アウトドアブームの陰で広がる車中泊のマナー違反を考える
キャンプブームによる愛好者の増加は喜ばしいことである反面、数多くの弊害も生み始めている。キャンプ場で大騒ぎをする、所定の場所以外にゴミを捨てる、キャンプ場の施設を破壊する……などなど、キャンプを楽しむ以前に人としてのモラル違反や犯罪行為はあってはならないことだ。
しかし、マナーに反しているのか否か、というグレーな部分として問題視されるのが「高速道路のPA・SAにおける車中泊」。ここではその問題に触れ、再考してみたい。
グルメやサービスの充実でPA&SAがより快適に
高速道路のPA(パーキングエリア)やSA(サービスエリア)は、利用客の休憩を目的とした施設だ。PAは駐車場やトイレなどの設備が置かれ、SAは駐車場やトイレのほか、レストランや給油所が設けられていることが多く、PAは15km、SAは50km間隔を目安に配置されている。
トイレや食事、給油などの施設が充実したSAは、遠方へのキャンプ場へと向かうキャンパーにとってロングドライブで疲れた体を癒し、食事や地元の食材などを調達できる重要な拠点となる。
SAで食するソフトクリームやB級グルメを楽しみにしている人も多いのではないだろうか? 最近ではSAグルメと呼ばれ、その充実したメニューが大きな話題となり、SAグルメを目的としたドライブを楽しむ人も増えているという。
安全運転のため睡眠は不可欠だが度を越した行為は迷惑千万
しかし、アウトドアブームのなかで不届き者も現れている。不特定多数の人が利用するPAやSAはキャンパーだけのものではない。キャンプで出たゴミを捨てるのはNG行為であり、トイレをきれいに使うのは人として最低限のマナーだが、大きな問題になっているのが「車中泊」と「仮眠」の境界線だ。
キャンプブームにより人気急上昇中の車中泊だが、PAやSAで宿泊するのは違反行為になるのだろうか? 基本的に高速道路を運営するNEXCOでは車中泊を禁止事項に入れてはいないが、先にも述べたように「休憩」を取るための施設であり、事故を防止するためにも睡魔に襲われたときには積極的に仮眠を取ることも必要となる。そもそも『仮眠』とは「通常の睡眠が取れないときに少しの間にする仮寝、一時的に短時間眠ること」とされ、『睡眠』は「周期的に繰り返す意識を喪失する生理的な状態」となる。
簡単にいえば仮眠と睡眠の差は「時間」であるものの、人によって時間の差があるために境界線を引くのは難しい。そうなると、管理側でも仮眠と睡眠を区別することができず、利用する人のモラルに任せるしかないというのが現状なのだ。
最近ではルーフトップテントを広げる強者まで現れる……
一般的な乗用車の場合、シートを倒して眠っていれば仮眠、車中泊ができるクルマやキャンピングカーでは睡眠に見えてしまう。だが、どうせ仮眠をするならより良い条件で寝たいと思いポップアップテントを使ってしまう強者もいる。PAやSAは休憩施設であり宿泊施設ではないという概念からすれば、これもマナー違反になることは間違いない。
基本的にPA、SAでの宿泊は禁止されていないだけで認められている行為ではないことを理解し、睡眠を取る場合にはほかの利用者の迷惑にならないように心掛け、可能な限り車中泊を行わないように配慮してほしい。そしてキャンパーとしてはもちろんのこと、人としてのマナーを守って利用しよう。