命を落とす危険もある安易なカスタムの失敗例とは
クルマを手に入れて、自分のイメージに合わせてカスタムを楽しんでいる人も多いはず。先日の東京オートサロン2022に展示されていたショーカーとは言わないまでも、コツコツと手を入れるのはクルマ好きにとって楽しいものである。しかし、趣味の領域を越え、整備の知識や技術がないにも関わらず安易に手を出してしまったことで大失敗を経験した人も少なくないはずだ。ここでは、筆者やその周囲で体験した5つの失敗談をご紹介したいと思う。
失敗エピソード01:工事中のマンホールでオイルパンを痛打
かれこれ四半世紀以上も前の話だが、ボクがVWゴルフⅡに乗っていたときのこと。当時はVWポカール・カップというレースが行われており、俳優の岩城滉一さんやミュージシャンの稲垣潤一さんもエントリーしていたことでも注目を集めていた。世の中ではVWゴルフの人気が高まり、輸入車でありながらもカスタムパーツやチューニングパーツが豊富に出回っていた。
ボクの愛車にはドイツ製のサスペンションキットを装着し、スプリングをよりローダウンできるものへと交換していた。庶民的なファミリーカーではあるものの低く身構えた姿は精悍であり、憧れのカップカーを思わせるイメージへと変身させることに成功したのである。
しかし、とある休日、路面工事中の道を走っていると「ガゴン!」という音と、座面からお尻が浮き上がるような衝撃に見舞われた。慌てて路肩にクルマを寄せ、下まわりを覗きこんでみるとオイルパンに亀裂が入り、ポタポタとエンジンオイルが滴っているではないか。そう、路面のアスファルトを剥がしたことでマンホールだけが飛び出した形となり、その段差にオイルパンを打ちつけてしまったのだ。
スタイル的にはカッコイイと思っていたローダウンだが、やはり日常の足として使うには厳しいものがあり、車高の落とし過ぎは危険であることを痛感させられた。友人の修理工場に連絡しオイルが漏れた愛車を引き上げてもらったのだが、キャリアカーでドナドナされて行く愛車の姿は痛々しく、その情景は今も脳裏から消えることはない……。
失敗エピソード02:旧車ファンはステアリングボスに気を付けて!!
これは友人のお話なのだが、憧れの「ハコスカ」ことスカイライン2000GT-Xを手に入れたMクン。スクエアなシルバーのボディに刻まれたサーフラインが美しく、時を経た今でも名車としての存在感を漂わせている。基本的にはGT-R仕様へと手を入れた姿はカッコ良いのだが、Mクンは劣化が激しいモモのステアリング(ジャッキースチュワート)が気に入らないようで、クラシカルなナルディのハンドルへと交換することになった。
ネットオークションで手に入れたステアリングが届くと、焦る心を落ち着かせてすぐに装着。6本の六角ネジを緩め、交換作業は簡単に完了したはずなのだが、走り出してみるとステアリングが左に傾いている。駐車場に戻りネジひとつ分を右に付け直して試走すると今度は右に傾いてしまう……?
そう、モモとナルディでは同じ6本のネジでも六角形の頂点が1本のナルディと、頂点が2本のモモではボスの穴位置が異なるのだ。とりあえずナルディ用のボスが届くまでMクンは右曲がりのダンディのまま走り続けたのである。
失敗エピソード03:GTウイングは取り付けるときに補強を!
