かつて日本でも販売されていたドイツ車「オペル」
常盤貴子とキムタクが出演した「Beautiful Life〜ふたりでいた日々〜」というTVドラマが随分前にあった……と編集部から提案をいただいた。2000年に放映された大ヒットドラマだったそうだが、そう頻繁にTVを観るほうではない筆者はあいにく、うろ覚え程度の知識しかない。なので今回も「ドライブ・マイ・カー」のときと同様、小説版に当たろうとしたのだが、メンタルがそう強い訳ではない筆者は原稿執筆に支障が出そうなほど、どうやらノメリ込まないほうがよさそうなストーリーらしいので、あらすじを知ったところで調査は終了とした。
お手ごろ価格だったコンパクトカー「ヴィータ」
ドラマをご覧になっていた方はおおかた予想されていると思うが、「ビューティフルライフ」の劇中でヒロインの常盤貴子が乗るクルマとして登場していたのが、「オペル・ヴィータ」(初代)だった。登場するのはマグマレッドの「Swing」グレードで、まさにヒロインのような女性ユーザーがメインターゲットのコンパクトカーだった。ドラマのなかでは、リヤウインドウに「YANASE」のステッカーがしっかりと映し込んであり、当時オペルは、ヤナセがVWに代わるドイツ・ブランドとして扱い始めた(1993年から)ところで、ヴィータは1995年からの取り扱い車種だった。
本国での車名は「コルサ」といい、日本ではトヨタが同名のクルマの登録があったために「ヴィータ」の車名に。さすがヤナセというべきは、シリーズの最廉価版でもデュアルフルサイズエアバッグやABSを標準装備しながら144万円(1996年11月)の手ごろな価格設定を実現していた点。このために人気は高かった。
また、これは当時のプレス向け試乗会、取材を通じて周知されていたことだが、当初、右ハンドル車のペダル配置の具合がよくなかったのだが、そのフィードバックを受けたオペル側が直ちに対応し、カタログには謳われていないが、途中からペダル配置が改良され初期型より操作性が向上した。
ヤナセ時代のオペルはフルラインアップ体制
なおヴィータをベースに、特徴的なガラスハッチのクーペに仕立てたのがティグラ。2+2シートで実用性も兼ね備えたスタイリッシュなパーソナルカーだった。
またヤナセ時代のオペル車は、もともとのVW車のユーザーの受け皿となるべく、フルライン体勢を敷いていた。もっともコンパクトだったのが「ヴィータ」で、その上がVWゴルフの対抗馬でもあった「アストラ」、さらにその上の「ベクトラ」、さらに上級モデルの「オメガ」、「セネター」といったところがその布陣。そのなかでもアストラは前身を「カデット」といい、初代はGMの「Tカー」……つまり初代の「いすゞ・ジェミニ」と兄弟車のような関係にあるモデルだった。いずれにしても、オペルというと、やや地味ながらもいかにも真面目なクルマ……そんなイメージだった。