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「ハコスカ」「ケンメリ」「鉄仮面」何代目かは忘れてもあだ名は覚えてる! 日産スカイラインはなぜ愛称で呼ばれるのか

ハコスカ/ケンメリ/ジャパン/鉄仮面

各世代でファンから愛称で呼ばれたスカイライン

 国産車ではトヨタ・クラウンと並ぶ長い歴史を持ち、1964年の第2回日本グランプリで2代目(S50系)が、純レーシングカーであるポルシェ904GTSと名勝負を見せて以降、モータースポーツでの活躍によってスポーツイメージを強くした日産スカイライン。

 現在は数えて13代目となったが、それぞれの型式(モデル)に固定ファンが数多く存在、今もなお日産を象徴するトップモデルとして君臨し続けている。

キャッチコピーが定着した4代目ケンメリと5代目ジャパン

 愛称については、バブル崩壊以降に登場した8代目以降は32(サンニー)/33(サンサン)/34(サンヨン)と型式で語られるが、1989年の8代目が生まれたときはフェアレディZやローレル、セフィーロ、セド/グロなども30型式だったため、区別するためにR32=アールサンニーのようにシリーズ名称を含めて呼ばれるようになり、それ以前のモデルは型式より型式の数字を含めた愛称で呼ばれることが多かったのだ。

 6代目のR30や7代目のR31も現在でこそサンマル、サンイチと型式の愛称が一般的だが、デビュー時はR30が「ニューマン」、R31は「セブンス」とファンの間では呼ばれていた。理由はR30登場時、サンマルといえば初代フェアレディZのS30のイメージのほうが強かったからだろう。

 では、このニューマンやセブンスとは何なのか。前者は6代目のイメージキャラクターであった故ポール・ニューマン氏(アメリカの俳優であり、レーサーとしても数多くの実績を誇る)から与えられたもので、後者は日産が発売当時に付けたキャッチコピー(その名の通り7代目を表す)だ。いずれもスカイラインらしさや魅力、購入欲に訴えかけるイメージ戦略から付けられた愛称で、キャッチコピーについては2代目から現行の13代目まで欠かすことなく名付けられている(※下段参照)。

 ただし、歴代のキャッチコピーがいずれものファンの心に刻まれたかといえば、さにあらず。ほとんどのモデルについてはすでに忘れ去られていると思うが、数少ないがファンの間で定着した愛称になったものもある。それが4代目のケンメリと5代目のジャパンだ。

性能に頼らず、販売台数伸ばすため広告戦略上のネーミングが愛称に

 ケンメリは排出ガス規制とオイルショックで、高性能エンジンのパワーダウンが免れないと判断した日産が、エンジン性能に頼らず生き延びる方法として画策したライフスタイルに訴えかける「ケンとメリー」キャンペーンが発端。コマーシャルだけでなく、関連グッズまで発売するなど、当時としては画期的な手法を展開していた。

 その戦略が見事に当たり、販売台数だけでなくグッズも大ヒット。その後にコマーシャルソングが発売となるなど、社会現象を巻き起こしたケンとメリーを略した「ケンメリ」の愛称が、ファンのみならず日本中にその名を知らしめることとなった。ちなみに4ドアはヨンメリと呼ばれることもある。

 続く5代目もケンメリと同様の戦略が取られ、日本の風土に密着しながら国際的にも通じるクルマをという思いを込めて「スカイライン・ジャパン」のキャッチフレーズが付けられた。これは昨今話題となった日本ハムファイターズの新庄剛志監督がつけた球団スローガン「ファンは宝物」と同じで、簡潔かつ思いを的確に表現したのが功を奏したように思う。耳に訴えかける響きがいい語呂で、ターゲット層に訴えかけるのに重要な役割を果たした。

 また、ケンメリ同様に販売したアパレルグッズも好評で、その後自動車業界では類を見なかった開発責任者(故・櫻井眞一郎氏)がコマーシャルに登場する大胆な戦略を打つなど、話題は尽きなかった。宣伝力(広告戦略)と名呼称で2代続けてスカイラインの強いイメージ付けに成功。ジャパンも販売台数の向上とともに、ニックネームはファンの愛称として定着したのだ(4代目がC110、5代目がC210と3桁型式であったため呼びにくかったのもあると思うが……)。

