オペル・ザフィーラのOEMモデルとしてトラヴィックが登場
【2001年発売/トラヴィック(XM型)】
ドミンゴが生産終了し3年の空白のあと、ふたたびスバルから3列シートを備えるモデルとしてトラヴィックが登場した。とはいえ当時提携関係にあったGM(ゼネラルモータース)系列のオペル・ザフィーラのOEMモデルであった。
トラヴィックはヒンジドアの3列シート車で、OEMモデルながらベースとなるザフィーラの日本仕様には設定がない直列4気筒2.2Lエンジンが搭載されていた。Sパッケージにはトラヴィック専用のエアロパーツや専用サスペンションを装備。とくに足まわりは多人数乗車時でも安定した走りが可能で、そのセッティングはじつに秀逸であった。これらはスバル独自の仕様で、トラヴィックのSパッケージはSUBARUのSなのではないか? とささやかれるほどであった。
ベースとなるオペル・ザフィーラはドイツで生産される一方、トラヴィックはGMタイ工場で生産されていた。そのため製造コストの低減などにより、エンジンや装備などザフィーラよりも充実していながら、車両本体価格はトラヴィックのほうが50~100万円ほどリーズナブルな価格設定だった。結果、OEMモデルながら一定の支持を得るモデルとなった。
2003年にはマイナーチェンジが実施され、ウインカーレバーとワイパーレバーを入れ替え、ほかの国産車と同一のレイアウトに変更。さらに、セカンドシートのリクライニング機構や電動格納式ドアミラーなどが追加され、より日本国内で扱いやすいモデルとして進化。しかし、生産拠点であるGMタイ工場での生産終了に伴い、2004年をもってトラヴィックの生産が終了した。
ミニバン人気が飛躍的に高まるなかエクシーガがデビュー!
【2008年発売/エクシーガ(YA型)】
トラヴィックの生産が終了してから4年後の2008年、空前のミニバンブームのなかエクシーガがセンセーショナルにデビューした。発売当時は3代目ホンダ・オデッセイや2代目トヨタ・イプサムなど、ヒンジドアを持つミニバンも人気があり、スライドドア車よりも扱いやすいサイズ、セダンから乗り換えて違和感のないドライブフィールなどが支持されていた。
そんなライバルがひしめくヒンジドアのミニバンカテゴリーに突如現れたエクシーガは、7人乗りでありながらスバル自慢のシンメトリカルAWDや、フラッグシップのGTグレードにはEJ20型ターボエンジンを搭載。さらにはレガシィ譲りのスポーツカー顔負けの軽快なフットワークといった、スポーツ性能を前面に打ち出していた。
もちろんNAエンジン車やFFモデルなども設定されており、リーズナブルな仕様も人気を博した。走りを求めるお父さんからの支持はもちろん、レガシィやインプレッサといったスポーツモデルに乗っていたユーザーが、家族構成やライフスタイルの変化で必要を迫られる3列シート車の受け皿としての役割も果たしていたといえる。
もちろんそれらの高性能モデルからの乗り換えでも不満なく走るドライビングパフォーマンスに満足するオーナーも多く、カスタマイズやチューニングといった点でもインプレッサやレガシィのパーツ流用などができるという点でも人気を得た。
しかし、エクシーガはフルモデルチェンジすることなく一世代で終焉を迎えてしまった。だが、10年間にわたり生産される間、運転支援システム「アイサイト」搭載車の追加、2.5L NAエンジン搭載車の追加、NAモデルのトランスミッションの変更(AT→CVT)、さらにSTIコンプリートカーのtuned by STIやtSを限定生産。さらに、ビッグマイナーチェンジでSUV色を強めたクロスオーバー7を設定するなど、つねに色あせないチャレンジングな展開に根強いファンも多いモデルだ。
スバル製ミニバンが市場から姿を消して早3年。一部のユーザーからは北米専売の大型SUV「アセント」の国内導入を望む声もある。だが、8人および7人乗車の3列シート車ながらそのボディサイズは大きく、やはり扱いやすいサイズでの3列シートモデルを望む声も多い。
時代はミニバンブームからSUVへとシフトしていることもあり、新たに3列シート車がSUBARUからデビューすることは現実的には難しそうである。しかし、今回紹介した3車種にはいずれも根強いファンがいまでも乗り続けており、それだけ魅力ある高い商品力を持ったクルマであることは間違いない。クルマに対して実直なメーカーだからこそ愛されるモデルとなるのだ。
個人的には完全新製のモデルは難しいかもしれないが、ラインアップとして新型アウトバックに7人乗りを設定したらある程度の需要は見込めるのではないか? と思ってしまうのである。