部品は揃うが事故になると再起不能になることも
ただ、純正部品については中古車同様に高騰している。2017年から日産とニスモによるヘリテージ事業のスタートにより、純正部品の復刻が始まった。さらに純正部品では再生産されないパーツをアフターパーツメーカーがリプロ品を製造したりと、クルマを動かすことについてはプロペラシャフト以外は概ねなんとかなる。これは同年代他車種に比べて環境はかなり恵まれている。
ただ、メーカー&ショップで再生された純正部品/リプロ品は現役当時と比べると少量生産であり、量産効果が薄く、どうしても販売価格は高くなる。また、いまなお生産が続けられる純正部品も保管料、人件費を含めて、毎年4月、10月の改定で倍々ゲームのように値段が上がっているのが現状だ。作ってももらえるだけありがたいが、オーナーの負担は大きくなっている。
その影響もあり、現在は社外品のほうが純正部品よりもリーズナブルな設定となり、代用できるものは社外品を使用。エンジンブロック、シリンダーヘッド、ゴム製品、各種センサー、駆動系部品など替えがきかない場合のみ純正部品を使うのがいまの流れ。ただ、注意すべきは事故で、骨格を構成する部品、外装パーツなどはほぼ製造廃止のため、大破となれば復活は相当難しいし、仮に復活できても相当な費用は覚悟しなくてはならない。長く乗りたいなら絶対に無茶は禁物だ。
全てを良好な状態にするにはトータル600万円ほどの予算が必要
加えて、中古車市場&純正パーツの高騰にともない、各メーカーのチューニングメニュー&整備費用も値上がり傾向にある。例を挙げるとNISMOのS2エンジンメニューは2014年は約230万円~(税込)であったのに対して、2021年は約511万円~(税込)と8年間で2倍強までアップしている。もちろん、当時とは使用するパーツの交換点数、部位などが増え、製作までに時間を要するなど理由はさまざまあるが、一般ユーザーにはなかなかハードルの高い金額となってしまったのは間違いない。
ちなみに、一般的な費用の目安はエンジンオーバーホールが周辺の補器類まで含めると250万円~。シャーシオーバーホールは150万円~(ダンパー&ショック別)、ウインドウ脱着してのオールペン100万円~。その他、デフやミッション、ブレーキなどを含めてプラス100万円の予備費は見ておくべきだろう。
もちろん、1度に全プランを行う必要はなく、健全な部分を1パート、1パートずつ作っていくルーティーンで進めていくのもあり。自分に合ったGT-Rとの付き合い方は走りながら見つけていくしかない部分もあるが、すべてを良好な状態に戻すためのトータル予算は600万円ほど必要だと頭に入れておいた方がいい。つまり工業製品なので、走り始めた瞬間から劣化が始まる。仮にフルレストアを施しても完成ではなく、新たな付き合いの始まりでしかない。
さらに法定費用も税金は自動車税、重量税ともに重課税対象車。また、車両保険は価格を決める型式別料率クラスはR32/R33が13、R34が14(最高は17)と高い部類となるなど高額だ。とにかく、いまからクルマを買って健康で維持し続けるにはよほどアタリを引かない限り、お金が掛かる可能性は大。もはや第2世代スカイラインGT-Rは一般のユーザーが安易に乗れるクルマではなくなった。添い遂げるには相当覚悟が必要だ。
距離を延ばさず楽しむなら大損せずに長く乗れる可能性大
長く乗り続けるためには「あばたもえくぼ」の精神で高い法定費用、車両保険、多少の不具合や劣化には目をつぶり(完璧を求めない)、ルーティーンで修理しながら乗っていく(ただし、本来のGT-Rの性能はなかなか味わえないが)。もしくは、最初にお金はかかるが思い切って機関をフルリフレッシュして、あとは定期的な整備点検で不具合が出そうな部品を先んじて交換しながら維持していくかの2通りが基本だろう。
ただ、五感を刺激しまくるエンジン、チューニングに対して伸びしろもあり、手を加える楽しさは抜群。走りの実力は最新のマシンに対しても引けを取らないなど、パフォーマンス面はいまだ魅力的であり、モータースポーツ、チューニングシーンで歴史を彩ってきた最強マシンを所有しているという満足度も高い。
しかも、いましばらくは相場が安定しているので、よほどハズレを掴まず、大きな事故しをない限り、長く乗ってもかなりの高値で売却できるなど、かなりコスパがよいなど手に入れるメリットがないわけではない。現在、日常の足として使っているオーナーは少なく、趣味のクルマとして年間走行距離が1000km以下の方も増えている。そのような使い方なら保管方法にもよるが経年劣化は少なく、より長く楽しめるのではないだろうか。
繰り返しとなるが、いまから買って長く乗るのであれば大事なのは良質な個体選び。走行距離ではなく、直近までしっかりメンテナンス履歴が残っており、下まわりに錆、腐食が少なく、手が加えられすぎていないノーマル然としているクルマが理想だ。買えるだけの財力があることが前提となってしまうが、コンディションのいいクルマさえ手に入れられれば、満足できるカーライフが待っているのは保証する。これほど走る喜びに溢れ、クルマを通じた出会いを生む国産車はほかにはないからだ。