ミニバンがブームだった終わり頃に登場したモデル
とても個人的なこととして以前にも書かせていただいたが、筆者はユーミンこと松任谷由実サンの大ファンであり、荒井由実サン時代から現在で39枚のオリジナルアルバムの音源はすべて揃えている。さらにベスト盤的な企画アルバム数枚分もカウントに入れると、愛用のiPod touch 128GBの中には今現在、624曲が入っているようだ。この年末年始を使い、最初の「ひこうき雲」から順に可能なだけ聴いていたのだが、そこで実感したのは、すべてユーミンの作とはいえ、なかには「このアルバムは印象が薄かったな」とか、反対に「今あらためて聴くと味わい深いな」とか、さまざまな感想をもつということ。
音楽評論家ではないからアルバムごとのできの善し悪しを言うつもりはないが、ただ1ファンとして、ものすごく気に入ったアルバムとそうではなかったアルバムとがあったというのは、厳然たる事実だ。
それはクルマにもあてはまる。エンジニアの尽力、熱意から生まれたクルマや営業的な理由から生まれたクルマなど、市販車の登場の背景はさまざま。とはいえ発売された市販車である以上、クルマそのもののできがよくないクルマはないといっていい。
けれど問題はそこから先で、売れたかどうか、人気が出たかどうかは、クルマを出す前には神のみぞ知る……の部分もある。そのため結果を見ると、(平たくいうと)人気がイマイチ盛り上がらずに終わったクルマというのがあった。そうした意志半ばであったであろうクルマは、ミニバンがブームだった終わりころに登場したモデルに多かった。
パッケージングは良かったものの……
甚だ心苦しくも挙げさせていただくと、トヨタではオーパ(2000年)、ナディア(1998年)、マークX ZiO(2007年)などがそう。オーパは全長4250mm×全幅1695mm×全高1525mmの手ごろなボディサイズに2700mmのロングホイールベースを組み合わせた、新種の乗用車といった趣のクルマ。
ミニバンでもワゴンでもなく、人が快適に移動でき、シートアレンジによる実用性の高さも特徴。シャープでシンプルなスタイルも独創的だったが、いかにもスマート過ぎたところがウィークポイントだったというべきか。
ナディアも同様で、のちにシトロエン・ピカソが登場し、筆者は「ナディアのコピーじゃないか!」と思ったほど。
要は3列シートのミニバンのイプサムのショートボディ&2列シート版で、床がフラットで広い後席など、少し時世がズレるが、コレをジャパンタクシーにすればよかったのに! といったできだった。運転席の660mmのヒップポイントは初代イプサムと共通。このクルマも外連味のないピープルムーバーだった。
もう1台、マークX ZiO(ジオ)もまたユニークなピープルムーバーだった。
乗車定員は6名または7名で、ひと味違う趣のミニバンといった風だったが、「大人のライフステージに!」と奨められた大人たちはやや戸惑いを持って受け止めていたというべきか。パッケージングが工夫されいいクルマだったが、そのことが広く理解されなかったのが残念だった。