サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

走りもいいし進化もしてる! 不人気車の烙印が残念すぎる「不遇の」2代目ロードスターとは

NBロードスターの走り

偉大な兄「NA型」とどうしても比べられてしまう

 2代目となるマツダ・ロードスターの開発は非常に厳しい状態だったと思う。世界的ヒットを飛ばした初代NA型に対しての2代目だから大変なのは間違いないのだが、2代目登場はバブル崩壊後。ユーノス・ロードスターが登場した1989年はバブル期で、ライバル不在のブルーオーシャンだったのに2代目はライバル達が乱立するレッドオーシャンだったのだからたまらない。

先代のコンセプトは確実に受け継がれている

 そこで初代の長いモデルライフから生まれた2代目NB型は、「人馬一体を」変えないことを重視していたように思う。

 まずシャシーは基本のNA型から引き継ぎ、車体中央の、パワーユニット(エンジンと変速機)とファイナルドライブ・ユニット(デフケース)パワー・プラント・フレームも健在。サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式で継承されたが、前側クロスメンバーの追加でロールセンター高を低く抑えることに成功。トレッドの拡大やスタビライザー径を太くしたことで、ショックアブソーバーなどの自由度が増して、乗り心地と回答性の両立がうまくなり、チューニングの幅が広がったともいえる。

 ボディは、衝突安全性を考慮した高剛性と衝突安全性に寄与する「MAGMA」を採用。初代NA型から得られたデータを徹底的に解析し、各部の肉厚や補強を再検討。結果ボディ剛性を大幅に高めながらもホワイトボディ(エンジン等を除いたボディのみの重量)で僅か6kgの重量増加とロードスターの必須項目を確保した。

 エンジンは、初代NA6型1.6Lのデビュー以降の1993年にNA8型で1.8L直4となったが、NB型では引き継いだ1.8Lと、1.6Lを再設定。初代NA型1.6LがB6-ZE型(120ps/14.0kg-m)、1.8LがBP-ZE型(130ps/16.0kg-m)であることに対して、NB型では吸排気系や圧縮比を見直している。1.6LのB6-ZE(RS)型が125ps/6500rpm、14.5kg-m/5000rpm、1.8LのBP-ZE型(RS)が145ps/6500rpm、16.6kg-m/5000rpmへと進化。変速機も1.8Lには6速MTが組み合わされて、楽しさや魅力が高められている。

可変バルタイやボディ剛性の向上など進化

 2000年には通称NB2型へと進化を果たしており、1.8LのBP-VE型エンジンには可変バルブタイミング機構のS-VTを追加し、160ps/7000rpm、17.3kg-m/5500rpmを発揮。さらなるパワーアップとボディ剛性の向上、16インチタイヤによる人馬一体へのあくなき追求の姿勢は、開発陣のロードスターへの愛を感じさせるもの。

 おそらく開発陣は、一度ロードスターを中止してしまったら二度と作ることができない。作り続けることが何よりも大切と、開発を続けたに違いない。マツダのロードスターは世界中で愛されている。そのコアなファンに負けない愛情を注ぎこむ作業が続いたことだろう。

 2代目で消滅してしまったら「あんなクルマもあったね」と、歴史の一部になってしまう。もちろんそれも歴史に残る仕事であるが、過去の出来事にしてしまうのは非常に惜しい。「人馬一体」を3代目に繋ぐ。そんな気持ちで改良を続けたに違いない。

ターボモデルやクーペなど派生モデルも登場

 ロードスターを継続させるために、さまざまな挑戦もなされている。2001年にはウェブサイトで自分好みの仕様が選べる「WEB TUNEファクトリー」で好みの仕様のオーダーが可能になったほか、モータースポーツ向けの「NR-A」も設定。2002年にはNB3型となって、クロス生地のソフトトップの設定や排ガス性能を向上させた。

