【汎用性部門】トヨタ3S-G/2L直列4気筒DOHC(自然吸気、ターボ)
トヨタの名機といえば3S-G。WRC(グループB、グループA)/グループC/JGTC/IMSA GTP/パイクスピーク/F3/JTCC/ダートラ/ジムカーナなど、ありとあらゆる競技カテゴリーで使用され、数多くのタイトルを獲得してきたまさに傑作エンジンだ。
ベースは丈夫な鋳鉄ブロックを持った2S-E型エンジンで、ヘッドはヤマハが開発したツインカム4バルブだ。ボア×ストロークは86.0mm×86.0mmのスクエアタイプ。1984年のデビュー当時は、2Lの4バルブエンジンとして、最軽量で強度にも余裕があるオーバークオリティエンジンだった。2007年まで23年も製造された。
市販車では、セリカ/MR-2/カルディナ/アルテッツァ/カリーナED/RAV4/カレン/カムリ/ビスタ/ガイア/イプサム/ナディアなどの多くの車種に積まれ、トヨタのグループAラリー全盛期はST165/ST185/ST205の各世代のセリカの心臓部として、ワールドチャンピオンたりの走りを支えた。
カテゴリーを問わず、20年以上モータースポーツのベースエンジンとして活躍したという実績からも、3S-Gの優秀さがわかるはずだ。
【高回転部門】ホンダF20C/2L直列4気筒DOHC(自然吸気)
馬力というのは1分間あたりの総仕事量なので、高回転になればなるほど1分間あたりの爆発数が増えるため馬力は大きくなる。だからレース用エンジンは基本的に高回転指向で、高回転になれば排気音の周波数も高くなって甲高いエキゾーストとなりかっこいい。その意味でも高回転に耐えうるエンジンは技術的にも難しいのでロマンがある!
というわけで、量産エンジンながら9000回転まで回せるF20Cは文句なく名機である。しかも通常エンジンは高回転に振れば、低中速の実用域がスカスカになり、低中速特性が良く市街地などで使いやすいエンジンは高回転が伸びない宿命にある。だが、ホンダには低速カムと高速カムを切り替えられるVTECがあるので、F20CをはじめとしたホンダのVTECスポーツエンジンは、どれも実用性とスポーツ性を高次元で両立。燃費も優れて環境と懐にも優しいエンジンだった。
とくにF20CはJTCCレースで使われたH22A改のディチューン版といえるエンジンで、レースのことを考えた市販エンジンというより、レース用エンジンを量産用に仕立て直したのはかなり珍しいケース。そしてS2000にしか載せなかった、1車種専用エンジンという意味でも思いっきり贅沢なエンジンだった。
【ベテラン部門】スバルEJ20/水平対向4気筒DOHC(自然吸気、ターボ)
現役期間が長いエンジンというのも名機の条件だとすれば、スバルのEJ20も忘れてはならない。EJ20は初代レガシィとともに1989年に登場。2020年3月までスバルの主力エンジンとして愛されてきた。SOHCのNAからDOHCターボまでさまざまなバリエーションがあり、最大の特徴は水平対向4気筒というレイアウトだ。
水平対向エンジンは、エンジン長が短くコンパクトにできて、名前の通り対向ピストンで慣性が打ち消せるため振動が出ないことがメリット。低重心ともいわれているが、補機類を考えると疑問符が拭い去れないのだが……。
とはいえ、92.0mm×75.0mmのビッグボア/ショートストロークエンジンなのでバルブ径が大きく、基本的には典型的な高回転型エンジンだが、30年以上にも渡り年次改良を繰り返し、度々「2Lターボエンジン最強」の座に輝いた。初代レガシィのターボは220psだったが、最後のWRX STI(VAB型)の限定車であるS208は329psにまで達した。