日本独自の規格でユニークなモデルが多かった
“軽自動車は芸術品”と表現したのは、2021年にすべての役職から勇退されたスズキの鈴木 修・元会長だ。まさしく小さなサイズに機能を凝縮してできたところは、古くはソニーのトランジスタラジオやホンダ・モンキーなどと同様、素晴らしい技術があってこその賜物だ。
ところで軽自動車というと、最近のもっぱらの売れ筋はスーパーハイト系のワンボックスタイプ。もちろん実用性が高く、何といっても室内が広々としたところは魅力で、1度味わったら手放せなくなるのは理解できる。日本で売れているクルマの10台のうち4台は軽自動車で、そのなかで半数以上がスライドドア車(つまりスーパーハイト系)というから、いかに多くのユーザーに愛用されているかがわかる。
その一方で「今の軽はものすごくよくできているのはわかるが、画一的でツマラナクナイ?」とお思いの方も少なくないのでは? 商品企画は売れてこそのことだから仕方ないが、かつてはもっと奮ったアイデアの軽が決してなくはなかった。
スズキ・ツイン
スズキ・ツイン(2003年)、ダイハツ・ミゼットII(1996年)などはその筆頭。ツインは登場時には「ちょっと肩のチカラが抜けたスタイルでは?」と思えたものの、乗車定員2名のコンパクトなコミューターとして、今にして思えば志の高いクルマだった。
しかもこのクルマはモーターがエンジンをアシストする、軽自動車初のハイブリッドも設定。最小回転半径が国産車最小の3.6mだったりと、当時、どうしてもっともてはやさなかったのか……と後悔の念すら。ガソリン車の最軽量車はパワステ付きで560kgとある。
ダイハツ・ミゼットII
往年の3輪車をルーツとしたミゼットIIも、4輪車ながらユニークなクルマだった。乗車定員は当初は1名(MT車)、追って2名(AT車)も設定。
エンジンをシート下に置き、フロントタイヤを前に出したセミキャブのレイアウトを採用。オープンの荷台をベースに、カーゴタイプは樹脂製アオリ(=カタログの表記)が追加されていた。
スズキ・アルトハッスル
そのほかユニークなクルマといえば、アルト・ハッスル(1991年)があった。フランス車のフルゴネット方式で、当時のアルトのボディの後半を立方形とし、大容量カーゴスペースを設けたもの。6タイプ、商用4タイプが用意され、仕様により4WDも設定された。
オーバーヘッドラック、天井に渡して設置するパイプハンガーなど、使い勝手を向上させるアクセサリー類も豊富。ユーティリティ性の高い軽自動車は現在は幾多の車種があるが、コダワリ派向けに蘇らせてもいいのでは? と思わせられるクルマだ。
三菱ミニカ・トップ
もう1台、ビッグキャビンを売りにしていたモデルが三菱ミニカ・トップ。写真のカタログは1994年のものだが、キャビンのほぼ全体をハイルーフ化し、豊かな室内空間としたもの。
右側:1、左側:2の1:2(ワン・ツー)ドア、横開き+ガラスハッチ付きのバックドアなど、実用を前提としたデザインも特徴だった。セダンだけでなくバンの設定があったのも見逃せない。