6代目 1981年
1981年登場の6代目から、乗用向けにアレンジしたバンの「アトレー」が登場。これは1976年にデビューした初代「タウンエース」を皮切りに、2代目「ボンゴ」や「デリカ」、さらに「バネット」など、小型1BOXに近代的な乗用仕様が続々と登場した影響があるのでしょう。それまで仕事一本槍だった軽バンの世界にも、1979年にデビューした7代目「キャリイ」や「サンバー」のハイルーフを皮切りに、「アクティストリート」や「ミニキャブ・ワイド55エステート」など、1981年にかけて乗用・レジャーユースに対応できる仕様が続々と登場してくるのです。
そんな6代目の展示車は背面で延長されたキャビンの空間を持つ、1983年のマイナーチェンジで追加された「ハイゼットジャンボ」。小型のトラックとしては、日本国内では1979年デビューの「ダットサントラック・キングキャブ」に次ぐもので、もちろん軽トラックとしては初。展示車はこの当時に各社の軽トラが続々と採用し始めた4WD仕様車で、同時期の「サンバーハイルーフトラック」とともに、近代的な「遊べる軽トラ」の元祖といったところでしょうか。なおこの6代目の「まゆげ」の愛称は、どちらかと言うと当時ではなく、2000年代後半ごろから定着したものだと認識しておりますが、いかがでしょうか。
7代目 1986年
1986年登場の7代目モデルも、さすがに最近では街なかで見かけることは少なくなりました。水まわりがウイークポイントで、夏場はよくフロントのガーニッシュを外した姿を見かけたものです。モデル半ばに550ccから660ccへの拡大を迎え、目立つ外観上の変更点はバンパーの拡大。デッキバンが加わったのもこの代からです。展示車はモデル末期の1993年式アトレーで、大型ガラスサンルーフのコスミックルーフを備えています。
8代目 1994年
1994年デビューの8代目は、デビューから28年を迎えた2022年の現在でも「なんでもいいから中古で安い軽トラ」と探してもらうとこれが出てくるほど。トラックでは扱いが荒いと荷台のサービスリッドが歪んでしまい、点火コイルの真上に雨天や洗車時の水がしたたり落ちてエンジンが不動になる、というトラブルに見舞われるものの、生存率は意外と高いモデルです。「サンバーディアス・クラシック」の影響を強く感じる「アトレークラシック」、まるでモーターショーのコンセプトカーのような外装を持つ「ハイゼットis」など、バブル後の登場にもかかわらず派生モデルも豊富でした。
9代目 1999年
1999年デビューの9代目は、トラック、カーゴ(この世代からバンからカーゴに呼称を変更)ともに同時期に現行の新規格に対応するリニューアルを受けたものの、その後のモデルチェンジの足並みにはズレが生じます。他社の軽トラが新規格への移行とともにセミキャブオーバー化するなか、荷台の長さを損なわないキャブオーバーを貫いたのは結果的に大成功。2014年のフルモデルチェンジが行われるまで、マイナーチェンジを受けながら15年にわたって作り続けられました。ハイゼットが2021年度「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞するに至ったのは、初代から60年続く伝統はもちろんのこと、この9代目あってこそのことでしょう。
10代目 2014年(トラック)
「ハイゼットカーゴ」およびこの世代からようやく5ナンバーのワゴンも用意された「アトレー」は、「ハイゼットトラック」とは異なるジウジアーロによるデザインのボディをまとっておりましたが、2005年に早々と10代目にチェンジ。この積載性を大いに高めたこのモデルチェンジは大成功で、2018年にスマートアシストへの対応がメインとなるビッグマイナーを経ながら2021年まで16年にわたって作り続けられた、「トラック」同様のロングライフモデルとなりました。
私はかつて、ダイハツのベテランエンジニアの方から、忘れられないお話を伺ったことがあります。ちょうど「キャリイトラック」が現行型にフルモデルチェンジを受け、セミキャブオーバーから全車フルキャブオーバーに戻ったころの話です。あまりに「ハイゼットトラック」が長寿なものだから、次期型はいったいいつ出るのですか、とお聞きしたところ「お客さんから変えてくれという話が聞こえてこないから変えませんよ。むしろ変えてくれるなとさえ言われます。もし下手に変えて、そのおかげで値段も高くなってしまったら、かえってお客さんに悪いですからね」と仰られたのです。
ああ、なんて良心的なのだろう、と感動すら覚えましたが、なんとその翌年、2014年にハイゼットトラックがフルモデルチェンジしたのには心底びっくり。そんなデビュー時の思い出もある現行ハイゼットトラックも、早くもかれこれ8年目。ロングライフの兆しはすでに見えています。
お次は続編として、現行世代のカスタマイズカーをチェックして参りましょう。