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低走行=極上じゃないから怖い! 80〜90年代旧車の「バリもの」に潜むワナ

走行距離2kmのメーター画像

一部モデルでは新車価格の数倍で取引される個体も

 旧車を得意とする中古車店を取材していると遭遇するのが、走行距離が極端に少ない個体だ。いわゆる納屋物などと呼ばれるもので、さすがに1970年ぐらいのリアル旧車ではないものの、1980年代から1990年代前半あたりのネオヒストリックやヤングタイマーと呼ばれるモデルだと結構存在する。このあたりだと10万km超えは当たり前だったりするが、ヒトケタ万km前半だったりする。

 30年落ちぐらいで、この走行距離だとバリモノだと思ってしまうが、実際はどうかというと、オーナーの維持の仕方にもよるが程度がいいとは限らない。基本的にはレストアなどしていない現状状態では程度はあまりよくないと思ったほうがいいだろう。もちろんショップであれば、不具合を解消したうえで販売するので、問題があるわけではないのでこの点は勘違いしないでほしい。「販売できる状態にするめ非常に手間がかかった」ということだ。

長らく始動していないエンジンにはサビの可能性も

 ではなにが問題かというと、ほぼすべてと言っていい。まずエンジンはオイルがそのままだったら中でスラッジが大量に発生していることがあるし、完全にオイルパンに落ちていれば油膜がなくなっているため、シリンダーがサビていることもある。そもそもガソリンタンクは内部がサビだらけ。キャブレターやインジェクションだと、腐ったガソリンが詰まっていたりする。某メーカーの博物館に行ったときに学芸員の方に聞いたら、「インジェクションはちょっと放置しておくとすぐにかからなくなるから大変」と言っていたのが印象的だ。

 ボディも湿気によってサビるし、内装もなんともカビ臭かったりする。せいぜいいいのは屋内保管なら紫外線を浴びていないことぐらいか。また、足まわりも荷重がかかり続けるので、大物であればスプリングはヘタるし、各部のブッシュも潰れるだけでなく、油分が抜けて劣化もする。ブレーキもしかりで、ローターやドラムはサビだらけで、キャリバーは固着していることも多い。そもそもブレーキフルードは吸湿性があるので、内部に水分を呼び込みやすい。

 と、枚挙に暇がないが、とにかくクルマは動くのが前提のもの。それを止めたままにしておくというのはいいことではない。人間に例えるなら、ずっと寝ていると体が不調になりやすく、適度に運動したほうが健康なのと同じだ。

たまにエンジンだけ始動してもダメ

 定期的にエンジンをかけているという人がいるが、もちろんかけないよりかはいいとはいえ、逆を言えば動くのはエンジン内部だけ。足まわりの荷重などはそのままだけに、やはりヘタリは進んでしまう。エアコンの聞いた車庫で、ジャッキアップして荷重を掛けないようにするなどしたらまだいいかもしれないが、自動車としての存在意義がまったくなくなってしまう。乗る時間がなくても、エンジンをかけるだけでなく、最低30分は周囲をドライブしたほうがいい。もちろん走行距離は増えなくてもオイル交換などは定期的に行うこと。

 乗ってこそのクルマで、過走行や激しくストレスがかかる急が付く操作は避けつつ、適度に乗ってやって、ボディケアも含めてメンテはしっかりとやってやるのがクルマを健康に保つ秘訣だろう。歳は取っていて、見た目はそれなりだけど、健康で元気というのは、人にもクルマにも言えることだろう。

 じつは筆者の愛車も20年落ちで、6万kmという微妙な状態で購入したもので、当初は走行が少ないと喜んだものの、なんとなく調子はよくないし、エンジン内部を見るとスラッジだらけ。ゴム類は結構ヒビが入っていて、完調にもっていくのにかなり苦労した覚えがある。中古車購入時は走行距離だけに注目せず、メンテナンス履歴や実際の調子も見て判断するようにしたい。

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