2021年に注目された国産車をピックアップ
世のクルマ好きが、このところのヒストリックカー価格の高騰に驚いている間にも時は流れ、ついにヤングタイマー/国産車の流通価格にも唖然とする時代が到来してしまった。 ヤングタイマーとは、初度登録から15~30年ほど経過したクルマのことで、一番旧いモノで1980年代後半に発売された車両といったイメージだ。このころに生産されたクルマといえば、デザイン性の高さや品質のよさをアドバンテージとしていた。いま見ても個性的でカッコよく、しかも実用性が高い点が魅力だといえる。
数年前までは安価な点もヤングタイマー/国産車の特徴だったが、冒頭でも述べたようにビックリするようなプライスで流通するようになったのだ。それが顕著なのが、海外のオークションである。世界的なオークションハウスとして知られるサザビーズが、2021年のモントレー・カー・ウィーク中に開催した「RMサザビーズ モントレー・オークション」において、R33型スカイラインGT-Rが驚く金額で落札されたことが記憶に新しい。
参考までに記しておくと、モントレー・カー・ウィークは、アメリカ合衆国カリフォルニア州モントレーの街を拠点として約10日間にわたって開催される夏の祭典だ。さまざまなクルマが集まるビッグイベントで、ペブルビーチ・コンクール・デレガンスなども行われている。2021年は8月6日から8月15日まで実施された。
1995年式日産スカイラインGT-R(R33)
R33型の日産スカイライン GT-Rは、第2世代GT-Rの2番手として登場した。安定した速さを得るために、先代モデルにあたるR32型GT-Rよりもホイールベースが105mm延長され、重量配分や車体剛性といった部分も改善された。だが、この仕様変更が熱心なGT-Rファンからは不評だった。エンジンは名機RB26DETTを搭載し、ブレンボ製ブレーキキャリパーを全車標準装備していたが、一部のクルマ好きは車体が肥大化されたことに不満だったのだ。
第2世代GT-Rの1番手として1989年に登場したR32型GT-Rは4万4000台近くも生産された大ヒット作となり、1999年にデビューした3番手のR34型GT-Rはふたたびボディが小さくなったことで、熱心なGT-Rファンも認める存在となった。とくにR34型GT-Rは、スカイラインの名を持つ最後のGT-Rとして、もはや神格化されているといっていい(R32型GT-Rもカーマニアの間で神のような存在となっている)。
このR33型GT-Rは1995~1998年まで生産され、ル・マン24時間耐久レースにも参戦したが、R32型GT-R、R34型GT-Rと比較すると総じて不遇だった。 しかし、である。一時期、筆者の弟がR33型GT-Rに乗っていたことがあったので、貸してもらって幹線道路で走らせたことが多々あるが、どのようなシチュエーションでも快速かつ乗りやすく、素晴らしいスポーツカーだと心底思った。
R33型GT-Rが一台あれば、買い物や送迎といった日常の使用から、ロングツーリング、サーキット走行までをこなせるぞ、とも思ったので、たまに中古車価格をチェックしていた。だが、まさか2021年8月14日にアメリカ合衆国カリフォルニア州モントレーで行われたRMサザビーズ モントレー・オークションにて、1995年式の日産スカイライン GT-R(ボディカラー:ミッドナイトパープル)が、23万5200ドルで落札されるとは夢にも思わなかった。1ドル:116円で換算すると、なんと2728万3200円という金額である。
2020年にアメリカに輸入され、各部がオリジナル状態で、走行距離がわずか4万6100kmらしいが、2700万円以上とは驚きだ。これで、R33型GT-Rも、手元に残しておけばよかった、安いうちに買っておけばよかった、と誰もが思うクルマに昇華したと言えるのかもしれない。
1993年式トヨタ・セラ
RMサザビーズは各地のオークションでヤングタイマー/国産車を扱っている。2021年9月3日にアメリカ合衆国インディアナ州オーバンフォールで行われたRMサザビーズ オーバンフォール・オークションでは、1993年式のトヨタ・セラが落札された。
グラッシーキャビンとバタフライドアを特徴としていたセラは、トヨタ・スターレットをベースとして製作された3ドアクーペ。車重が増えたことに対応し、スターレットで主流だった1.3リッター仕様ではなく、よりパワフルな排気量1.5リッターの水冷直列4気筒DOHC16バルブエンジンを積んでいた。
1990年にデビューしたこの珍車(迷車でも正解)を出品したのはケイマン・アイランド・モーターミュージアムで、日本で見慣れた右ハンドル仕様だ。落札金額は1万8150ドルで、1ドル:116円で換算すると210万5400円であった。