキーだが(2021年1~6月販売台数/ライズ4万7965台、ロッキー1万1220台)、今回のハイブリッドモデルの追加は大きなトピックであり、販売面での起爆剤になることは間違いなさそうだ。
実際、都内のダイハツ販売店で話を伺うと「私が担当するロッキーにお乗りのお客さまで、話題性があるのでガソリン車からハイブリッド車に買い替えを検討されている方がいらっしゃいますよ」とのことであった。
クルマの趣味嗜好が異なる3人がロッキーHVを堪能した
そこで話題性と個人的な興味もあり、新しくなったロッキーの試乗を兼ねてハイブリッドモデル「Premium G HEV」を借り出して、話題のコンパクトSUVの実力を検証するべく、都内から茨城県高萩市までドライブに出かけた。
専門的な新車試乗記は自動車専門誌にお任せするとして、編集スタッフ・オガ(アラフィフ親父、愛車/VWゴルフトゥーラン)&ヨネ(アラサー男子、愛車:フィアット500)、スバ女ライターのアヤ(アラサー女子、愛車/スバルWRX S4ドシャコタン仕様)の3人が、自由気ままに電動化ロッキーの美点と気になるポイントをチェックしてみた。
注目の「e-SMART HYBRID」はどんなシステム!?
今回新しく追加されたロッキーの新機軸「e-SMART HYBRID」を簡単に説明すると、一般的にシリーズ方式(エンジンで電気を発電して電気モーターのみで走行する)と呼ばれる、ハイブリッドシステムが採用されている。つまり日産のe-POWERと基本的に同じシステムとなり、ピュアEVのようなシームレスな走りが楽しめるのが特徴だ。
また「e-SMART HYBRID」のもうひとつの特徴としてスマートペダル(S-PDL)が備わり、ワンペダルドライブができること。これはアクセルオフでエネルギー回生がかかることで、アクセルペダルの調整だけで車速をコントロールすることができ、バッテリー充電にも貢献してくれる機能だ。
ダイハツの電動化ロードマップのスタートモデル
これまで純粋なダイハツ車にはマイルドハイブリッドを含めたハイブリッドシステム搭載車がなかったのだが、ロッキーに「e-SMART HYBRID」を採用した理由は、カーボンニュートラルの普及が不可欠であり、さらなるCO2排出低減のカギとして電動化に大きく舵を切ったこと。
ダイハツは12月20日の「ハイゼット カーゴ」「アトレー」、「ハイゼット トラック」の新車発表会で、奥平社長が2025年までに軽自動車EVの投入に加えて、2030年までに国内で販売するすべての新車をハイブリッド車とEVにすることを目指すと発表している。
つまりロッキーが、そのロードマップのスタートモデルになったとも言うことができ、今後ブーンやトールといったトヨタにもOEM供給されるリッターカークラスのモデルにも採用されることが予想される。
ハイブリッドモデルの意匠に上質さプラスされた!
まずエクステリアを見ていく。「Premium G HEV」と「X HEV」の「e-SMART HYBRID」モデルには、ガソリンモデルに採用される横方向に広がる5本のバータイプのフロントグリルとは異なる専用のメッシュ風グリルに変更されていることが大きな変更点。また、グリル中央にはトヨタの電動化モデルの象徴であるヒートブルーエンブレムも備わり、雰囲気はガラリと一新されている。
オガ:新しく追加投入されたロッキーのスタイリングはどうかな? 個人的にはプレミアム感があるフロントマスクが好印象で、力強さを全面に押し出すガソリンモデルと差別化したのがいいよね。
ヨネ:角張り過ぎず、丸みを帯び過ぎずなロッキーのイメージを崩さずに、よりスタイリッシュになったかな~と。
オガ:アヤちゃんは?
アヤ:ヨネちゃんと一緒で、言うなれば「theコンパクトSUV」というサイズ感だけど、カクカクしたボディラインがカッコいいな~という印象ですね。
オガ:そうだね。ライズが売れているけど、ロッキーとライズのどちらを選ぶかって考えたときに大きな違いはエクステリアになるから、コンパクトSUVでも力強さをしっかり主張するロッキーのスタイリングに、上質さがプラスされたことは、ハイブリッド追加に合わせて販売面に大きく影響しそう。
スポーツカーのようなコクピットだけでも買う価値あり!?