ネットショッピングで某大国製のGTウイングを購入した友人Sクンは、商品が届くや否や躊躇することなくトランクフードに穴を開け、憧れのGTウイングをガッツリと装着した。その姿はGT300マシンのような戦闘的かつ挑戦的な姿であり、GTウイングを取り付けただけで時速300km/hが出そうな印象へと生まれ変わったのである。
左右6本のボルトで固定された大きな翼だが、追走しているとつねに「ガタガタ」と震えているように見える。本人が満足顔だったこともあり、そのことは言わずにいたのだが、数週間後には友人Sクンの愛車からGTウイングは外され、醜く歪んだトランクフードにガムテープで穴を塞いだ姿だけが残ったのである。
そう、取り付けの補強を行わなかったことで重量と振動、風圧にトランクフードが負けてしまい取り返しのつかない状況になってしまったということだ。もし、GTウイングを取り付けたいと思っている人がいるのなら、しっかりとした補強と振動対策を行うことをおすすめする。
失敗エピソード04:キャンバーの付け過ぎとスペーサーはほどほどに……
週末のサーキット走行が趣味の後輩Oクンは、フロントキャンバーを大きくすることでコーナリング時の接地を稼ぐようにチューニングを施していた。そして、少しでもトレッドを広げて安定感を増すように10㎜のスペーサーを入れて自慢のSタイヤでタイムアタックを繰り返した。
鬼キャンとまではいかないまでも、タイヤが片減りしそうなキャンバー角の恩恵なのかOクンのラップタイムは少しずつ縮まっていき、目標とするラップタイムに手が届くまでになった。そんな帰り道、高速道路でトラブルは突然に発生したのである。
走行中にハブボルトが折れ、左のフロントタイヤが脱落してしまったのだ。操作不能に陥った状態ではフルブレーキを踏むしか術はなく、なんとか神様に祈りながら路肩にクルマを寄せたという。幸いにもフルバンパータイプのエアロパーツがタイヤを抱えるように受け止め、大惨事にならなかったことが不幸中の幸いだったのだが、Oクンは「マジで死ぬかと思いました」と青い顔をして語っていた。キャンバー角の付け過ぎとスペーサーのストレスが、ハブボルトに影響したことは間違いない。
失敗エピソード05:輸入車のヘッドライト交換は左側通行用をGETするべし!
最後はボクの実体験をお話しよう。自動車雑誌の編集をしていたときにレポート車両としてBMW Z3の初期型モデルを手に入れた。コンパクトな5速MTのオープンカーは本当に楽しく、手放せないまま四半世紀が過ぎてしまったこともあり、パーツをリフレッシュしながら乗り続けている。
そんなとき、ネットショッピングで発見したヘッドライトユニットは新型モデルのように「イカリング」と呼ばれるLEDを備え、パソコンの画面で見た装着写真はシャープな印象で「買っちゃえ、買っちゃえ」とボクの背中を押す。価格も左右で3万円だったこともあり清水の舞台から飛び降りる気持ちでポチッとマウスをクリック。
数週間後、海外から届いたヘッドライトに交換すると、その姿はカッコ良く画面で見た装着写真のように精悍な佇まいとなったのである。しかし、夜間に走っていると「なんか暗いなぁ」という印象を受けたのだが、数カ月後に継続車検を取るために友人の工場へと入庫。翌日、メカニックの友人から「お前のクルマ、車検に通らないよ」と電話が入った。
そう、交換したヘッドライトは本国仕様の右側通行用で、日本の左側通行とはヘッドライトのカットが逆なのである。ボクが購入したヘッドライトはリフレクターのカットが右側通行用で、光源が歩道を照らしていたため暗く感じたのは当たり前のこと(涙)。もし、輸入車のヘッドライトを購入することがあれば、必ず「左側通行用」であることを確認し、ボクのように無駄な散財をしないように気を着けてもらいたい。
【総括】カスタムはしっかりとした「知識」と「技術」が重要!
今回は失敗談として“笑えるもの”から“命に関わるもの”まで5つの実例を紹介したが、クルマに手を入れるにはしっかりとした知識と技術は欠かせない。万が一、事故を起こしてしまえば自分だけでなく他人の命を危険に晒してしまう可能性もあるからだ。
クルマをカスタムすることは楽しい作業だが、まずは安全を第一に考え、自信がない場合にはプロにお願いするのが正しい選択になることを覚えておこう。