’90年代のRVムーブに乗って登場した初代CR-V
1980年代後半から90年代にかけて、バブル終焉期のムーブメントとなったRVブーム。RVとはレクリエーショナル・ヴィークルの略称であり、遊びに使える便利なクルマとしてこの時代人気を博した。つまり走りや移動だけではなく、荷物を目的地まで積んでいく積載性と機動力があり、商用車とは違った道具となるクルマの形であった。
元々こうしたRV車を生産していた自動車メーカーは大喜びで、販売台数を軒並み伸ばしていくなか、RV車をラインアップしていなかったメーカーは開発を急ぐことになる。今回紹介するのは、そんなメーカーのひとつであったホンダが、1995年10月に発売した初代CR-Vだ。
「なんちゃってRV」と揶揄されるも都会派ヨンクとしてポジションを確立
ホンダはRVブームの流れに対してクロスロードやジャズ、ホライゾンといった、ランドローバー・ディスカバリーやいすゞミュー&ビッグホーンのOEM車を販売していた。これは少しでも顧客の流出を止めようとした訳だが、これから販売台数が見込めるジャンルに、自社製モデルがないのはもったいないという理由で誕生したのが初代CR-Vだった。
このCR-Vは乗用車感覚の新型4輪駆動車として、「ワゴン並みのユーティリティスペース」「クロスカントリー4WDの機動性」「機能と安心の新デザイン」をテーマに開発された。外観は前後バンパーやフェンダー、ドアモールに無塗装のウレタンを採用。力強さを醸し出しながらも、とりたてて屈強な感じを与えないスタイルが、比較的コンパクトなボディサイズも相まってライトクロカンと呼ばれた。いまのコンパクト&ミドルサイズSUVの先駆けとなったモデルの1台である。
それまでのRV車といえば三菱パジェロがパリ〜ダカール・ラリーで活躍したイメージが強く、そこから一転してファッショナブルになっていった。それはフレーム構造も同様で、当時はラダーフレームにパートタイム式4WDこそがRV車の魅力であったが、モノコックボディでデュアルポンプ式4WDを採用した初代CR-Vは発売直後から「なんちゃってRV」とか「シティRV」と揶揄されながらも、新しいヨンクのカタチとして評価された。
過度な4WD性能を追求せず価格をリーズナブルに抑えて登場
当時は「丘サーファー」御用達として人気を博した、130系ハイラックスサーフやWD21型初代テラノなどが、ガソリン車に加えて低回転域から使いやすいディーゼル車を設定。そんななかCR-Vは2Lガソリンのみが設定された。
この直4エンジンは世界初の4連スリーブブロックを採用した意欲作で、じつは他社の1.6L並みのコンパクトサイズを実現。370mmという長い吸気マニホールドがもたらす最高出力130ps/最大トルク19.0kg-mのエンジンは性能的には標準レベルであったが、4速ATにデュアルポンプ式4WDの組み合わせのみに割り切った設計もあって、価格を200万円以下に抑えて大ヒット。ホンダのRVモデルの顔となる存在となった。
この時代は同時期に大ヒットしたトヨタRAV4のほか、1988年にすでに発売されていたスズキ・ジムニーの兄貴的な存在のエスクードがライバルであった。RAV4には本格的なフルタイム4WDが、エスクードはパートタイム式4WDを装備し、どちらも当時はライトクロカンと呼ばれるカテゴリーにジャンル分けされながらも走りは本格派であった。
対してCR-Vは必要以上の4WD性能を求めず、シティオフローダーという存在をウリにしたのも魅力につながった。そのデュアルポンプ式4WD(スタンバイ式)であったため燃費にも優れることから、セダンやステーションワゴンからの乗り換えでも敷居が高くなかったRV車であり、それゆえにヒットしたとも考えられる。