北米ではまだ新車ラインアップに並ぶ
国内では、惜しまれつつ生産が終了したVAB型WRX STI。しかし、米国スバルのオフィシャルサイトには、まだWRX STIがラインアップとして掲載されている。まだまだ新車で購入したかったというユーザーを尻目に、なぜまだ購入することができるのだろうか?
北米でのSTI知名度向上も理由のひとつ
いまだ北米でのSTIへのイメージがブランドではなく、モデル名という認識のユーザーが多く、その知名度向上のためという説もあるが、国内仕様との搭載エンジンの違いという説もある。国内仕様のWRX STIはEJ20型2.0L水平対向4気筒ターボを搭載していたが、米国仕様のWRX STIにはEJ25型2.5L水平対向4気筒ターボを搭載している。
つまりは、輸出仕様車専用エンジンとして生産されているパワーユニットが搭載されており、国内で終焉を迎えたEJ20が搭載されているわけではないのだ。ちなみに2019年に発表された北米専売のSTIコンプリートカーS209も、当然このEJ25エンジンをベースにチューニングされている。形式も国内がVAB型であるのに対し、エンジンの違いからこの2.5Lエンジンを搭載する米国仕様車の形式はVAF型となる。
広大な大陸を走るには排気量アップの恩恵は大きい
なぜ、輸出仕様は2.5Lエンジンが搭載されているのかについては諸説ある。やはり広大な大陸で使用するには小排気量の高回転型よりも、排気量を大きくしてトルクで走らせるような乗り方がメインとなることが一例として挙げられる。実際、国内仕様には装備されることのなかった「定速クルーズコントロール」は、米国仕様には装備されている点も、グランドツーリング性能を重視しているポイントと言えるだろう。
また、国内仕様ではVAB型WRX STIの生産が終了するわずか2年前にようやくサンルーフの設定を展開したが、じつは以前から米国仕様はSTIであってもサンルーフ装着車をチョイスすることが可能であった。このあたりも仕向け地のニーズによって、細かく装備などを変えていることが伺える部分だ。
国内にも北米と同じEJ25ターボ搭載車は存在した
じつは輸出仕様のWRX STIが2.5Lターボとなったのは、VA型からではなく、その2世代前となるGD型からである。初代となるGC型では2.5LNAエンジンを搭載した2.5RSというモデルが存在したが、GD型からはEJ25ターボを搭載したWRX STIが登場した。このときからVA型となるまで、AVCS(可変バルブタイミング機構)が吸気のみから吸排気のデュアルAVCSになったり、最高出力などスペックを向上したりと、進化を遂げている。しかし、一貫して排気系には不等長エキゾーストを採用し、独特のドコドコという排気音を奏でていた。
ここまで紹介したEJ25搭載のWRX STIだが、じつは国内仕様車でも、3代目インプレッサWRX STIに設定されていた2ペダルのA-LineというモデルがEJ25を搭載していた。エキゾーストも同じ不等長となっていた。A-Lineは2ペダルでイージーにWRX STIのポテンシャルを楽しめるだけでなく、グランドツアラー的要素も与えられていた。まさに米国仕様と同じようなコンセプトであったことも、2.5Lエンジン搭載に至ったと考えられる。
現在でも販売が継続される米国仕様のWRX STIだが、こちらもそろそろ終焉を迎える様子だ。国内のWRX S4にあたる米国WRXも新型が発表されており、新型へスイッチされる日もそう遠くないだろう。