「カリブラ」「ロードスター」など魅力的なスポーティモデルも
他方でオペルには、スポーティ系の魅力的なモデルもあった。1968年登場の「GT」は「カデット」のシャシーとサスペンションに1.1Lまたは1.9Lエンジンを搭載。横向きに回転して現れるユニークなヘッドライトをもつ個性的なデザインは元GMのデザイナーが手がけ、フランスのコーチビルダーの手になるボディと、当時のオペル車でも特別な存在のクルマだった。
さらにスペシャルティカー的な要素を強めたモデルとして「マンタ」がある。とくに2代目の後期に登場した「400i」は、コスワース・チューンの2.4L・DOHCエンジンを搭載し、サスペンションはイルムシャー・チューンという魅惑のモデル。WRC、ニュルブルクリンク24時間レースなどへも参戦している。
そのマンタの生まれ変わりのようなモデルとして登場したのが「カリブラ」。嬉しいことに(と筆者の感情を込めてしまったが)このカリブラは、ヤナセ時代にしっかり日本市場へも導入された。デビューは1989年のIAA(ドイツ・フランクフルトショー)で、まず2L・16バルブを投入し、1994年には4WDのターボも展開された。Cd値0.26(ターボは0.29)という秀逸なエアロダイナミクスが見ただけでもわかるスタイリングはじつにしなやかで美しく、前身にあたるマンタクーペ以上に欧州市場でも人気を博した2ドアクーペだった。
そしてオペルのスポーツモデルとしては、もう1台、2003年に日本へも少数台数が入ってきた「スピードスター」がある。ロータス社と共同開発、オペル初のミッドシップスポーツだったこのモデルは、当時の「エリーゼ」をベースにオペルのオールアルミ・エコテックエンジン(4気筒DOHC16バルブ、2198cc)を搭載。147ps/20.7kg-mの性能をもち、870kgと軽量に仕上げられたボディが特徴だった。0→100km/h加速は5.9秒の俊足ぶりで、エリーゼとは異なる、シャープなエッジを効かせてスタイリングも存在感のあるものだった。
グループPSAによりオペルの日本市場での展開が再開されることはすでにアナウンスされてはいるが、コロナ禍、半導体問題から、スケジュールは遅れているよう。ただしホームページを見ると、導入予定モデルには、「ヴィータ」の最新モデルが今度は「コルサ」としてリストアップされている。日本のユーザーは浦島太郎の気分ながら、最新のオペルがどれだけ進化しているかは楽しみなところだ。