「除電スタビライジング」機能をRAV4 PHVでも試してみた
この、いわば驚きの試乗を終えたあとに頂いたのが、除電シート機能をどんなクルマでも試せる「簡易除電マット(仮称)」だった。手作り感満載ながら、ほかのクルマで試せるのはありがたい。まずはトヨタ車でと、「RAV4 PHV」を数日間にわたり、これを装着したり外したりしながら、多くの走行環境で違いをみてみた。
RAV4 PHVで箱根周辺まで出かけた撮影時は、あえて帯電しやすいアクリル100%のセーターを着ていった。すると、試乗会での「除電スタビライジングプラスシート」採用のカローラほどには、あからさまに差をもたらすほどではなかったものの、何度試しても違いが生じることは間違いなかった。
代わりによく知れたのは、帯電量に応じて、違いが生じる現象に差があること。高速道路などで除電マットを敷かずに30分ほど走り続けて、それからマットを敷くと明らかにシャキッとした直安感が得られるようになる。それだけボディへの帯電量が増しているということなのだろう。一方で、ステアフィールだけでいえば短時間で除電マットを敷く、敷かないを繰り返しても、センター域の座り感には違いが得られた。
車重が2トンに近いRAV4 PHVは、プラットフォームもほかのRAV4とは異なり1クラス上の「ハイランダー」と共用となっている。元々どっしりとした安定感は備えているのだが、センター域のわずかな曖昧な領域に締まり感が得られるようになる。
また、RAV4 PHVでは、ステアリングセンター域から舵を切りはじめた際に、舵力が一瞬少し抜けるような変化域を伴うなのが気になる点だったったが、ここがほぼ解消されたように感じさせたのは大きい。また高速域での乗り心地も揺れが減少するように感じられる。空力によるダンピングが効いたとでもいうべきか、落ち着きが増す印象だった。
高速道路で渋滞が近づいてきたような際のブレーキコントロール感も、除電マットを敷く敷かないで差を感じることから、効果ありと思える。試乗会でカローラに乗ったときほど明確ではないものの、アクセルオフでの減速制御もなめらかでブレーキに移行しやすい。
一番わかりやすかったのはワインディングをゆったりと流していくような状況で、微妙な領域でのアクセルコントロールのスムースさ、緩いブレーキから0.5Gくらいのブレーキ(ちょっと強めくらい)までのスムースなコントロール性なども高まるように感じた。
静電気による帯電の影響ということからしてか、天候、なにより湿度によって効果の有無への影響も大きく、少なくともRAV4 PHVで「簡易除電マット」で試した限りでは、雨天の際はその差はわかりにくいようにも感じた。一方で、乾燥注意報が出ているような日は、加減速のコントロール感・安定性、乗り心地へのすべての効果を得やすいだけでなく、車両から降りた際の車体やドアハンドルでパチッとくる、あの不快な感覚や痛い思いをしないで済むこともありがたかった。
トヨタ車の「走り」の質をさらにステップアップさせる
じつは、高速安定性や操舵フイールで定評ある、ドイツプレミムブランドの2車でも試してみたが、さらにステアリングのセンターフィールに落ち着きと正確さが得られたことには、驚きを隠せなかった。ほかでも、国産他社の操安開発担当の方に、低速域のみだが最新モデルで試してもらったところ、「ステアリングホイール自体がしっとりした感覚をもたらすようになる」との感想を頂いている。
一方で、この「簡易除電マット」でさえこれほどの効果を感じさせたのに、車両に標準採用とするために5年を要したことは、自動車メーカーの採用基準においてはクリアしなければならない課題が多くあったことを強く思わせた。
いずれにしても、車体に帯びる静電気と乗員の帯電がもたらす影響は大きく、除電、及びそのコントロールが、最近の電気・電動制御がマストの車両において、空力性能とともに、さまざま動的な質の向上に効果をもたらすということは知れた。だとすれば、トヨタ車がこれを拡大採用することで、またステップアップすることになるのかもしれない。