LSDチューンの定番「シム増し」は現代ではほぼ不要
1980年代から言われる「デフはシム増しでバッキバキだべぇ!」というのは、イニシャルトルクを上げてもっといつでも効かせようということである。そんなに四六時中効いても不快なだけなのだが、当時はLSDが入っていることをアピールしたかったのだろう。
コンクリートの駐車場で「シュコシュコシュコシュコ」と音を発しつつ曲がらないとダメだと豪語する先輩がいたものだが、これはロック率を上げて、ほぼデフロック状態じゃなきゃLSD入っているかわからないだろ! と言いたかったのではないかと推測される。
どちらも当時のタイヤの性能ではアリだったかもしれないが、現代のタイヤでは不要。むしろ邪魔である。タイヤのグリップ力はここ20年で飛躍的に高まり、想像を絶するほどである。それだけグリップ力があるので、イン側タイヤが加速時に空転しないギリギリの効きの方が、コーナリング時のブレーキング効果も少ないし、タイヤへの負担も少ない。LSD本体への負荷も減る。
LSD用のオイルを使ってバキバキ音のないセットを
ちなみにこの作動時の「バキバキ音」は「チャタリング」と言われる。金属プレート同士がバキッとズレ、またバキッとズレるときに鳴る音であるが、現代ではほぼ鳴らない。いまだに「LSD入れたいんですけど、バキバキ音が家族に不快感を与えるかも……」と心配する人もいるが、今どきバキバキ音なんてしない。していたらなにか間違っている。
LSDメーカーではそれぞれ自社で専用オイルをリリースしていて、これがまたそのメーカーのLSDに入れると見事にチャタリング音がしないようになっている。そのほかのオイルメーカーのデフ用オイルでも、いまどきバキバキ鳴るようなことはまずない。もし、バキバキ鳴っているようならセッティングか、オイルか、なにかが大幅に間違っている。お店で診てもらうことをおすすめする。
ちなみにLSD非対応のギヤオイルを入れると強烈にバキバキ鳴ることがある。サーキット走行などでデフオイルの温度が上がりすぎて、大きなダメージを受けたときにもバキバキとなることがある。どちらも速やかに適切なオイルに交換してもらいたい。過度にバキバキと鳴ってプレートを摩耗させていくと、イニシャルトルクが落ちてきてしまう。長くLSDを楽しむためにも、バキバキ音のしない正しいセットで使ってほしい。