 モデル末期の2003年に屋根が開かない10月発売のロードスター・クーペと、12月発売の初のターボモデルが発売され、ユーノスから始まったマツダのロードスターを作り続けるための模索もなされていた。こちらはマツダE&Tという別会社が開発を行ったのだが、クーペは顔違いの三種が設定され、ターボエンジンも172ps/21.3kg-mを発揮。2代目ロードスターの最後を飾るようなモデルが発売されたが、残念ながらヒットモデルとはならなかった。

 この当時は、マツダは新しいデザイン言語でアテンザやアクセラのようなスタイリングに変更されるから、2代目ロードスターを買っておけ! といった風潮はあったようだが、市場は知っていたのだ。「マツダがロードスターをあきらめるはずがないと」。NB型は現在ではヒットモデルの印象は薄いが、しっかりと3代目NC型へとつないだのだ。

 それゆえにターボもクーペも素晴らしいスポーツカーだったことだけは知ってほしい。ターボの出力は速さだけではなくて、余裕を持つ。持て余すのも楽しみひとつという提案で、「ロードスターは遅いから後ろからつついちゃえ」などという車両に対してアドバンテージになった(テクニックがある人ならターボ無しでも大丈夫かもしれないが)。

 クーペは人気のロードスターをいまさら所有するには、なにか違いが欲しい方向けか? ちょっと他社をリスペクトしすぎたような仕様もあったが、カスタマイズの世界での影響もあって、参考にした方もいるだろうし、後のリトラクタブル・ハード・トップにつなげられている。ロードスターは、ユーザーが自由に楽しめばよいことを周知した功績は残り続けるのだ。

NB型はドラテクを磨くのに一番最適なモデルだろう

 そして2005年に3代目のNC型ロードスターが誕生する。3代目も紆余曲折していると思うのだが、要望があれば別企画の記事で紹介したい。それはさておき初代NA型を現在も愛好している筆者として最後に伝えたい。

 NB型はNA型のネガティブな面をそぎ落とした最適な入門スポーツカーだと思う。初代のビッグマイナーチェンジと言われているしそこに反論はないが、人馬一体を味わう点ではむしろ勝っていると思っている。初代が売れた分だけ改良された2代目は、開発陣の生みの苦しみがしっかりと反映されて、入門スポーツカーに適している。

 初代のやりきれなかった点が改良されていて、変えないポイントと変えるポイントがあり、10年前に開発された初代よりも進化している。代表的部品は幌だが、初代と2代目で流用できる部品も多いことから、初代も二代目のユーザーにも、それぞれ純正及びチューニング部品の流用ができてメリットも大きい。どちらにとっても補修部品が安くできる。これも大事なことだ。

 初代がすごすぎて陰に隠れがちなのは否定できないが、初代の魂みたいなものはしっかりと宿っているし、さまざまなパーツを試して自分好みに仕上がるチューニングのベースとしても優れている。おそらくは、同価格帯の初代と2代目であれば、不人気気味の2代目の方が状態はよいであろう。

 現在では不可能となったリトラクタブル・ヘッド・ライトはない。時代を切り開いた個性もない。だが、運転のテクニックを磨きたい、そんな方にはNB型はうってつけだ。

 愛車として、オープンやFRの楽しさを感じて、チューニングでも劣化したパーツ交換でも、走りが違うことに気が付けば、運転の楽しさ、走りの楽しさ、チューニングの楽しさに気が付いてもらえるだろう。まだ遅くははい。世界に誇れる人馬一体を自分の愛車にしよう!

■マツダ・ロードスター(NB)Sパッケージ
全長×全幅×全高:3955×1680×1235mm
ホイールベース:2265mm
トレッド:前/後 1415mm/1440mm
車両重量:1030kg
乗車定員:2名
室内寸法:長×幅×高=865×1355×1025mm
エンジン:B6-ZE 直列4気筒DOHC 
総排気量:1597cc
最高出力:125ps/6500rpm
最大トルク:14.5kg-m/5000rpm
タイヤサイズ:前/後 185/60R14 (前後とも)
ブレーキ:前/後 ベンチレーテッド・ディスク(前後とも)
サスペンション:前/後 ダブルウィッシュボーン式(前後とも)

モバイルバージョンを終了