型式でもキャッチコピーでもない3代目「ハコスカ」の命名由来は⁉
スカイラインの歴史のなかで唯一、型式でもなくキャッチコピーでもない愛称で呼ばれているのが3代目のC10型。キャッチコピーは「愛のスカイライン」で歴代初のキャンペーン戦略が大成功を収め、スカイラインの名を世に知らしめることとなった。だが、そのキャッチコピーは愛称とはならず、4代目のケンメリと区別するために、そのボクシーなスタイルから命名された「ハコスカ」が定着することになる。
では、なぜそう呼ばれるようになったのか? これは曖昧な部分もあるのだが、ハコスカが登場した1960年後半から1970年代中盤までは、いくつかのクルマがその容姿(スタイル)をイメージした愛称で呼ばれることが多かったからではないだろうか。
例えばスバル360の「てんとう虫」、初代セリカの「ダルマ」、4代目のクラウンの「クジラ」、初代ホンダZの「水中メガネ」などがそうである。また、時代は少し進むが6代目スカイラインのスポーツモデルの後期型RSが「鉄仮面」と呼ばれたのも同じ流れだ。ハコスカ、鉄仮面を含めて言い得て妙な愛称があったことも定着したひとつの理由であるといえるだろう。
また、R32以降が数字で呼ばれるようになったのは前述したキャッチコピーが定着しなかったのもひとつの理由だが、32(サンニー)という言葉の響きのよさ、2代目スカイラインの高性能モデルであるGT-B、GT-Aが標準グレードと区別するため、ファンの間ですでに型式の54B(ゴーヨンビー)、54A(ゴーヨンエー)と語られていたことも少なからず影響しているのではないだろうか。
例外を除けば愛称やニックネームは人気や認知のバロメーター
現在、クルマ好きの間ではスポーツモデルの多くが型式で呼ばれることが定番化している。キャッチフレーズで語られる4代目~5代目のスカイラインは広告戦略の成功があるものの、マニアだけでなく販売台数を含めて、広く一般に認知されたことも愛称の定着に大きく影響しているはずである。
13代目のV37型がオーナー&ファンの間から型式で呼ばれることが少ない(V36までは少数派だが型式で呼ぶ人はいた)のは、現行モデルであることを差し引いても、400Rのような特別なモデルを除き、『スカイラインじゃなきゃ!』という固定ファンが減り、存在感が薄まったからだとも考えられる。
一部例外はあるものの愛称やニックネームは基本的に人気や認知のバロメーターとなり、セダンマーケットのシュリンクなど難しい問題が山積みなのは承知している。だが、次世代のV38(?)が登場するならば、革新の性能やメカニズム、コンセプトのみならず、イメージ戦略を含めて日産の総力を挙げ、ふたたびニックネーム、少なくとも型式で語られるクルマになることを目指してもらいたいものだ。
■歴代スカイラインキャッチコピー&ニックネーム一覧
【初代】キャッチコピー:なし/ニックネーム:なし
【2代目】キャッチコピー:羊の皮を被った狼/ニックネーム:54B(ゴーヨンビー)、54A(ゴーヨンエー)
【3代目】キャッチコピー:愛のスカイライン/ニックネーム:ハコスカ
【4代目】キャッチコピー:ケンとメリーのスカイライン/ニックネーム:ケンメリ、ヨンメリ
【5代目】キャッチコピー:スカイライン・ジャパン/ニックネーム:ジャパン、スカGターボ
【6代目】キャッチコピー:新しい愛のスカイライン/ニックネーム:サンマル、ニューマンスカイライン、史上最強のスカイライン、半魚人(RS前期)、鉄仮面(RS後期)
【7代目】キャッチコピー:都市工学・7thスカイライン/ニックネーム:サンイチ、セブンス、都市工学スカイライン
【8代目】キャッチコピー:超感覚スカイライン/ニックネーム:サンニ―
【9代目】キャッチコピー:日本のツーリングカーGT9/ニックネーム:サンサン
【10代目】キャッチコピー:ドライビングボディ/ニックネーム:サンヨン
【11代目】キャッチコピー:ザ・プレミアム・スポーツ/ニックネーム:ブイ・サンゴ―
【12代目】キャッチコピー:日本のクルマに、ときめきが帰ってくる/ニックネーム:ブイ・サンロク
【13代目】キャッチコピー:先駆けるプライド。超えつづける本能/ニックネーム:なし