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「縦に使う」「横に使う」って何? 上手くなりたいなら知るべきクルマの「タイヤグリップ」の世界

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TEXT: 藤田竜太(FUJITA Ryuta)  PHOTO: Auto Messe Web編集部

縦グリップと横グリップはフリクションサークルで表される

 そのタイヤの「縦のグリップ」と「横のグリップ」の関係性を模式図化したのが、いわゆる「フリクションサークル」(摩擦円)。正確に言えばフリクションサークルは真円ではないのだが、わかりやすくまん丸に描かれることが多い。この円の中が、タイヤの運動性能を発揮できる範囲で、ここから飛び出すとスリップすることになると思えばいい。フリクションサークル

 これを見ると、円の半径が10だとしたら、グリップ力を横方向に10使うには、縦方向をゼロ=つまり加速も減速もしていない状態を造り出さないといけないのがわかるはず。具体的には、舵角一定、速度一定で、アンダーステアが出るギリギリ手前をキープするのが、本当の意味での「最速のコーナリング」ということになる。

 この場合、ブレーキは完全にオフなのはもちろん、アクセルオフもエンジンブレーキ=「縦のグリップ」を使うことになるのでNG。加速も同じくNGなので、同じ速度を維持するためのアクセル(ハーフスロットルあるいはパーシャルスロットル)が必要になる。実際のコーナリングでは、コーナーのクリッピング付近でこの状態になるのがひとつの理想だ。横グリップの最大値付近

 逆にいえばコーナーへのアプローチ、減速時は直進状態でフルブレーキ。ターンインを始めるときはそのブレーキを戻しつつ、ブレーキを抜いた量に比例してハンドルを切り足していき、立ち上がりでは逆にハンドルを戻しながら、それに合わせてアクセルを踏み足していく。つねにフリクションサークルからはみ出さないよう、なおかつフリクションサークルの縁を沿うようにコントロールしたとき、タイヤの性能を100%使い切ったことになる。コーナーリングにアプローチするトヨタ86

 この「縦のグリップ」と「横のグリップ」は大雑把に言うとほぼ同等の力で、ABSが作動するようなフルブレーキ時の減速Gが1Gのタイヤは、コーナリングフォースが最大のときの横Gも1Gぐらいだと思えばいい。

 細かく言うと、最近の高性能タイヤは「横のグリップ」よりもわずかに「縦のグリップ」が勝る傾向があるので、コーナリングラインも旋回時間が長いU字ラインより、レの字ラインの方がより速いともいわれている。

コースラインはレの字が理想的だ 一方で、今後のハイグリップタイヤは縦と横の中間、「斜めのグリップ」の向上にも力を注いでくるはずだ。そのため、タイヤの進化や特性によって、理想の走り方が今後も変わっていく可能性は大いにある。

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  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • モータリング ライター。現在の愛車:日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)。物心が付いたときからクルマ好き。小・中学生時代はラジコンに夢中になり、大学3年生から自動車専門誌の編集部に出入りして、そのまま編集部に就職。20代半ばで、編集部を“卒業”し、モータリング ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。特技は、少林寺拳法。
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