3度目の正直に期待感MAX
セリカGT-FOURやカローラWRCで、世界ラリー選手権(WRC)において3度のマニュファクチャラーチャンピオンに輝いたものの、1999年を限りにWRC参戦を休止していたトヨタ。2017年、18年ぶりに活動を再開したこともあって、国内でもふたたびラリー熱が高まってきました。
そして2020年にはWRC日本ラウンド、Rally Japan(ラリー・ジャパン)が10年ぶりに開催されることが決まっていました。しかし残念なことに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によってキャンセルされ、翌2021年も同じ理由からキャンセルとなってしまいました。
それでも多くのファンが開催を待ち望むなか、関係者の弛まぬ努力が功を奏し、今年の11月10日~13日に2022年WRCのシーズン最終戦として開催されることが決定し、東京オートサロン2022の会場で発表となりました。3度目の正直に期待が高まっています。この間、2021年にヤリスWRCが復帰後2度目のチームタイトルを獲得、3度目のタイトル獲得にも期待感MAXです。
驚異のエアロで武装した弾丸驚速のサブコンパクト
WRCに復帰して以来、トヨタの主戦マシンとなっているのがヤリスWRCです。名前からもわかるようにトヨタの新世代コンパクトハッチ、ヤリスをベースとしたWRカー(World Rally Car)です。そもそもWRカーは、グループA規定で戦われていたWRCが、開発費の高騰などによって複数の参戦メーカーが撤退したことを受け1997年に登場しています。
その後、2011年と2017年、2度の規定変更により現在の車両規定となり、22年からはまた新たな規定へと変更されます。当然ですが、2017年にデビューしたヤリスWRCは、2017年に発効した車両規定に則って設計開発されています。
ヤリスWRCの最大の特徴は、そのエクステリアというかボディデザイン。確かにベースと言われるヤリスの基本シルエットを持っているのですが、装着されたエアロパーツが半端なくすごいのです。とくにリヤビューは、ステー部分と翼本体とをカーボンファイバーで一体成型したウイングを二段重ねに装着。
サイズ感とルックスだけでも初めて見るものを驚かせます。加えて、ボディ下面を流れる空気を効率的に引き出してダウンフォースを得るディフューザーも、下手なフォーミュラなら無言で逃げだすほどの存在感を放っています。
さらにリヤの左右に装着されたボックス形状のオーバーフェンダーは、その後面が全面エアアウトレットとして10枚以上のルーバーが設けられています。そのルーバーボックスがディフューザーを挟むようにそびえ立っている様は、もう圧巻です。
一方、フロントビューは大きなカナードが目を惹きますが、それでもヤリスのイメージは伝わってきます。デビュー当初カナードは1枚でしたが、それでは明らかにリヤのダウンフォースが大きかったようで、シーズン中にはアンダーステアに苦しめられてしまい、2シーズン目からはカナードが1枚追加され、現在に至っています。
またノーズ中央にある楕円のトヨタマークの周囲をエンジンへのインテークとして使用するなど、可愛らしさも感じられるルックスとなっています。
搭載されているエンジンはトヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパ(TOYOTA GAZOO Racing Europe GmbH)がまだTMG(Toyota Motorsport GmbH=トヨタ・モータースポーツ有限会社)を名乗っていたころに開発した、GRE(グローバル・レース・エンジン=WRCと2017年までの世界ツーリングカー選手権で使用されていた競技専用エンジン)規格に則ったもの。1600 ccの直列4気筒直噴ターボエンジンです。
最高出力は公称380ps以上とされています。車重は1190kgなので、グループA時代の最終兵器、セリカGT-FOUR(ST205)の300ps/1200kgと比べても、その圧倒的なパフォーマンスは、容易に想像でき
ます。