ちょっとの段差が使い勝手を左右する……
最近はアウトドアブームもあって、後席を格納した状態で、ラゲッジスペースを拡大することを前提にクルマを使う人が増えている。そんなケースでラゲッジスペースの使い勝手を左右するのが、後席を格納したときのフラット度だ。
もし、後席を格納した部分と本来のラゲッジスペースの間に凸や大きな角度(スロープ状になるということ)があると、荷物の積載性はガクンと落ちる。大きな凸があると、大きく重い荷物をスルスルと奥に押し込みたいのに、途中でせき止められてしまう。どうしても奥に積みたいときは、ヨイショっと持ち上げる必要がある。その際、クルマのフロア側、荷物がキズ付くこともあるから悲しい。
スロープ状になっているとどうなるかと言えば、重い荷物を置くまで移動させる際、スロープの角度の分さらに余計な力が必要になる。また、ブレーキをかけたときなどに荷物が前にズリ落ちる心配もあったりする。水平に保ちたい荷物の積載にも、不向きということにもなるのだ。
ここでは、比較的後席を格納して使いそうなユーティリティカーを中心に、後席格納時の拡大したラゲッジスペースのフラット度を検証したい。
軽自動車はスズキが有利!
まずは軽自動車のなかでもイチバン人気、かつ大容量のスーパーハイト系軽自動車だ。ノミネートされるのはホンダN-BOX、スズキ・スペーシア、日産ルークス(三菱eKスペース)、ダイハツ・タント。使い勝手第一の軽自動車だから、すべて後席を倒したとき完全にフラットになると思いきや、そうでもない。ほぼ完全にフラットになるのはスペーシアのみ。他車は角度がつき、タントはちょっとした段差もあるため、拡大したラゲッジスペースの使い勝手ではスペーシアがリードする。
意外なほど、後席格納時の拡大したラゲッジスペースに差がつくのが、軽自動車のハイト系ワゴンだ。ノミネートするのはホンダN-WGN、日産デイズ(三菱eKワゴン)、ダイハツ・ムーブ、スズキ・ワゴンRの4台。N-WGNの場合、ラゲッジボードを下段にセットするとけっこうな段差ができるものの、使いやすいラゲッジボード上段状態だとほぼフラット。デイズはなんと75mmもの段差あり。ムーブは大きな段差こそないものの、角度がついてしまう。ワゴンRはと言えば、なんとほぼフルフラット。さすが後席格納時のフラット度魔術師のスズキである。
SUVはヤリスクロスとCX-3が◎
人気のコンパクトクロスオーバーSUVはどうか。ノミネートしたのはトヨタ・ヤリスクロス、ダイハツ・ロッキー(トヨタ・ライズ)、スズキ・クロスビー、マツダCX-3だ。このなかで、後席格納時にフロアがもっともフラットになるのは、ヤリスクロスとCX-3だ。ロッキーは床下収納こそ大容量だが(ガソリン車)、角度とちょっとした段差があり、防汚フロアを採用するクロスビーもやや角度がつく。
AWDで悪路に強くアウトドアテイストも満点、かつ立体駐車場にも止めやすく、ある意味万能なスバルXV。だが、パッケージそのものはインプレッサスポーツと同じ。つまり、後席格納部分に70mmの段差ができ、なおかつスロープ状の角度が付くのが惜しまれる。なお、ラゲッジの開口部は、フックでラゲッジボード後端を持ち上げ、固定することで開口部段差がほぼなくなる点は評価したい。
新型になって段差が増えたor減ったモデルも存在
ところで、旧型と新型を比較した際、後席格納時のフラット度が激変したクルマがある。例えばプリウスだ。3代目は後席格納時のフロアに段差、角度がなく、ほぼ完全フラット。ラゲッジスペースの開口部段差もなく、意外なほど使いやすかった。
ところが、現行の4代目になって、いきなり開口部段差がFFで100mm、4WDで45mmになってしまったと同時に、後席格納部分になんとも80mm(FF)もの段差ができてしまったのである(4WDは30mmでほぼフラット)。ラゲッジスペース拡大時の使い勝手では、大きく後退したと言わざるを得ないのである。
逆の例もあって、VWゴルフヴァリアントの場合、先代の7は後席格納時にそれなりの角度が付いていたのだが、新型の8になって角度はほぼ解消。ほぼフラットで使うことができるようになり、拡大したラゲッジスペースの使い勝手が向上している。
というわけで、ダイハツ・タント、日産デイズ(三菱eKワゴン)、スバルXV(インプレッサスポーツ)、プリウスは、後席格納時の拡大フロアのフラット度に関しては、ちょっと残念と言わざるを得ない。
もっとも、後席格納時に角度が付くのは、後席のクッションが厚いから……とも言えたりする(角度が付いてもかけ心地の悪いシートもある)。そのあたり、自動車メーカーはどちらを優先するか、悩みどころのはずである。