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「面倒くささ」が楽しいのだ! AT限定にはわからないMT乗りの儀式3つ

マニュアル車(シフトノブ)

儀式としか思えないMT車独特の運転方法

 新規で運転免許を取得する人の70%近くがAT限定で、もはやMTの運転は『特技』と呼べる気さえする昨今。それにともないAT車(2ペダル車)とは縁がないMT車ならではの運転テクニックや、クラッチやシフトの操作も見かける機会が減ってきた。そこで、MT乗りは当たり前のように実践している、独特の『儀式』ともいえる代表的な操作を紹介したい。

MT車の儀式その1:「アクセルを煽る」

 まずはシフトダウンするときアクセルを煽り、一旦エンジンの回転数を上げてからギヤを落とす操作から紹介しよう。4速から3速にシフトチェンジすると仮定しよう。当然ながら4速と3速ではギヤ比が異なるため、クラッチを切って3速に入れてすぐに繋ぐと、シフトショックとともに強烈なエンジンブレーキがかかってしまう。当然運転手や同乗者にとって不快であり、ミッションなどの駆動系にも大きな負担となるのは、あらためて説明しなくても理解できるはず。

 それを防ぐためにギヤ落としたらアクセルを軽く煽り、エンジンの回転を上げてからクラッチを繋ぐというワケだ。シフトダウンによる変速ショックをなくすことは、安全にも快適さにも、愛車を労わることに貢献できるので、これからMT車に乗る人はぜひともマスターしてほしい。なお上記の操作を発展させたのが右足のつま先でブレーキを踏みつつ踵でアクセルを煽る、スポーツ走行で必須と言われるテクニックが『ヒール&トゥ』である。

MT車の儀式その2:「クラッチを繋ぐ」

 続いてはAT車には存在しないクラッチペダルについて。よく「クラッチを切る」または「クラッチを繋ぐ」という言葉を聞くが、これらは果たしてどんな意味なのだろうか。エンジンの動力はクラッチを介して最終的にタイヤまで伝えられ、その動力を途中でカットしている状態が「クラッチを切る」行為で、逆に伝達させるための操作もしくは伝達している状態を「クラッチを繋ぐ」と呼んでいる。

 操作方法としてはクラッチペダルを踏み込んだ状態が「切る」で、クラッチペダルから足を離している状態が「繋ぐ」と覚えておこう。

 ただし、MT車を発進させるにはクラッチを切ったあとにシフトノブを1速に入れて、クラッチペダルから足を離すだけでは発進はできない。ここがMT車の運転の難しいところで、クラッチペダルを踏み込んでクラッチを切り、ギヤを1速に入れてクラッチペダルを手前側に戻しながらクラッチが繋がるポイントでエンジンの動力と駆動系を同期させる「半クラ」の操作が必要だ。

 この半クラが免許取り立ての初心者にとってはハードルが高く、適正なエンジン回転数を保持できていないとエンジンストールしたり急発進させてしまう難しさがある。

MT車の儀式その3:「クラッチを切ってエンジン始動」

 前述した通りクラッチペダルを踏んでいなければエンジンの動力が伝達されている状態なので、仮にギヤをどこかのポジションに入ったままエンジンをかけると、クルマが「ドンッ!」と動いてしまい極めて危険だ(※エンジンストールするのですぐに止まるがクルマの大きさによっては数10cm程度動いてしまう)。それによる事故を防ぐためクラッチペダルを踏み、動力が伝わらないようにしてから始動するのがセオリー。

 もっとも最近のMT車はクラッチペダルにスイッチがあり、ペダルを奥まで踏み込まないとエンジンがかからない仕組みになっている。「それならギヤをニュートラルで駐車すれば?」と思った人も多いだろうが、確かにサイドブレーキを引いたうえで、ギヤはニュートラルのままでも基本的には問題ない。

 ただし停めた場所がそれなりに傾斜のついた場所で、サイドブレーキの効きが甘かったりすると、クルマの重さに負けて動き出してしまうケースがある。それを防ぐには、基本的にローギヤを入れておき、エンジンの抵抗を利用してクルマを動かないようにするのが効果的なのだ(下り坂などではバックギヤ)。

まとめ:MT車乗りは信号待ちでも気が抜けない……

 最後は信号待ちなどの短い停車時に、ギヤを入れて待つかニュートラルで待つか問題がある。すぐスタートしたいがため1速に入れてクラッチを踏んだまま待つ人も多いが、左足の疲労やクラッチのレリーズベアリングなどの負担を考慮すると、ニュートラルでクラッチペダルから足を離し、ブレーキを踏んで待つのがベターだと思われる。

 0.1秒でも早く動きたいレースのスタンディングスタートならいざ知らず、街乗りならドライバーとクルマを労わるほうがよほど大切だ。

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