快適度は3つのポイントで決まる!
高齢者を後席に乗せてドライブに連れて行ったり、病院の送り迎えをするとして、果たしてどんなクルマが高齢者に優しく、理想的なのだろうか。多くの人はここで、両側スライドドアが付いているクルマが最適だろう……と思うはず。確かにそれは正解。だが、どんなスライドドア車でもいいというわけではない。できる限り、乗り降りがしやすく、また後席の着座&立ち上がり性に優れたクルマを選ぶべきなのである。
そのポイントは、1:スライドドア開口部のステップ高の低さ(乗降時の足運びの容易さにかかわる)、2:スライドドア開口部の高さの余裕(頭や背中をかがめずに乗り降りできる)、3:後席シート位置のフロアに対する高さ(着座性、立ち上がり性にかかわる重要なポイント)である。
1と2は誰でもピンとくる、高齢者にも向いている乗降性の良さに直結するポイントだが、最後の後席シート位置のフロアに対する高さ……に関してはちょっとわかりにくいので説明したい。例えば健常者であっても、ローソファや座椅子に座って立ち上がるには、それなりの足腰の力が必要でけっこう大変。だが、食卓の椅子であれば、座るのも立ち上がるのもそれに比べれば楽である。
それと同じで、フロアに対してシートの座面位置=ヒール段差が高いほうが、こと足腰の力が弱まった高齢者にとって、より座りやすく、立ち上がりやすいことになる理屈だ。
オプションを装備すれば最強の新型ノアヴォク
そんな観点から、まずは両側スライドドア完備のミニバンを見てみよう。Lクラス、Mクラス、Sクラスと、国産ミニバンは数多いが、ステップ高の低さとスライドドア開口部の高さの両方を満足させてくれるのは、じつはMクラスボックス型ミニバンなのである。
そのなかでもとくにスライドドアの乗降性に優れるのは、新型トヨタ・ノア&ヴォクシーだ。ステップ地上高=フロア高は380mmと、先代の360mmに対して20mm高まっている。しかしそれでも日産セレナの1段目390mm、フロア450mm、ホンダ・ステップワゴン(現行型)の385mm(春発売予定の新型は不明)よりも低い。
なおかつパワースライドドア車にオプション設定される、スライドドアの開閉に機械式の“からくり”で連動するユニバーサルステップ(たった3万3000円)を装着すれば、なんと世界の乗用車でもっとも低い部類の地上200mm(奥行き180mm)のステップになるのだ。
さらにBピラーには上下に長いアシストグリップが備わり、下半分は子ども用として有効。子ども用自転車のハンドルのグリップと同じ細さになっているため、同時に握力が衰えた高齢者でも握りやすいのである。
また、スライドドアで重要な開口部の高さは1250mm。これはセレナの1305mmに劣るものの、とくに背の高い高齢者でなければ、問題ない乗降空間の高さになるはずだ。そして肝心の2列目席のシートの高さ=ヒール段差も370mmと、セレナとステップワゴン(現行型)の340mmを大きく上まわる。すでに説明したように、着座性、立ち上がり性ともにベストというわけだ。さらに、ハンズフリーパワースライドドアも用意。足を出し入れする位置をフロントドア側下に移動したため、より使いやすくなっているのも注目点である。
乗り降りのしやすさで分があるスズキ・ソリオ
次に、プチバンと呼ばれる、コンパクトハイトワゴンの両側スライドドア付きモデルはどうか。このジャンルはスズキ・ソリオとトヨタ・トール、兄弟車のダイハツ・タンクの3台。なかでも高齢者に向くと独断できるのは、スズキ・ソリオだ。
理由はまず、スライドドア部分のステップ高がソリオは360mm、トール・タンクが366mmと、6mmとはいえ、ソリオのほうが低い。加えてスライドドア開口部の高さがトール・タンクの1190mmに対して、ソリオは1230mmとより高い(より頭をかがめず、背中を丸めずに乗り降りできる)からだ。
しかも、後席のヒール段差はトール・タンクが335mmのところソリオは355mmと高い。結果、スライドドアからの乗降やシートの着座や立ち上がり性という一連の乗車・降車の流れで、高齢者フレンドリーということになりそうなのだ。