カスタマイズの趣向が変化するなかカンガルーバーが復活
近年のアウトドアブームを受けてクルマの趣味趣向も変化し、SUVやクロカン4WDなどの、オフロードイメージの強いジャンルが人気になっているのは読者のみなさんもご存じの通り。そんななか、無骨でカッコいい外装ドレスアップのパーツセレクトのひとつとして、クローズアップされているのがカンガルーバー(グリルバーやブルバーとも呼ばれる)だ。
この金属(スチールやステンレス)を素材とした頑強なグリル&バンパーガードは、パイプや角形の無骨で頑強な構造でクルマのフェイスまわりを守るパーツだ。
野生動物との衝突による被害軽減が本来の目的
カンガルーバーはその名の通り、もともとは大自然の中を走る4WD車が、走行中に野生生物(オーストラリアの場合ならカンガルーだが、日本では鹿との衝突が多発している)に出くわしてヒットした際、クルマの損傷、さらには乗員の被害を最小限に抑えることを役目としていた。
これはオーストラリアの4WDシーンではたびたび見られた実用的なカスタム手法で、日本で’80〜’90年代に大人気となったヨンクブームでは、多くのユーザーが取り入れたオージー(オーストラリアを意味する)スタイルのひとつの典型でもあった。それだけに当時のカンガルーバーは質実剛健でかなり頑丈な作り、重量も重いヘビーデューティ指向のパーツだった。
クロカンヨンクブームのなかドレスアップパーツとして大ヒット
しかし日本に上陸してきたカンガルーバーは少し用途が異なっていた。もちろん日本で野生動物に衝突する事故はゼロではなく、万一のために装着していたユーザーもいたが、多くの場合がドレスアップアイテムとして利用されていた。なかでも着目されたのが「ランプステー」としての機能だった。
当時は空前のRVブームのなか、ヘッドライトのほかに補助灯として大きなフォグランプを取り付けるカスタムが人気で、そのランプハウスを固定するためにグリルバーがこぞって取り付けられていた。メーカー純正でグリルバー形状のランプステーを装備するモデルもあり、4WD車ではかなり一般的な装備でオールドファンには懐かしいはず。
実際に筆者も当時の愛車であるジムニー(JA71型)にグリルバーを取り付けて、IPFのフォグランプを取り付けるという、当時としては大定番のドレスアップを施して全国各地の林道を旅していたことも記憶に新しい。また、さらにヘビーな林道走行や雪中行軍を楽しむユーザーのなかにはウインチを装備するクルマも多く、その場合にもウインチベッドを備えたグリルバーを装備する、かなり本格的なオフ仕様も多く見られた。
クルマや人との衝突で危険性が問われ自主規制の流れに
そしてヨンクブームの終焉がやって来て間もなくすると、クルマに対する安全意識が急速に高まっていく。そんななかでカンガルーバーなどのグリルバーが「危ない」とやり玉に挙げられるようになる。理由は万が一、歩行者にぶつかった際に人に大きなダメージを与えてしまうことが懸念されたからだ。そのため歩行者保護の観点からカンガルーバーを取り付けるのをためらう風潮が出てきたのだった。製造メーカーも積極的にカンガルーバーを展開しなくなったのもそのためと言える。
さらに、ブーム後の4WD車はヘビーなクロカン仕様の方向性から、より都会的なSUV指向のクルマへと変貌したのも一因となり、近年では一部のマニア以外では取り付ける例が見られなくなっていた。
金属製のほか樹脂製も登場、シャコアゲ人気のなか再ブレイク
そんななか近年のアウトドアブーム&SUV人気で自然の中にクルマで分け入るというニーズが再燃している。そのため、よりヘビーな仕様のカスタマイズを求めるユーザーが増えてきたのがカンガルーバー復権の要因となっている。
クルマへの安全意識(歩行者への衝突時など)が強くなったことから自主規制した歴史はあるものの、グリルガードなどは国内の制度では指定部品にあたるため、保安基準に適合していれば取り付けても車検は問題なくパスできる(リベットや溶接で取り付けた場合は除く)。つまりドレスアップ的な要素として楽しむ分には問題はないとも言える。
また、最近ではスチールやステンレスなどの素材からABS樹脂などに変わり、より安全でありながらも補助ランプのステーとして、またはドレスアップパーツとして安全性も担保したアイテムが多くリリースされている。
自分だけの愛車を作るのに無骨でワイルドなデザインを持つカンガルーバーを用いるのは効果的であることは間違いなく、クロカンヨンクや流行りのSUVにルーフトップテントやキャンプ道具を載せた、いま人気のオーバーランドスタイルにも欠かせないアイテムでもある。ぜひ、愛車のカスタムに検討してみてはいかがだろうか。