新型デビュー間近の今、初代ステップワゴンを振り返る
今春に発売される新型ステップワゴンが1月7日、初公開された。披露された写真を見た人はピンと来たのではないだろうか。これまで5世代のモデルが登場したステップワゴンだが、初代&2代目モデルはスクエアなボディ形状からひと目でわかる、実用性の高さがうかがえるパッケージングを採用していた。そして新しく登場する6代目モデルもまた、角の丸みこそあるものの全体的なフォルムはスクエアでシンプルなスタイリングが特徴のように見える。そう、まるで先祖返りしたような雰囲気を漂わせているのだ。
そこで、本稿では現在のミニバンの王道である5ナンバー箱型ミニバンの礎を築いたと言っても過言ではない初代ステップワゴンを振り返りたい。
実用性と居住性を追求した初代ステップワゴン
20世紀末にRVブームに乗り遅れたホンダが送り出したのがクリエイティブムーバーシリーズだ。とくに初代オデッセイは大ヒットモデルとなってホンダの販売台数は急増。そこに追加されたのが第三弾のステップワゴンで「こどもといっしょにどこいこう」や「FF1.5BOXライトミニバン」をキャッチコピーに登場した。現在へとつながる5ナンバーサイズの箱型ミニバンの始まりとなるのである。
スタイリングは、キャッチコピーに違わぬ箱型で、それまで背の低いモデルで席巻していたホンダから一転。まるでプロが使う専用工具箱を匂わせる機能重視の箱型で、角は若干丸められていたものの前後バンパーとそれをつなぐボディ下部の樹脂部品とルーフレールを持つスタイリングが印象的だった。ホンダは「大型ルーフガーニッシュから大型リヤコンビネーションランプ、リヤバンパー、ボディサイド、フロントバンパーへとぐるりとつながった一体感溢れるサラウンド・ボディプロテクター・デザイン」と呼んだが、無骨な感じを抑えたシンプルさも時代にマッチしたように思う。
特徴的ではないが、なぜか愛嬌を感じさせるヘッドライトやフロントグリル、サイドのプライバシーガラスもあって、1972年に発売されたステップバンの名を継承するのではなく、まったく新しいステップワゴンという新規のクルマであることを感じさせるスタイルを採用。家族みんなが幸せになれるユーティリティ性を追求したという初代ステップワゴンの誕生は、まさにクリエイティブ・ムーバー(生活創造車)で、使い勝手などのユーティリティ性能を最優先したクルマの誕生だった。
背高&箱型ボディは小柄な女性でも運転しやすい
そしてこの形状のメリットは多くのユーザーに恩恵をもたらす。着座位置の高さと箱型ゆえに前後の見切りが良くて、誰にでも運転しやすい形状だった。フロントのオーバーハングは短いため、市街地でも扱いやすく、全体的に平面で構成されているのでバックでの駐車もしやすい。この時代、クルマに興味のない女性は軽や小型車に乗ればよいといった乱暴な風潮が残っていたが、ステップワゴンであれば、バックでの駐車もまっすぐに停めやすい。結果として人気を獲得するのは必然で、とにかく道具として優れていた。
当時のライバルたちは、同門のオデッセイを含めた3ナンバーサイズか、5ナンバーサイズだとセダンからの乗り換えを考えて背の高さを抑えたモデルが主流。そこにステップワゴンはFFプラットフォームで背高であることから室内も荷室も広くできて、低床フロアで乗り降りはしやすく、室内高1335mmがもたらす空間は新鮮さに満ち溢れていた。また、コラム式ATと足踏み式パーキングブレーキの採用もあってウォークスルーを可能にしており、時代を先取りする仕様とともに5ナンバー&小型ミニバンの時代を切り開くこととなる。
多才なシートアレンジは多人数乗車から自転車の積載もOK
また、シートアレンジも多才であり、2列目シートが180度回転してリビング仕様にできるほか、2列目・3列目シートをフラットに倒すことで車中泊などにおいて活躍しそうなフルフラット仕様も可能だった。加えて、2列目シートを前方に畳めば3列目シートの足元空間が広がるリムジン仕様も実現。3列目を左右に跳ね上げれば荷物スペースは拡大され、さらに3列目を跳ね上げて2列目を前方に畳めば驚くほど大きな荷物が積載できるなど、機能面で非常に優れていた。
近年は夕方から雨が降ってきたら、家族から「駅までクルマで迎えに来て!」などといった状況は珍しくなく、初代ステップワゴンが普及するまでは「明日の朝の自転車はどうするの?」と断られていた場面だ。ホンダとしては、じつはバイクが詰める車両が欲しかったからこういった形状になったと言うが、結果的には日本の風景を変えてしまうほどのパッケージとなった。
誰にでも運転しやすい箱型で、低床フロアで積載性も高い。オーバーに言えば女性の社会進出や、現在の軽のスーパー背高ブームにつながる要素が満載だったといえるだろう。