オガ:インテリアはどうだろう? 女子的には装備とか気になるかと思うけど……。
アヤ:ダッシュパネルの両端にあるドリンクホルダーがプッシュ式の収納タイプで便利! ダッシュボードのザラザラした素材感が女子的にはもう少し頑張ってほしかったですね。
オガ:ヨネちゃんは?
ヨネ:使い勝手が良いですね。運転席と助手席だけでドリンクホルダーが4つもある!(左右ドアポケット各2カ所、センターコンソールドリンク2カ所)
オガ:そのあたりの工夫がコンパクトカーを知り尽くしたダイハツらしいポイントだね。あと、センタークラスターが運転席側に向いているね。角度はわずか4.5度ほどでシンメトリーなデザインとの操作性の良し悪しはわずかだと思うけど、運転席と助手席をセパレートさせたセンターコンソールの雰囲気と合わせて、スポーツカーのような設えはクルマ好き親父としてはそれだけでアガる!
オガ:アヤちゃんはいま後席に座ってるけど乗り心地や居住性はどうだろう?
アヤ:後席の座り心地は悪くはないですね。ファブリックとソフトレザー調のシート表皮はデザインされていてスポーティですね。セダンなどで座面の奥側が深く落ち込んでいるクルマがあるけれど、比較的フラットで座りやすい。足元のスペースもコンパクトSUVとしては狭くなくて、めちゃ脚を伸ばせる~というわけではないけど、長距離(茨城~東京間)でも快適な乗り心地でした。
ワンペダルドライブのフィーリングには賛否アリ
オガ:ヨネちゃんとは1.0Lガソリンターボモデルで一緒に試乗したことがあったけど、今回のハイブリッドモデルの印象は?
ヨネ:街なかでは発進加速が2Lクラス並みに感じるトルクの太さに驚きです。ただ高速道路のインターチェンジからの合流で、車速を80km/hぐらいまで上げようとしたときは、さすがにエンジンが始動して騒がしいかも。ただ、良くも悪くもエンジンが唸りながら加速している感覚は、小排気量のガソリン車に乗っているようなフィーリングで、アクセル操作に対してシンクロしているような雰囲気はある意味ナチュラルですね。
オガ:エンジンが唸るのは発電用エンジンが1.2Lの直3NAエンジンだから仕方ないよね。スマートペダルはどう?
ヨネ:アクセルオフの踏み(戻し)しろに対してリニアに減速してかっくんブレーキになりにくいから、同乗者をあまり不快にさせなさそうです。
オガ:アヤちゃんは初めてのワンペダルドライブはどう?
アヤ:なんだこれ? という感じ(笑)。使い慣れていないと、アクセルを微妙にコントールしたときに一瞬回生がかかって重い加速感が扱いにくいかな~と。減速するときもコントロールし慣れてないから「自分でブレーキ踏んだ方がいいや!」って……。正直、いまいちメリットがわからなかったです。
オガ:まあ、そうだよね。この業界にも結構、ワンペダル嫌いな人多いし。ボク個人は少数派(?)のワンペダル好きだけど、使うシーンを考えないとトラブルになるかな~と思うこともある。制限速度40km/hぐらいの市街地だと、アクセルを離した瞬間にすぐにブレーキランプが点灯しているようで(夜間だとバックミラーに映った後方のクルマが赤く照らされてる)、逆の立場だったら不快に思うかも。ただ、首都高のようなクネクネとカーブが続くようなシチュエーションでは、アクセルペダルのオン・オフだけで速度調整できるから、ブレーキを踏む操作がなくなって、とても快適に走ることができるんだけどね……。
少しスポーティな硬めの足は賛否両論
オガ:以前試乗した1.0Lのガソリンターボモデルは、街なかでの乗り心地は秀逸だったけど、高速道路ではリヤサスが落ち着かない感じだった。今回の「e-SMART HYBRID」ではどう?
ヨネ:オドメーター見ると、まだ1800km程度だから少し足が硬いかな~と。あとは17インチ(タイヤサイズ:195/60R17)というのもあるかもしれないですね。
オガ:好みの問題もあるけれど、それをスポーティと捉えるか硬いと捉えるかだよね。普段からしなやかな乗り味のクルマに乗っていると硬いと感じるかもしれないね。ただ、リヤシートの下にバッテリーを搭載しているからなのか、ガソリンモデルで感じた足のバタつきというか落ち着かない感じはなさそうだよね。アヤちゃんはどう?
