「カッコだけ」ではなく空力性能をアップしたい!
リップスポイラーやGTウイングなどのエアロカスタム。愛車の見た目を彩るパーツであるが、そもそもで言えば、空力的な効果を得るためのものである。はたしてその効果は街乗りでもわかるのだろうか?
空力的な検証をしているブランドなら実効性あり
クルマの見た目のカスタムといえば「エアロパーツ」だ。リップやサイドステップなどを装着すると、地面とクルマの隙間が少なくなり、車高が低くカッコよく見える。ウイングを装着すれば、リヤ周りの印象がグッとスポーティになる。では、サーキットを走らないクルマでも効果はあるのか? 答えは「あるものは、ある!」
一般的に空力的な効果が表れるのは80~100km/h以上と言われる。しかし、例えば筑波サーキットのヘアピンコーナーの最低速度は50~60km/hほど。そこでエアロパーツの効果があるかと言うと、「ある」のである。すべてのエアロが効くわけではないが、そのくらいの速度でも限界領域で走行していると体感できるくらいの差があるのだ。
ということは、街乗りの速度でも十分効果を感じられる可能性が高い。ただ、どんな形状のものが効くかの判断は難しい。大きいものほどわかりやすいハズだが、空力的な検証をしてデザインされているパーツはじつは少ない。数少ないアフターパーツメーカーと、自動車メーカー系のパーツブランドではそれらの検証を行い、効果が表れるようになっている。
クルマの空力はとくに路面との間を流れる空気の速度によって効果が変わり、その外的要因が大きいのでシミュレーションが難しい。空中を飛ぶ飛行機の空力は計算しやすいらしく、ここ30~40年ほど大きくカタチが変わっていない。しかし、レーシングカーのカタチが1980年代と現在では大きく変わっているのは、路面との間の流速を見極めるのが難しいからだという。もちろんレギュレーションでカタチが規制されていることもあるが。
空力効果を意識するなら前後バランスに注意を
例えば、先代「トヨタ86」用GRパーツの「GRフロントスポイラー」や「GRリヤスポイラー」については、空力的な実証の元に設計されているという。さすが自動車メーカー直系のパーツである。ストロークセンサーを用いた簡易的な荷重変動をモニターしても、装着時はあきらかに街乗りの速度域から荷重が増えていたのである。
効果があるとすると気をつけたいのはエアロのバランスである。フロントスポイラーを装着すると「フロントのダウンフォースが増えて、接地感が増す」、これはそのとおりである。しかし、そうなると相対的にリヤのグリップが足りなくなるのである。決してリヤの荷重が減るわけではないが、フロントだけが増えるのでそうなるとリヤが浮き気味に感じるのである。
さらに、フロントまわりの空気が整流されると、リヤトランク上部に巻き込む走行風が減り、リヤのダウンフォースが減ることもある。そうなると余計にリヤが軽く感じられる。極端な話、ストリートの速度域でも雨や雪の日にはリヤタイヤが滑りやすくなる可能性があるのだ。
それと同じように、リヤウイングだけを装着すれば、相対的にフロント荷重が減り、荷重が足りずにアンダーステアを誘発することもある。思っているよりも効くパーツだけに、前後バランスを考えて装着してもらいたいものなのだ。
ガムテで試しに空力効果を疑似体験してみる裏ワザ
ちなみにエアロパーツを装着前に、どんな効果があるか体感する方法をここで伝授しよう。バンパーサイドのフォグなどがある部分。ここにガムテープなどを貼って、このデコボコを無いようにしてしまう。するとフロントタイヤハウス前の走行風が整流され、フロントフェンダー内から空気が吸い出されて、フロントの接地感が上がることがある。
実際に鈴鹿サーキットでこの有無をテストしたところ、プロのドライブで約0.7秒、貼ったほうが速かった。街乗り領域や高速道路でも体感できる可能性があるのでテストしてみると、エアロパーツの効果が疑似体験できるだろう。もちろん、法規上の灯火類を塞いだり、ガムテープが飛散したりしないように気をつけてもらいたい。