最新モデルなら軽自動車の安全性は飛躍的に高まった
万一の事故の際、やはりクルマの安全性能に助けられたいと思うのは、誰でも同じだろう。しかし、小さな軽自動車はやっぱり不安……そう感じている人も多いはずだ。とはいえ最近の軽自動車の安全性能は飛躍的に高まっているのは周知の通り。
実際、筆者はホンダNーBOXと、車重比1.5倍のホンダ・インサイトの衝突試験に立ち会ったことがある。どちらも時速は50km/h。ラップ率50%(車体前方の半分同士が衝突する感じだ)。そして重要なことは、50km/hで走行するクルマ同士が正面から衝突した場合、相対速度は50km/h×2の100km/hに達するということになる。N-BOXとインサイトが衝突したとき、どうなったのか?
安全のため、離れたところからの立ち合いだったが、事故の重大さはその衝撃音の大きさからも十分に理解できた。インサイトのほうは、衝突した場所からほとんど動かず、前を向いたまま停止していたが、軽く小さいN-BOXは一瞬宙に浮き、回転したのちに停止。
近寄ってみると、インサイトのほうはボンネット部分片側が損傷していたものの、Aピラー以降はダメージがないように見え、フロントウインドウさえ割れていない。では、NーBOXはどうなったのか。
さすがにフロント部分の損傷度合いはインサイトを上まわり、フロントウインドウとAピラーの三角窓部分は割れていたが、なんと、衝突した側の運転席フロントドアですら無理なく開けることができた。さらにリヤスライドドアはアウトサイドオープナーを引くだけで、何事もなくスルスルとスムースに開いたのだ。ホンダのコンパティビリティ対応ボディの優秀さを直視した経験だったのである。
安全な軽自動車に乗り換えるなら自動車アセスメントを参考に
これからより安心・安全な軽自動車に乗り換えたいと思っているのなら、国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が行っている『自動車アセスメント(通称JNCAP)』の結果を参考にするといいかも知れない。自動車アセスメントには、「衝突安全性能評価」と「予防安全性能評価」のふたつの安全性能を図る指標がある。それぞれに配点された合計点数が高いほど、より安心・安全なクルマと見ることができる。
2019年度までは、衝突被害軽減ブレーキや最新の運転支援システムなどの内容が評価される予防安全性能(82点満点/AVS+という評価となり、「+」の数が多いほど優秀)、衝突安全性能(100点満点)の合計で評価されていた。だが、2020年度からはよりわかりやすい、予防安全性能と衝突安全性能、および事故自動緊急通報装置(8点満点/2020年度以降)を総合評価(190点満点)するようになっている。ちなみに次ページに記載するASV表記がない軽自動車は、2020年度以降の評価だ。
ファイブスター賞を与えられているのは4車種
そこで151.03点以上を獲得すると「ファイブスター賞」(★★★★★)となるのである。直近のデータで「ファイブスター賞」が与えられているのは、ホンダNーBOX/NーBOXカスタム(ASV+++)、ホンダNー WGN/N-WGNカスタム(ASV+++)、日産デイズ/デイズハイウェイスター(ASV+++)、日産ルークス/ルークスハイウェイスターとなる。
ちなみに4スター(★★★★)の試験結果となっているのはホンダNーONE、スズキ・ワゴンR(ASV++)、スズキ・ジムニー(ASV++)、スズキ・スペーシア(ASV++)、スズキ・アルトラパン、スズキ・ハスラー、ダイハツ・ウェイク、ダイハツ・キャスト、ダイハツ・タント/タントカスタム(ASV++)、ダイハツ・ミライース(ASV++)、ダイハツ・ミラコット(ASV++)、ダイハツ・ムーヴ/ムーヴカスタム(ASV++)、ダイハツ・ムーヴキャンバス(ASV++)、三菱eKスペース、eKクロススペース、三菱eKワゴン/eKクロスなどである。
つまり、JNCAPのデータを見る限り、衝突安全性能評価でもっとも優秀なのは、ホンダNーBOX/NーBOXカスタム、ホンダNーWGN/NーWGNカスタム、日産デイズ/デイズハイウェイスター、日産ルークス/ルークスハイウェイスターの4車種となる。
一方、安全装備、先進運転支援機能などが評価される予防安全性能評価では、ASV+++の日産デイズ/デイズハイウェイスター、ホンダNーBOX/NーBOXカスタム、ホンダNーWGN/NーWGNカスタムの3車が上位となる。
また、SOSコールに代表される事故自動緊急通報装置の評価では、それが軽自動車に用意される日産デイズ/デイズハイウェイスター、日産ルークス/ルークスハイウェイスターは先進型100%の最高評価となっている。
やはり、設計が比較的新しい、販売主力かつ車体が大きめのスーパーハイト系、ハイトワゴン系の軽自動車が安全性能、安全装備面でリードしていることになるだろう。
もちろん、上記の軽自動車はデザイン、室内空間の広さ、使い勝手、走行性能、運転のしやすさ、装備の充実度、燃費性能などについても優秀だから、間違いのない選択肢になるはずだ。もっとも、クルマの安全に「絶対」はない。どれだけ衝突安全性能、予防安全性能評価の高いクルマであっても、あくまでも安全運転に徹することが、安全・安心の基本、鉄則である。