いま振り返ると名車揃い「ラリーアート」謹製モデルたち
三菱のモータースポーツを語るうえで忘れられないブランドがラリーアートだ。WRCで一時代を築いた1990年代、街を走るランサーエボリューションに張られたステッカーを覚えている方も多いだろう。また、パジェロを駆り日本でパリ~ダ・カールラリーの知名度を上げたことでも知られる三菱の名門ワークスだ。
しかしラリーアートは活動を休止してしまう。それから11年後の2021年5月、三菱の前年度決算報告の際に突如ラリーアートブランドの復活をアナウンス。同12月にはピックアップトラックの「トライトン」と東南アジアなどで人気のSUVモデル「パジェロスポーツ」をベースにした、ラリーアートの特別仕様車の販売を発表し、11年ぶりに復活の狼煙を上げた。
これはファンにとって、三菱が元気になったことを印象付けるニュースである。そこでラリーアートの名を冠した歴代コンプリートカーを振り返りたい。
コルト・ラリーアートバージョンR
FFのランエボと言える小粒でピリリと辛いコンパクトハッチ
まずはコンパクトカーのコルト・ラリーアートバージョンRだ。その前に、2004年には1.5Lターボを搭載した「コルト・ラリーアート」を発売。新開発の4G15型インタークーラーターボエンジンは147ps/6000rpm、18.3Kg-m/2500rpmを発揮して、トランスミッションはインベックスⅢCVTを組み合わせる。ストラットタワーバーや専用チューニングサスペンションなどの装着によって、楽しい走りを実現した。特徴はFFだけでなく4WDも設定されていたことで、積雪地帯のユーザーにも喜ばれた。
そしてラリーアートの成功を受けて、2006年5月にCVTのほか5速MTも設定したFFの「コルト・ラリーアートバージョンR」が誕生。
エンジンは5速MT用にチューニングされており、154ps/6000rpm、21.4kg-m/3500rpmとクラストップレベルの性能を確保。組み合わされるのはゲトラグ製のトランスミッションとザックス製の強化クラッチで、ボディも各部に1.5倍のスポット溶接増し打ちを施したほか、Dピラーまわりの強化もあって、ボディ剛性を30%向上させた。
タイヤは205/45R16サイズとしたほか、アクセルなどのペダル類をランサー・エボリューションⅨと同等のアルミプレート製を用いるなど、一段とスポーツ性を高めている。安全装備のASC(アクティブ・スタビリティ・コントロール)をいち早く導入したこともあり、ガンガン走れるホットハッチとなった。
2007年にはレカロシートを装備した特別仕様車「コルト・ラーリーアートバージョンRレカロエディション」の販売や、エンジン出力向上(163ps/6000rpm)の改良が行なわれたほか、2008年にはボディが補強された「コルト・ラリーアートバージョンRスペシャルエディション」も限定発売された。
このスペシャルエディションの特徴は、従来のスポット溶接ではなく欧州車のような接合面積の広い連続シーム溶接によって、開口部周囲の剛性を向上。ハンドリングをさらに切れ味鋭くしたほか、レカロシートやスポーツマフラー、軽量16インチホイールの採用によってスポーツ性に磨きをかけている。この限定車は2010年にも発売されており、モデル末期のコルト起爆剤として人気を集めた。