街乗りしやすいシティRVだった
走らせた印象も1.6Lとしては非常にトルクフルで、ライト・クロカンもしくはシティRVとして都市部での扱いに優れていた。実用エンジンとしての実力はトップだと感じたし、ライバル達をリードする実用型1.6Lエンジンとして他社にも負けない、扱いやすい優れたエンジンに仕上げられていた。
エンジンの能力を引き出すトランスミッションの5速MTはいわずもがな。CVTも当時としては標準以上のフィールであり、嫌みの感じられないスタイリングもあってこれからのコンパクトカーはこういうクルマなのだろうと感じた。
当時は多少でも車高、着座位置が高いクルマであるとある種の緊張感によって身構える必要があるはずだったが、HR-Vはそんなこととは無縁。市街地や高速道路の普段使いでも高水準だった。それこそ初の愛車でも、軽自動車からのクラスアップでも満足感が得られるだろうから、着座位置が少し高くて広いガラス面積の視認性に優れるHR-Vこそ、新時代の実用車でエントリーカーだと思っていた。
ところがこのHR-Vは同じムーバー・シリーズのS-MXと並んで、ヒットモデルとは言えなかった。それは発売当初3ドアのみや、VTECがCVTのみだったことが大きかったと思う。予定通りかはわからないのだが、発売から一年とたたずに100mmホイールベースを延長した5ドア仕様を追加。
内装色やシート生地を変更したものの上昇気流には乗れず、2001年にCVTの改良や全タイプ国土交通省「優―低排出ガス」を取得し、VTEC仕様のFFも設定した。2003年には5ドア仕様のみとして装備を充実させたものの、一代限りで終了となる。
想像だが、発売当初から5ドアが、VTECに5速MT仕様があれば違った未来があったのではないだろうか? それとも多くの方がSUVを求めるには少し時代に早かったのか? 同じ5ナンバーサイズのミニバンである初代ストリームは、2000年10月発売で大ヒット。コンパクトカーで言えば画期的な初代フィットは2001年6月登場で、一大ブームを巻き起こすことになる。正直、フィットの1.5Lを買うのであれば(比較するのは無理があるが)HR-Vの方がよっぽど快適な実用車だと思っていた。
まとめ:コンセプトが斬新過ぎた
HR-Vは残念ながら日本国内ではヒットしなかったが海外でHR-Vの名は続いていて、ヴェゼルの姉妹車の名前などで存在感を発揮している。HR-Vの先進性は、2代続けてヒットモデルとなっている現在のヴェゼルが受け継いでいると思う。HR-Vがこれからの、新世代実用車だと本気で思っていた筆者としては、少し留飲が下がる。
■ホンダHR-V・JS4 3ドア(GH2)
全長×全幅×全高:3995×1695×1590mm(ルーフレール・スポイラー付きは1700mm)
ホイールベース:2360mm
トレッド:前/後 1465mm/1455mm
車両重量:1190kg(サンルーフ付き1200kg)
最低地上高:0.190m
乗車定員:5名
最小回転半径:5.0m
室内寸法:長×幅×高=1750×1365×1195(サンルーフ付き高は1190)mm
エンジン: D16A 直列4気筒SOHC VTEC 16バルブ
総排気量:1590cc
最高出力:125ps/6700rpm
最大トルク:14.7kg-m/4900rpm
タイヤサイズ:前/後 195/70R15 (前後とも)
ブレーキ:前/後 ベンチレーテッド・ディスク/LTドラム
サスペンション:前/後 ストラット式/ド・ディオン式