静粛性はワゴンに「軍配」快適性も兼ね備えていた
室内は、ランエボ9と共通のチタン調センターパネルやカーボン調インパネ加飾などを装着したオフブラック内装を基本に、アルカンターラ×本革表皮のレカロ製フロントセミバケットシートを全車に標準装備。
リヤシートはランサーワゴンと同じく6:4分割式ながら、表皮は専用のアルカンターラ×プロテインレザー。さらに、リヤホイールハウスが大型化されたことにともない、傾斜配分がやや前傾化されたものになっている。また、荷室周辺には遮音・吸音・制振材が追加され、セダンのランエボ以上に静粛性が高められた。
街乗りでも不満のないマルチなGT性能を発揮
エンジンスペックは「GT」がランエボ9の「GSR」、「GT-A」はランエボ7の「GT-A」と共通で、前者は280ps/6500rpmと40.0kg-m/3000rpm、後者は272ps/6500rpmと35.0kg-m/3000rpmを発生。ピークパワーだけではなく低回転域のトルクも力強く、サーキットやワインディングだけではなく街乗りでも扱いやすい特性を備えている。
筆者がかつて所属していた自動車雑誌編集部には、このランエボワゴン「GT-A」が長期レポート用車両としてガレージに収まっていた。走りには第三世代までのランエボらしい荒々しさがあったものの、都内の移動や箱根のワインディングでの撮影&試乗会取材、果てはイベントでの機材運搬まで、マルチに活躍できるGT性能の持ち主だった。
わずか2年の短命で終わるも記憶に鮮明に残る1台だった
その後2006年8月には、第三世代ランエボの集大成と言える「ランサーエボリューション9 MR」と同時に「ランサーエボリューションワゴンMR」が登場する。
ランエボ9 MRは「GSR」と「RS」の2グレード構成に戻される一方、ランエボワゴンMRは従来通り「GT」と「GT-A」の2グレード体制が維持された。ランエボ9 MRおよびワゴン「GT」のエンジンは、ターボチャージャーのタービンホイール材質がインコネル(ニッケルクロム系合金)からチタンアルミ合金に変更。シャーシもアイバッハ製スプリングの初採用とともに10mmローダウンし、さらにスーパーAYCの左右後輪駆動力制御量を約10%増大させるなど、細部に改良が施された。
しかしながら、翌2007年にデビューした第四世代のランエボ10には、そのベース車であるギャランフォルティス自体にワゴンボディが設定されなかったため、ランエボワゴンはわずか2年の短命モデルに。ラリーマシンさながらの走りに日常域での使い勝手の良さを兼ね備えたこのランエボワゴンは、セダンのランエボ以上に万能かつ希少価値の高い一台と言えるだろう。