型式でもキャッチコピーでもない3代目「ハコスカ」の命名由来は⁉

 スカイラインの歴史のなかで唯一、型式でもなくキャッチコピーでもない愛称で呼ばれているのが3代目のC10型。キャッチコピーは「愛のスカイライン」で歴代初のキャンペーン戦略が大成功を収め、スカイラインの名を世に知らしめることとなった。だが、そのキャッチコピーは愛称とはならず、4代目のケンメリと区別するために、そのボクシーなスタイルから命名された「ハコスカ」が定着することになる。

 では、なぜそう呼ばれるようになったのか? これは曖昧な部分もあるのだが、ハコスカが登場した1960年後半から1970年代中盤までは、いくつかのクルマがその容姿(スタイル)をイメージした愛称で呼ばれることが多かったからではないだろうか。

 例えばスバル360の「てんとう虫」、初代セリカの「ダルマ」、4代目のクラウンの「クジラ」、初代ホンダZの「水中メガネ」などがそうである。また、時代は少し進むが6代目スカイラインのスポーツモデルの後期型RSが「鉄仮面」と呼ばれたのも同じ流れだ。ハコスカ、鉄仮面を含めて言い得て妙な愛称があったことも定着したひとつの理由であるといえるだろう。

 また、R32以降が数字で呼ばれるようになったのは前述したキャッチコピーが定着しなかったのもひとつの理由だが、32(サンニー)という言葉の響きのよさ、2代目スカイラインの高性能モデルであるGT-B、GT-Aが標準グレードと区別するため、ファンの間ですでに型式の54B(ゴーヨンビー)、54A(ゴーヨンエー)と語られていたことも少なからず影響しているのではないだろうか。

例外を除けば愛称やニックネームは人気や認知のバロメーター

 現在、クルマ好きの間ではスポーツモデルの多くが型式で呼ばれることが定番化している。キャッチフレーズで語られる4代目~5代目のスカイラインは広告戦略の成功があるものの、マニアだけでなく販売台数を含めて、広く一般に認知されたことも愛称の定着に大きく影響しているはずである。

 13代目のV37型がオーナー&ファンの間から型式で呼ばれることが少ない(V36までは少数派だが型式で呼ぶ人はいた)のは、現行モデルであることを差し引いても、400Rのような特別なモデルを除き、『スカイラインじゃなきゃ!』という固定ファンが減り、存在感が薄まったからだとも考えられる。

 一部例外はあるものの愛称やニックネームは基本的に人気や認知のバロメーターとなり、セダンマーケットのシュリンクなど難しい問題が山積みなのは承知している。だが、次世代のV38(?)が登場するならば、革新の性能やメカニズム、コンセプトのみならず、イメージ戦略を含めて日産の総力を挙げ、ふたたびニックネーム、少なくとも型式で語られるクルマになることを目指してもらいたいものだ。

 

■歴代スカイラインキャッチコピー&ニックネーム一覧
【初代】キャッチコピー:なし/ニックネーム:なし 
【2代目】キャッチコピー:羊の皮を被った狼/ニックネーム:54B(ゴーヨンビー)、54A(ゴーヨンエー)
【3代目】キャッチコピー:愛のスカイライン/ニックネーム:ハコスカ
【4代目】キャッチコピー:ケンとメリーのスカイライン/ニックネーム:ケンメリ、ヨンメリ
【5代目】キャッチコピー:スカイライン・ジャパン/ニックネーム:ジャパン、スカGターボ
【6代目】キャッチコピー:新しい愛のスカイライン/ニックネーム:サンマル、ニューマンスカイライン、史上最強のスカイライン、半魚人(RS前期)、鉄仮面(RS後期)
【7代目】キャッチコピー:都市工学・7thスカイライン/ニックネーム:サンイチ、セブンス、都市工学スカイライン
【8代目】キャッチコピー:超感覚スカイライン/ニックネーム:サンニ―
【9代目】キャッチコピー:日本のツーリングカーGT9/ニックネーム:サンサン
【10代目】キャッチコピー:ドライビングボディ/ニックネーム:サンヨン
【11代目】キャッチコピー:ザ・プレミアム・スポーツ/ニックネーム:ブイ・サンゴ―
【12代目】キャッチコピー:日本のクルマに、ときめきが帰ってくる/ニックネーム:ブイ・サンロク
【13代目】キャッチコピー:先駆けるプライド。超えつづける本能/ニックネーム:なし

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