小柄な人でも乗りやすいこだわりのパッケージングを採用
また、ドアが半分開く状態での乗降性の良さは、サイドシルの段差を少なくして小柄な人でも無理なく乗り降りできる構成としている。さらに、助手席が大きくスライドするウォークイン機構も採用して、後席へのアクセスも良いものとしていた。
ボディも高効率衝撃吸収を追求したもので、フロントにはストレート・サイドフレームを採用。リヤもサイドシルとリヤフレームを結合してスティフナーを配置することで、後端からつぶれて衝撃を分散・吸収する構造としていた。運転席用エアバッグ(助手席はオプション)と調整式シートベルトは標準装備され、当時のコンパクトカーとしては格段に高い安全性能を確保している。
コンパクトカーながらラゲッジには8.5インチのゴルフバッグを2個積むことができ、大開口テールゲートは可倒式後席、テールゲート連動のリヤシェルフ(目隠し)、傷防止リヤパネル・プロテクターもあって、積載性にも優れていた。下端にはテールゲート・プルハンドルを設けて、ハッチ外側のボディを触らずに閉められるように配慮。こうした欧州車ではお馴染みの装備を備えており、ここも小柄な人でも手が届きやすいから設計としていた。
エントリーモデルのコンパクトカーながら上質さは妥協せず
インテリアは広い視界を優先。それでいながらも全面高熱線吸収UVカットガラスと、操作性に優れたダイヤル式エアコンで快適性を確保。メーターもタコメーターを廃止し、シンプル表記ながらシフトポジション表示を加えることで、初めてのマイカーという方への使い勝手を追求した。オーディオは1DINサイズながら、音声案内機能が付いた操作系最優先のポップアップ式カーナビゲーションも設定。ナビ使用時にもオーディオが使いやすいよう、ナビ画面の運転席側にオーディオ関連のスイッチを備えており、高機能なエントリー・ベーシックモデルとして、高い機能性を誇っていた。
シートやドアライニングにもファブリックが用いられてカジュアルな雰囲気が演出されたほか、ドア下部にはあえてボディカラーを見せることで、ロゴならではのセンスを醸し出した。近年のコンパクトカーもボディ同色をインテリアにあしらっているので、ロゴのセンスはいち早かったといえるかもしれない。
シート自体も乗降性に配慮しながらも立体的な面形状でホールド性を確保したほか、着座位置を変えられるハイト・アジャスターを装備して、小柄な方でも適切なドライビング・ポジションが取れるようにしていた。
グローブボックスはA4サイズの書類(カセットテープなら32本)が収まるサイズで、ボックス内には車検証用のドキュメント・ポケットを装備。ほかに複数の「ドリンクホルダーやティッシュボックスが収まるポケットなど、現在にも通じる収納性を持っていた。
スペックこそ平凡ながらエンジン屋らしい技術を投入
エンジンはホンダが「ハーフスロットル高性能」と呼ぶ1.3LのD13B型SOHCを搭載。これはホンダらしいレスポンスの良い高回転域の伸びやパワフルさこそなかったが、とにかく市街地で不満がないことを目指して開発された。それゆえカタログ数値は最高出力66ps/5000rpm、最大トルク11.3kg-m/2500rpmと平凡にとどまる。しかし豊かな低中速トルクを確保するためセンタープラグの2バルブ式を採用。
吸入混合気の流速を上げて燃焼室内に渦を起こすことで、燃焼を安定させてトルクを向上。最大トルクの90%をわずか1300rpmで発揮させることで、必要十分な力を得ながらできるだけ排ガスを少なくできるように設計されていた。そのほか、鍛造クランクシャフトやバルブタイミングの適正化、従来は鋳鉄製であった排気マニホールドをステンレスのプレス成形としたことで、振動や早期の触媒の活性化で排ガス性能を向上させるなど、地味ながら実力が高いエンジンなのだ。