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「スポーツカー=悪」が理由だった! かつて存在した280馬力規制と「突破した」スポーツカーじゃないモデルとは

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TEXT: 佐藤幹郎  PHOTO: 本田技研工業/日産自動車/メルセデス・ベンツ/Auto Messe Web編集部

  • Z32フェアレディZの走り

  • 4代目レジェンドの走り
  • SPORT HYBRID SH-AWD
  • ナイトビジョンのイメージ
  • 4代目レジェンドのリヤスタイル
  • 4代目レジェンドのフロントスタイル
  • 4代目レジェンドの市街地走り
  • J35A型V型6気筒DOHC VTEC
  • Z32フェアレディZの走り
  • W124型500Eの走り
  • Z32型フェアレディZ

スポーツカー叩きが280馬力自主規制の発端

 昭和の時代、排ガスによる公害や交通事故の急増が社会問題になるなか、クルマは外貨を稼ぐ重要な基幹産業となり、便利な道具として普及していった。1970年代から’80年代にかけて日本の経済成長が高水準に達しクルマも進化するにつれて、「クルマが速いから事故が起きる」とか「スポーツカーがあるから珍走団(暴走行為をする集団)が生まれる」だのという風潮もあり、高性能車やスポーツカーが「悪」という時代になってしまった。

規制は国内販売される日本車のみが対象

 少し乱暴にまとめたが、こうして生まれたのが国産車は最高出力を280馬力までに抑えるという自主規制だ。日本車ではなく国産車と記したのは、日本メーカーのクルマであっても海外で販売されるモデルなら規制値を超えていても問題なし。また、外国メーカーのクルマなら日本で販売するクルマであっても規制の対象にはならなかった。W124型500Eの走り

 この280馬力自主規制の発端は、前述の社会問題を理由に運輸省(現在の国土交通省)が日本自動車工業会に規制を働きかけ、20世紀末期の280馬力規制が始まった。Z32型フェアレディZ

 ちなみに280馬力という数字は、Z32型フェアレディZの最高出力から決められたと言われているが、真意のほどは定かではない。しかしターボやマフラー、ECUの交換などで280馬力を超えるチューニングはできたわけだから、この自主規制がどこまで効力を発揮したのかは疑問符が付くのだが……。

規制値を打ち破った初モデルは4代目レジェンド

 2000年代に入ると、衝突安全ボディなどの普及をはじめとしたクルマの安全性が向上したことで、交通事故による死者数の減少もあり、日本自動車工業会が280馬力自主規制の撤廃を国土交通省に申し入れたことで2004年に撤回。同年10月には280馬力を打ち破るモデルが登場した。4代目レジェンドの走り

 それが2004年10月発売の4代目ホンダ・レジェンドだ。300ps/36.0kg-mを発揮する3.5L V6 VTECエンジンによる自主規制の突破は、ホンダ自慢のスポーツハイブリッドシステム「SH-AWD(スーパー・ハンドリング・オール・ホイール・ドライブ)」と相まって「ようやく日本にも快速セダンが生まれた!」と注目を集めた。J35A型V型6気筒SOHC VTEC

 しかし残念だったのは、このころになると海外のプレミアムサルーンでは300馬力オーバーは珍しいことではなくて、予想に反して新鮮味は薄かった。そしてレジェンドはサルーンでありスポーツカーではなく、自主規制を破ったモデルがスポーツカーであったならもう少し話題になったと思う。4代目レジェンドのリヤスタイル

 だが、逆にレジェンドだからできたのかもしれない。というのも、いくら自主規制とはいえ国がからむ案件ゆえに、スポーツカーで規制が終わるのは難しかったのではないだろうか。

SH-AWD搭載などの画期的な商品力は魅力だったが……

 そんな4代目レジェンドはホンダの意欲作であった。エンジンは自然吸気で300馬力を発揮していながらも、マグネシウム製ヘッドカバーやアルミ合金製の吸気マニホールドを採用。軽量かつコンパクトに仕上げられたこともあって、平成17年排出ガス基準75%レベルの星4つを獲得。環境性能も優れていた。SPORT HYBRID SH-AWD

 AWD(4WD)システムは、前後と後輪左右の駆動力を自在に可変できるSH-AWDを採用。前後トルク配分を30:70〜70:30に、後輪左右を0:100〜100:0まで変化できる無段階制御として、運動性能を向上させている。これが4ドアサルーンに必要か? と問われると難しいが、世界でメルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズと戦うことを考えれば、ホンダ独自の先進的な技術が必要であり、SH-AWDはのちにハイブリッド化された2代目NSXにもその思想は受け継がれるなど、走りも魅力のサルーンとして訴求力が必要だったのだ。

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