アヤ:愛車は車高調入れてベタベタに車高を落としているから乗り心地は気になりませんでした(笑)。短い全長と5ナンバーサイズの車幅だから運転しやすいですね。運転席からの見切りの良さもいいので、狭い道で大きなクルマとすれ違うときでも、車幅感覚で苦労することはありませんでした。ただ少し気になったのは、スマアシ(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を使って走らせていると、クルマを車線の真ん中に戻そうとしているのか、ハンドルが左右に細かく動いて少し不安になりました。慣れの問題かもしれませんが。
大人ふたりならキャンプにも使える実用性も◎
オガ:アウトドアブームもあって人気のコンパクトSUVのだけど、実用性はどうだろう?
アヤ:身長156cmの私でも乗り降りは楽チンでした。ランクルのようなおっきな車格になると、足を上げてヨイショって乗り込む感じになるけれど、セダンやステーションワゴンのような至って普通のクルマとほぼ変わらない乗降性で車高も高くないので、女子でもラゲッジに積んだ荷物の載せ下ろしもラクに行えました。あとラゲッジフロアがフラットなので大きめのキャリーバッグでも、持ち上げる必要がないのが良いですね。
ヨネ:そういえば前回のガソリン車の試乗ではキャンプ道具満載でしたけど、大人ふたりのキャンプならロッキーでも問題なかったですね。
外気温が低いなかで平均燃費21.7km/Lは優秀!
今回、都内から茨城県高萩市まで往復約440km走っての平均燃費は21.7km(一般道約130km/高層道路約310km)だった。WLTCモード燃費が28.0km/Lだからもう少し伸びるかな~と思ったが、高速道路では思いのほか燃費が向上しなかった印象だ。ただ、外気温が低くかったこともあり、エアコンはつねにフル稼働であったことが原因かもしれない。
また、燃料タンク容量がガソリンモデルの36Lに対して「e-SMART HYBRID」モデルは33Lと小さく、ついついメーターパネルに表示されている平均燃費(21km/L台)を見て安心していた訳じゃないが、燃料残量計がほぼ空の状態になっていたことに驚かされた。
普段ガソリン車に乗り慣れていると、ハイブリッドカーの燃料タンク容量が少ない傾向にあることを失念してしまうため、注意が必要かもしれない。
運転に不慣れなドライバーでも安心して運転できる!
今回、新しく追加されたロッキーの「e-SMART HYBRID」を1日たっぷり試乗してわかったことは、老若男女問わず誰もが運転しやすいクルマであるということ。
例えば、試乗車に装備されたオーディオはあえてディーラーオプションの9インチプレミアムナビが用意されていた。ガジェット系に詳しい若い世代には最新のディスプレイオーディオ(メーカーオプションとして設定アリ)でも良いのかもしれないが、高齢の方やスマホの操作が疎い方にとっては、従来タイプのメモリーナビが選べるのはありがたい。しかも発話で音声操作できるのでナビ操作はとても簡単だ。
また、スマートアシストが全車標準装備(一部機能が未装備のグレードやオプション装備あり)となっており、衝突回避支援ブレーキ(自動ブレーキ)や衝突警報機能のほか、試乗中に「これはいいな!」と思ったのは標識認識機能(進入禁止/最高速度/一時停止)が9インチモニターに大きく表示されること。
さらに運転に慣れていないドライバーだと、駐車しているときに何度も切り返しを行い、タイヤが真っ直ぐなのか、切れているのかわからなくなることがあるようだが、そんなときに便利なタイヤの切れ角をメーターパネル内のモニターに表示してくれる「ハンドルポジションモニター」も装備もありがたい。
軽自動車やコンパクトカーは、免許取り立てのような若い世代や高齢者からのニーズが高いモデルでもある。ベテランドライバーにとって利用頻度が少ない機能でも、不慣れなドライバーのために気の利いた装備をしっかり用意するダイハツのユーザーに対する心の深さを、あらためてロッキー「e-SMART HYBRID」モデルを試乗して認識することができた。