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魔法の絨毯か觔斗雲か! ファンを熱狂させたシトロエン「ハイドロサス」の驚異の乗り味

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TEXT: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)  PHOTO: 島崎 七生人

トガった技術がもたらしたソフトで優しい乗り心地

 で、実際の乗り味は、無論モデルや世代ごとの味付けの差はあったが、総じて路面や走行状態を問わないフラットライドが特徴だった。コイルバネのシトロエンも、ならではの穏やかな乗り心地が魅力だが、ハイドロの場合は、コンベンショナルなサスペンションとはやはりひと味違っていて、それを(筆者は乗ったことはないが・笑)「雲に乗ったような乗り心地」などと褒める人がいたほどだった。

ハイドロ系最後のモデルとなったシトロエンC6

 フランス料理で「ヌーベル・キュイジーヌ」と呼ばれる新感覚料理があるように、自動車の世界でシトロエンは古くから「アバンギャルト」と表現されてきた。先鋭、前衛といったニュアンスで、もちろんそれはハイドロニューマチック・サスペンションに代表される他社(車)ではあまり見られない凝ったメカニズムを、意欲的に採用する姿勢があったからにほかならない。

 とはいえ、シトロエンの持ち味として、超個性派の内外観デザインも忘れられない。ボビンメーターや1本スポークのステアリングホイール(「三菱ギャランラムダ」が後追いしたが)などが備わっていた時代のシトロエンのオーナーは、クルマに乗り込むたびにそうしたトガった演出を楽しんでいたのだろう。スタイリングも、ちょうど本稿で取り上げた時代のシトロエンが、どのモデルもプレーンでスリークでイノセントで、決して主張するつもりはなくとも明らかにそこだけ空気が違うような存在感があってよかった。

シトロエンCXの1本スポークのステアリング

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  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)
  • 1958年生まれ。大学卒業後、編集制作会社を経てフリーランスに。クルマをメインに、写真、(カー)オーディオなど、趣味と仕事の境目のないスタンスをとりながら今日に。デザイン領域も関心の対象。それと3代目になる柴犬の飼育もライフワーク。AMWでは、幼少の頃から集めて、捨てられずにとっておいたカタログ(=古い家のときに蔵の床が抜けた)をご紹介する「カタログは語る」などを担当。日本ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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