日本の福祉車両はすごく充実していた!
いわゆる福祉車両というクルマの種類がある。高齢者の介護用や、からだの不自由な人のために、量産車の一部を改良して乗降性や操作性での利便性を上げたクルマのことだ。例えば、トヨタならばウェルキャブというカテゴリ―名称で、トヨタの新車ホームページのなかで詳しい車両説明が掲載されている。
また、コロナ禍で最近はリアルでの開催が行えていないが、2019年まで東京で毎年開催されたきた国際福祉機器展では、トヨタ以外にも日産、ホンダ、ダイハツ、スズキなど、自動車メーカー各社が展示ブースを設けて利用者の多様なニーズに応えている。
欧米では福祉車両は意外と少ない
こうした情景が当たり前になっている日本人の感覚だと「欧米では、日本にはあまり紹介されていないメーカー系の福祉車両が数多くある」というイメージを持つ人が少なくないかもしれない。ところが、実際は欧米メーカーでは日本に比べて福祉車両をメーカー直系企業が手掛けるケースはあまり多くない。
これまで世界各地のモーターショーのほか、福祉機器関連の大型見本市も取材したことがあるのだが、移動体ではクルマそのものよりも、多様な電動車いすが主流なのだ。
量産車を改良した福祉車両もあるのだが、いわゆるアフターマーケットでユーザーにあったカスタマイズの領域がとても広く、量産品の品揃えを増やすというメーカーや事業者は少ないと思う。つまり、福祉車両については、日本がかなり進んでいるという印象がある。その理由について、筆者の見立てでは、ミニバン文化に関係が深いと思う。
福祉車両には大きくふたつの種類があり、ひとつはミニバンタイプだ。リヤゲートのスロープや電動リフトの操作で車いすに座ったまま乗車できたり、または車いすをクルマの後部に収納して、助手席が回転式になって乗降するタイプがある。
もうひとつの種類が、自身で運転するためにハンドルやペダルにさまざまな工夫を施したものである。前者のミニバンタイプが、日本での福祉車両ビジネスでのシェアが大きい。