バリエーション豊富で多くの人に愛され続けるインプレッサ
1992年10月に初代モデルがデビューしたインプレッサは、今年で30周年を迎える。WRC(世界ラリー選手権)を戦うためという一面も持つインプレッサは、トップグレードにEJ20型2.0L DOHCインタークーラー付きターボエンジンを搭載したWRXを設定。レオーネ時代からラリーフィールドで活躍してきたスバルのスポーツフラッグシップとして、初代レガシィRSからバトンタッチされたモデルだ。
つねにクラストップレベルのスペック、抜群のハンドリングと軽快感を誇る軽量なボディを組み合わせ、年次改良と呼ばれる、スバルならではのきめ細かな改良とSTIコンプリートカーをはじめとした、さまざまな仕様が追加されるなど、魅力あふれるモデルとして多くのクルマ好きから支持された。
ランエボとの長期に渡る戦いが1992年に勃発
インプレッサが登場するわずか1カ月前の1992年9月には、戦友として語り継がれる永遠のライバル、三菱ランサーエボリューションが登場。同じWRCという戦場を戦うライバルとして、市販モデルでも互いを意識しながら切磋琢磨し、走りを磨いてきた。排気量や駆動方式は同じでありながら、高回転型で軽量なインプレッサWRXに対し、低回転から湧き上がるトルク特性で堅牢なイメージのランエボはインプレッサオーナーだけでなく、当時のスバルオーナーからもライバルとして注目される存在になった。
もちろんスバリストからしたら、ランエボが持つポテンシャルの高さを認めるからこそ煙たい存在だったワケだが、表立って互いを認めるようになったのがスバル、三菱がともにWRCの第一線から退いたころのこと。そして、ランエボが2016年4月に終焉を迎えたときは、これまでライバル視してきた多くのスバリストも一抹の寂しさを覚えたものだった。
そのインプレッサは、3代目後期型からWRXシリーズを分離する方向へシフト。正式車名はインプレッサだがカタログやWEBサイトなどからインプレッサの文字が消え、先代WRXシリーズ(VA系)からは型式も異なる完全な別車種として扱われることとなった。
「グラベルEX」や「リトナ」などレアな派生モデルも登場
一方インプレッサシリーズは初代モデルから、セダンのほかスポーツワゴン、クーペとWRX以外のモデルも実用車としての一面も持ち、初代には1.5L/1.6L/1.8L/2.0Lと幅広い排気量のエンジンを設定するほか、4WDだけでなくFFもラインアップ。
もちろん実用グレードでありながらWRCで戦うモデルとボディや足まわりといった基本構造を共通とするため、120万円台の1.5L FF廉価グレードでも気持ちの良いハンドリングを実現。多くの人に「あっ、スバルっていいね!」と思わせることとなる。
各モデルラインアップのなかには、現在のXVにも通じるスポーツワゴンをベースとした「グラベルEX(エックス)」などチャレンジングな仕様も販売。当時こそいまひとつの売れ行きながら、DOHCターボにSUVスタイルの組み合わせは現行XVにも設定が欲しくなるようなホットモデルであった。
ほかにもレアなモデルとしては2ドアクーペの「リトナ」が存在したが、1.5L FFと1.6L 4WDという設定は地味な存在だった。しかし、WRC参戦車両がグループAからWRカーへと移行する際、4ドアモデルから、このリトナをベースとした2ドアクーペに変更。
クーペタイプRや22Bといった初代インプレッサ2ドアモデルが注目を集めたが、じつはこのリトナなくしてはWRカーもタイプRも22Bも生まれていないのだ。さらに、90年代後半にブレイクした「レトロ顔」の波に乗るべく、クラシカルなフロントマスクを与えたカサブランカといったモデルも登場した。