見た目とは裏腹に広いラゲッジスペースを持つクルマ
バッグなどの容量は大は小を兼ねても、小が大を兼ねることはまずない。見た目と変わらない収納力と言えるだろう。しかし、クルマではちょっと事情が異なる。5ナンバーサイズのコンパクトなクルマでも、驚くほどの大容量、荷物をたっぷり積めるラゲッジスペースを備えたクルマがあるのだ。ここでは国産車のなかで、小が大を兼ねるようなクルマたちを紹介したい。
スズキ・ソリオ
その筆頭は、間違いなくスズキ・ソリオだろう。5ナンバーサイズのクルマの車幅は規格ギリギリの1695mmとしているのが通例だが、ソリオの場合はよりナローな1645mmと小ぶりだ。狭い道の走行や駐車性でも威力を発揮し、運転のしやすさや使いやすさも良く、さらに両側スライドドアを備え後席乗降性のよさを持つプチバンである(走りもスムースで静かだ)。
そのラゲッジスペースは165mmのスライドを持つ後席を最前端位置にセットすると、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で後席膝周り空間に200mmもある(最大360mm!!)。それほどの足が組めるスペースを確保した上で、奥行き715mm、幅1020mm、最小天井高980mmを誇る。
具体的には、定員5名分の機内持ち込みサイズのキャリーケースが無理なく収まるのである。まさに5ナンバーサイズのプチバンにして、大型セダンのトランクルームをしのぐほどの大容量ラゲッジスルームを備えている。
しかも、フロア開口部地上高はワゴンよりほんの少し高い665mmと、SUVの700mm前後よりずっと低く、重い荷物の出し入れも楽々だ。さらに2WD車ならラゲッジルームの床下に大容量サブトランクまであり、機内持ち込みサイズのキャリーケース1個がすっぽり入るのだから、驚くしかない!!
ちなみに、後席を倒したときのフラット度でもライバルを圧倒するのだから、拡大したラゲッジルームの使いやすさもまた抜群なのである。
トヨタ・ライズ/ダイハツ・ロッキー
両側スライドドアを備えたプチバンではなく、コンパクトなSUVが好み、というならトヨタ・ライズ&ダイハツ・ロッキーの兄弟車だ。従来からあるガソリン車の2WDモデルであれば、それはもう、アウトドアなどでも大活躍してくれるラゲッジスペースが用意されている。
具体的に説明すると、開口部に段差のない、重い荷物の出し入れも容易なラゲッジフロアは奥行き755mm、幅1000mm、高さ865mmとたっぷりで、容量は369L。
しかもそこだけ見ると極端に大容量ではないものの、なんと床下に80Lのサブトランクを備え、合計449Lもの大容量ラゲッジスペースを誇っているのだ。
ただし、つい最近追加設定されたe-SMARTハイブリッドモデルは、ラゲッジルームの床下に補器バッテリーが積まれ、発泡スチロールの仕切りボックスが付いている。ガソリン車の補器バッテリーはエンジンルームにあるが、そこがハイブリッドシステムで満杯になり、ラゲッジスペース床下に移動させられたのだ。そのため80L~からいきなり17L~に減少している(1Lターボの4WDは38L~/デッキボードの位置による)。
よって、コンパクトなクルマでも大容量のラゲッジスペースが必須であれば、ガソリン車の2WDを選ぶとよい。このあたりは、アウトドアでの使用前提となると、e-SMARTハイブリッドモデルのみに用意されるAC100V/1500Wコンセントを取るか、ラゲッジスペースを取るかで悩めるところではある。
ホンダ・フリード+
5ナンバーサイズで荷物をたっぷり積めて、しかも車中泊まで可能にしてくれるコンパクトカーと言えば、まずはホンダ・フリード+が挙げられる。
3列目シートのコンパクトミニバンのフリードから3列目席を取り払った、いわば大容量トールワゴンである。ラゲッジスペースは奥行き1035mm(フロアボード下位置)、幅1270mm!!(フロアボード上位置)、天井高最大1360mm!!(フロアボード下位置)。
上位置でも975mmと、ハンパじゃない大容量を誇る。アウトドア、キャンプ用品だって余裕で積めるというわけだ。しかもフロアボードを上段にセットし2列目席を格納すれば、フロアボード下に収納を確保しつつ、その上にお座敷というかベッドルームになる最大奥行き1890mmもの車中泊スペースが出現するのだから、5ナンバーサイズのクルマのラゲッジスペースの使い勝手としては世界最上級と言っていい。
トヨタ・シエンタ
同じカテゴリーのトヨタ・シエンタの2列シート版、FUNBASEもラゲッジルームは奥行き935mm、幅1060mm、天井高1100mm(ローデッキ状態。ハイデッキ状態では930mm)ものスペースがあるから文句なし。荷物の積載性はもうばっちりである。
日産ルークス/三菱eKスペース
ちなみにコンパクトカーよりさらに小さい軽自動車のカテゴリーでは、やはりスーパーハイト系と呼ばれるジャンルのクルマのラゲッジスペースが使いやすく大容量。
ホンダNーBOX、ダイハツ・タント、スズキ・スペーシア、日産ルークス&三菱eKスペース(兄弟車)があるなかで、容量的に優れているのがルークスとeKスペースだ。
スーパーハイト系軽自動車のラゲッジスペースの肝となるのが奥行きで(幅と高さは大きな違いなし)、ライバルのNーBOX600mm、スペーシア525mm、タント485mmのところ、ルークスとeKスペースは675mmと奥行きがもっともたっぷり。
ただし、両車ともに現時点で一時生産を停止している。軽自動車で大容量のラゲッジスペースを望むなら、その動向を見守りたい。だが、上記の6台は車高が1650~1700mm以上あり、立体駐車場への入庫は難しい。自宅の駐車場やよく訪れる施設の駐車場が立体式で、全高1550mm以下の制限があるなら、導入は諦めるしかない。
ホンダ・シャトル
ならば、2022年中にインサイト、CR-Vとともに国内販売を終了するというアナウンスが聞こえている、先代ホンダ・フィットをベースにした5ナンバーサイズのステーションワゴン、シャトルを薦める。全高は2WDで1545mmなので立体駐車場の入庫性はまったく問題なし。
コンパクトカーといえどもさすがワゴンで、ラゲッジスペースは開口部地上高540mmとごく低い。世界のステーションワゴンの平均値は620mmなので、つまり重い荷物の出し入れも楽々である。ラゲッジフロアは後席使用時で奥行き955mm、幅970~1500mm、天井高835mm~となっている。
床下にも収納があり、センタータンクレイアウトの恩恵で後席はごく低く格納でき、リヤドアからの荷物のアクセス性も文句なし。その際のフロア最大奥行は身長180cmの大人が真っすぐ横になれる1840mmに達するのだ。この抜群の使い勝手を持ちながら、販売中止となるのはなんとももったいない。新車を手に入れるなら早目の商談を薦める。